獣人の本能
長男目覚めまーす
「おかえりなさい!あなたたち!」
「おかえりなさいじゃないよ、母さん!」
「そうですよ。」
「あははー!また騙されちゃった感じ?」
「だってあなたたち全然帰ってこないじゃない!これくらい言わないとね!」
普通にそろそろ顔見せに来いって
手紙送れないのか?
「はぁ、で?なんで呼び出したんだ?」
「まあ、まず自己紹介よ!この娘はアキさん、
女の子がユメちゃん、男の子がユヅキくんよ!」
『おはようございます。すみません。
お家にお邪魔してしまって。』
「「「・・・」」」
さっきの声の女性か。っ!!
「黒い眼にその肌の色・・・」
彼女と視線が交わった瞬間
身体に電気が走ったように痺れた。
・・・なんなんだ、いったい。
俺たち兄弟が困惑していると
マグオート父さんに夢中で全く
俺たちが眼中にない子ども達が、
「マグオートおじさん!またお外行こう!」
「行こう~」
「よしっ!行くか!
俺は子ども達と外で遊んでくるぞ!」
子ども達、俺達に見向きもしないな…
バタン!!
「父さん子ども好きだったっけ?すげー楽しそうじゃん」
「もう!まあいいわ。
この金髪の子がクインス、獣人よ!
銀髪がスノウ
茶髪がハルス。」
「よろしく、クインスだ。
そんなに見てどうした?獣人なんて
どこにでもいるだろう。
君の黒い瞳と肌の色のほうがよっぽど珍しい。」
『ごめんなさい!じろじろとみてしまって。
はじめてみたから。。。わたしの瞳と肌、
やっぱり珍しいんですね。。』
「はじめて?」
「まあ、それは後ではなすから
自己紹介しなさい。」ツンベルクさんが言う。
「はじめまして、僕はスノウ。
王都セラススで魔導師をしてます。」
「どーも!ハルスです!俺はクインスと一緒に王都で騎士をしてる!よろしくね~」
『よろしくお願いします。アキと言います。
ちょっと訳あってダリアおば様達にお世話になってます。』
「夫達はどうした?
女、子どもだけで」
普通、彼女くらいの歳の女性なら
夫がいて当たり前だ。
子どもがいるってことは夫がいるはずだが。。
『えーっと』
「わしが話そう。」
父さんが彼女に昨日起きたことを話してくれた。
「「「・・・」」」
目覚めたら夜の森の木の下だったと?
「そこでスノウ!
あなたアキさんに魔法が使われたか、
調べられる?」
そうか、召還魔法があるか。
今は召還魔法を使えるほどの魔導師など
滅多にいないはずだか。
「はい、昨日のことならまだ
魔法の残像があるはずです。
少し失礼します。」
スノウが彼女の手を取って調べている。
なんだ、このモヤモヤする気持ちは?
「うん、魔法使われてるようです。
それもかなり高度な召還魔法です」
スノウが手を話すと、モヤモヤもスッと消える。
どういうことだ?
「でも召還魔法ってかなりの人間の犠牲を払ってするんじゃなかったー?」
確かに何十人かの人の命と
引き換えで使えるはずだ。
「そうだ。召還出来ても元の世界に返すことは出来ない。」
「はい。召還するだけでもかなりの人間の犠牲と
魔導師の魔力を消費します。成功率も1%あるかないかくらいです。」
『そんな。。。』
静かに話を聞いていた彼女の瞳から
涙が溢れる。
彼女の泣き顔をみると胸が締め付けられる。
涙が頬をつたい、絨毯にシミをつくる。
と、思ったが
『え?』
絨毯に落ちたのは、綺麗な涙の形の宝石だった。
コロコロとキレイな青色の宝石が転がる。
「「「!?」」」
「これはサファイア?」
『なんで?え?』
涙も止まり、彼女が狼狽える。
バタン!
いきなり彼女が駆け出していく!
「ママー!どこいくの?はやいよー!」
外から子どもの声が聞こえる。
外に出ると、森に向かって走って行く彼女が。
「おい!どうなってんだ!
いきなり走っていっちまったぞ!」
「彼女は自分が現れた所から帰れるかもと
思ったのかもしれない」
「森に行ったのか!?」
「たぶんな、彼女たちが現れたのは
森にあるセラススの木の下だ」
「クインス、スノウ、ハルス!
お願いよ!あの子達を追いかけて!
何かあったら大変だわ!!」
確かに、まだ午前中だとは言え
魔物が100%出ないとは限らない。
「わかった。先に行く」
森の中のセラススの木は、
すぐ見つかった。木の下にしゃがむ彼女もいた。
綺麗なピンクの花びらがふわふわと
彼女たちに舞い落ちる。
『ここから帰れるかも!』
彼女が瞳を閉じてしばらく
祈っているがなにも起きない。
「ママ~どうしたの?」
「ママ~」
子ども達が心配しはじめる。
『ごめんね。ごめん』
彼女が泣きながら子どもに謝りはじめた。
「ママ~泣かないで」
「ママの涙、キレイな石になっちゃった!
すごーい!」
『ごめん、もうお家帰れないかもしれない』
そうだ。帰る方法はないのだ。
いきなり知らない世界に無理やりつれてこられ
父親や友人とも二度と会えないのだ。
「そうなの?大丈夫だよー!
だってママとユヅキと一緒だもん」
「大丈夫~」
子ども達は彼女の事が大好きなんだな。
『うん、うん、ありがとう
ママ頑張るからね。』
彼女が落ち着いてきたみたいだ。
「そろそろ落ち着いたか?」
『クインスさん』
「お兄ちゃんお耳と尻尾がある~!」
「触ってみるか?」
「うん!!」
しゃがんで
子ども達に尻尾や耳を触らせる。
「ふさふさだー!」
子ども達が無邪気に飛びついてくる。
彼女の血がこの子たちにも通ってると思うと
無性に愛おしくなる。
なんなんだ。一目惚れってやつか?
俺が?どうなってんだ?
とにかく
「そろそろ帰ろう。母さんが心配してる。
マグオート父さんもみんなも」
『ごめんなさい。いきなり飛び出したりして』
「いや、あまり思い詰めるな。
母さんも父さんもお前達を気に入ってる。
なんでも力になってくれるさ。」
「もちろん俺たちもね~」
「そうですね」
ハルスとスノウもきた。
俺より少しあとにきたが彼女が落ち着くまで
隠れていたようだ。
「帰すことは残念ながら僕には
出来ませんが、
他に出来ることがあるなら力になります。」
「まあ、腕には自信があるし、
守ってあげるよ~」
『ごめんなさい。
本当にありがとうございます。』
彼女が微笑んでお礼をいう。
なんだ、
スノウとハルスも嬉しそうな顔しやがって。
家に戻ると、
「アキさん!良かった無事で!」
『ごめんなさい。心配かけて』
「いいのよ!びっくりしたわよね。
こっちこそ、ごめんなさい。」
『これからどうしよう。
まず仕事と住む場所を探さなくちゃ。』
「何言ってるの!ここにいたらいいわ!」
『でも、そこまで迷惑かけれません。』
「迷惑だなんて!可愛い娘と孫が出来たみたいでとても嬉しいのに!」
「ダリアもこう言ってる。この世界で
君を守ってくれる者が見つかるまで
ここにいればいい。」
『ありがとう、本当にありがとうございます。』
またポロリと彼女の涙がこぼれる。
今度はエメラルドだった。
彼女が落ち着いて、さっきの出来事を
同じ獣人のマグオート父さんに聞いてみる。
「あー?電気が走る?
お前、彼女が番だったか」
「番?」
「言ってなかったか?
獣人は自分の生涯の番が本能でわかる。
お前に起きたのがそれだ。
彼女の事も彼女の血が流れている子ども達も
無性に愛おしく感じるだろう?」
「あぁ。」
「そういうこった!良かったな!」
「良かったのか?彼女はいきなり
こんな事になって混乱してる。
それなのに、さらに俺の生涯の番なんだ!
なんて言われても困るだけだろう。」
「だが、彼女はもう帰れない。
誰かが守ってやらないと
この世界で生きていけないぞ。」
「ロータス父さん。。」
「まあ、今すぐ俺の番だ、なんだと
伝えなくてもいい。彼女がこの世界に慣れるまで俺たちも手伝ってやるよ。」
父さんたちはそういうと
みんながいる部屋に
戻っていった。
「これが、番を見つけた獣人の気持ちか。」
視界に彼女がいるだけで満たされる。
だが、もっと触れたい。自分のものにしたい。
早く彼女がこの世界に慣れるように
俺も出来ることをしよう。
早く彼女に気持ちを伝えたい。。。
長男、主人公の事、
もう気になってしょうがなくなっちゃったねー!
ちょっとセコいけど獣人の本能ってことで
好きにならせちゃいました!狡い!笑