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冴えない俺が創竜の騎士になって、全ての世界を救うまで  作者: ベルゼリウス
The snake laughs by night ~蛇が嗤う夜~
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地下の街

 

 それからは何とも言えない光景が続いた。

 見たことのない施設。 見たことのない人々。

 俺の常識をすべて覆すような光景が続き、頭の中がパンクしそうになる。 現に、頭の中が熱を持っていてぼんやりとしている。

 そんな中、ある一点のモノを見つめていた。


「しかしまあ……ここはいつも変わらないなぁ」

「表面上ではここは二十年前に作られた、ということになっているが……ここが出来たのはおよそ百年前だ」

「へぇ、そんな前か」

「地下施設も作るのにだいぶ時間を要した。 お蔭で当初予定していた時期より二年も遅れてしまった」

「んで、それを補う為に着陸料を高めに設定している……っていうフェイクストーリーを作っているんだろ? 真相は?」

「もちろん、ここの情報を隠すためだ。 とはいっても、軽い都市伝説になりつつあるがな」


 そんなたわいのない会話を俺は聞き流しながら、周囲に視線を向ける。

 どうやら、いつの間にかエレベーターに乗っていたらしい。 極力、情報を遮断していたため気づかなかった。

 だが、エレベーターは比較的に大人数で乗るものらしく、とても広い。 まるで、何か大きな物とかを運ぶための搬送用エレベーターみたいだ。

 ……そんなことより、俺を虜にしているものがあった。 ……ウィルの尻尾だ。

 俺の目の前で黒スーツから分厚く、モフモフとした尻尾が揺れている。 毛並みはとても手入れしているのか、ものすごく綺麗だ。

 これも獣人の身だしなみというやつか。 まあ、俺ら人間でいうところの髪だろうしなぁ。


「それで、彼女はちゃんと働いているのかい?」

「ああ、よくやっているよ。 お蔭で、段々と『蛇』の足取りが掴めつつある。 昨日は日本でのアジトらしき場所も発見した」

「ほう。 で、中はどうだった?」

「いや、大したものはなかった。 恐らくだが、何かを監視するための場所だったのかもしれん。 だが、何かの日記らしきものと、計画書らしきものも発見した」

「計画書?」

「ああ、近々大掛かりなことをしでかすようだ。 ……近頃、妙な噂があってな」

「噂?」


 ウィルの気持ちに反映されているのか、尻尾が左右に揺れる。


「ああ。 どうやら、近々大掛かりなテロを起こすようだ。 詳細は分からんが、今日の会談でわかるだろう」

「ん? じゃあ、今日彼女は来ているのか?」

「先程、海外の任務から戻ってきたところだ。 久々の再会なんだろう?」

「そうなんだが……まあ、何だが恥ずかしいな」


 尻尾は激しく揺れる。 俺にとってそれは猫じゃらしのようで、とても興味を惹かれる。

 きっと。 あれは触ったらどんなに心地良いのか。 今の俺にはそれしか興味がない。

 ゆっくりと、俺の手が伸びる。 一瞬でもいい。 あれに少し触れるだけでもいい。 あと少し。 あと少しで……

 と、その時。 俺の手が誰かに遮られる。 誰かと思い、その先を見るとヘルズが首を横に振っていた。


「やめておけ。 ああいうのはな、不意に触れるとその持ち主はとても激怒する。 いわば、あれは……まあ、性感帯のようなものだ。 だから、今度元の姿に戻って我の尾を触ったらその時は……わかっているだろうな?」

「う……わかった」


 ヘルズの瞳の中に、静かな殺意が見える。 これは冗談ではなく本気のようだ……。

 俺ら人間には尻尾はないが、尻尾がある奴らは触られると不快に思うらしい。 ……これだけは肝に銘じておこう。


 そんなことを考えていると、チン、とエレベーターから音が鳴る。

 どうやら着いたようだ。 目の前の重そうな扉が開く。

 すると、そこには輝しい光景が広がっていた。

 街だ。 街が見える。

 眼下には夜の眩しい繁華街のような光景が広がっている。 


「ここは……」

「ここは、異世界人が一時的にここに来て、審査を受ける間生活できるようにした場所だ。 空港の名前からとって、斗亞町と呼んでいる。 ここでは世界水準の生活ができるよう、またストレスを感じないように設計されている」

「驚いたかい? 私も一時期はここで住んでいたんだ。 年中夜の様に暗いけど、それ以外は普通の街だよ」


 ヘルズも、俺も目を丸くして街を眺める。

 確かに普通の町だ。 だが、歩いているヒトは人間じゃない。 獣人だ。

 車は走り、ヒトは歩き、様々な建物が建っている。

 それは生きていた。 生きた町だ。 決してハリボテやそれ風に見せた何かではない。 人々が生活し、その輝きがこの夜景なのだろう。

 それはもう、別世界のようだった。 憧れ、夢にまで見たそれが、俺の眼下に広がっている。

 もう、なんと形容したらいいのだろう。 なんと感情に表したらいいのだろう。

 胸から何かがこみ上げてくる。 それらを抑え、必死に耐える。


 そんな中、こちらに近づく黒い車が見えた。

 そのまま、俺らの傍までくると、運転手が下りてくる。 運転手はウィルと同じ狐の獣人だった。 強いて違いがあるとすれば、尻尾が三本ある、ということぐらいか。


「やあ、お待たせ。 ちょっと運転に手間取っちゃってね」

「久しぶりだな、タマモ。 元気そうじゃないか」

「あら、ウィル久しぶり。 最後に会ったのは去年?」


 タマモと呼ばれた獣人がそういうと、叔父がごほん、と咳をする。


「久しぶりの再会で申し訳ないが、少し時間が押しているんだ。 タマモ、目的地まで頼む」

「はいはい。 まあ、早く報告したいこともあるしね」


 そういいながら、全員車に乗り込む。

 俺も恐る恐る車に乗り込んだ。 車自体は……なにも変わってない。 地上と何ら変わらない仕様だ。

 そのまま、車は走り出す。 車からみる光景は対して地上の街とは変わらない。

 すると。 その中に一際目立つ建物が見えた。 とても大きく、この地下空間の柱になっているのか、その建物は天井まで連なっていた。


「あそこが竜創寺本部だ。 この世界に関する情報がすべて詰まっている。 ……あそこで会談を行うぞ」


 俺は静かに唾を飲み込む。

 あそこが竜創寺本部。 この世界を牛耳る組織の本部か。


 


 

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