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冴えない俺が創竜の騎士になって、全ての世界を救うまで  作者: ベルゼリウス
The snake laughs by night ~蛇が嗤う夜~
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戦闘開始


『この女、今日の魔女か』


 ヘルズの言葉を聞き流し、俺は口を開く。

 

「おいおい……こりゃなんだ?」


 静寂の中、真っ先に静寂を叩き切ったのは俺だった。


「銃声が聞こえて駆けつけたら、昼間俺を投げ飛ばしたオンナが二丁拳銃を構えて、化け物をバンバン撃ちまくって殺してやがる。 ……こいつぁ、なんの冗談だ?」

「……」


 それでも、女……ミコトは黙ったままだった。

 その間に、俺は改めてミコトの装備を凝視する。

 あれは……Cz75 SP-01という銃だ。

 銃で接近戦を行う、というコンセプトに作られたものとは聞いていたが……確か、作った会社も冗談半分で制作したオプションじゃなかったっけ?

 俺の知識も、FPSとかのゲームで培った知識だから自信はない。

 ……だが、こんなことを聞いたことはある。

 二丁拳銃は剣で例えるならば、六刀流。

 二丁で両手をふさぐなら、両手でしっかりと構えて撃った方が効率がいい、と。

 増して、あの銃剣。

 ……六刀流ならぬ、八刀流、といったところか。

 ……こいつぁ傑作だ。

 化け物を殺している少女に加え、武器も非現実的。

 こんな状況、漫画でもお目にかかれないんじゃないか?


「いいか、お嬢さん。 ここ、どこかわかるか? 日本だよ日本。 ここはゴッサムシティや、ロアナプラじゃないんだ。 銃砲刀剣類所持等取締法って知ってるか?」

「……左様で、ございますか」


 ようやく、口を開きやがった。


「しかし、私には竜創寺当主、総一郎の命がございます。 この命はこの国の法律、などという小さな縛りで、妨げられるものではございません」

「叔父の、命だぁ?」

「ええ。 ですが……」


 銃を構え直し、今度は俺に向ける。


「あなたには関係のないこと。 何故、何も知らない愚か者がここにいるのです?」

「愚か者……ねぇ。 俺の事知らないやつにそんな悪口言われたくはないんだが……そうだな。 強いて言うとすれば……俺はある男の行方を追っている。 知り合いの頼みでな、俺はそいつを追わないといけない」

「……」


 ミコトは黙ったまま、微動だにしない。

 ……気に食わねえ。

 いかにも、自分が正しいって面してやがる。

 もちろん、仮面のせいで表情が見えないんだが。

 だが、何を考えているのかは分かる。

 総一郎様の愚甥のせいで私の高貴な大義をクソ野郎に邪魔されている、ってとこだろうか。

 大義名分大いに結構。 だが、こちらも後には引けない。

 俺も一回殺されているし、何よりヘルズの為だ。

 恐らく、こいつは何をしても引かないだろう。

 ならば、こちらも実力行使に出るまで。

 俺は剣を召喚し、剣先をミコトに向ける。

 すると、少しながら相手に動揺したのか、銃が震えた。


「こっちも質問に答えたんだ、今度はこっちも3つ質問する。 一つ、お前の目的は? 二つ、叔父の命、ってなんだ? 三つ、バヨネット付き拳銃って厨二病すぎないか?」


 そういうと、ミコトは軽く肩を落としながらこう答えた。


「一つ、私の目的は『蛇』の抹殺。 もしくはそれに関わったもの、生み出したものを全て抹消すること。 二つ、この世界の秩序、均衡を守り、それに害するもの達を滅すること。 三つ、それは……」


 その瞬間、ミコトは左右にそれぞれ銃を撃ち込み、そのまま恐ろしいスピードで突進してきた。

 驚きながらも、俺もそれに応えるべく剣を構える。

 そして、銃剣付きの拳銃を振り下ろしてきたので、それを剣で防ぐ。

 当然、鍔競り合いになった。

 予想以上の力に圧倒されつつも、何とか堪えて状況を維持する。

 ……しかし、何を考えている?

 確かにこいつの武器は接近戦『も』こなせる武器だ。 だが、接近戦『が』得意な武器ではない。

 それに、あれはそこまで銃剣自体強度はなかったはずだ。 そんなリスキーな行動は―――――。


「ッ!?」


 突然、腕に痛みが走った。 痛みの個所は左右の腕。

 ちらりと、痛みの個所を見ると何やらかすった跡が見える。

 服は裂け、血もだらりと垂れているのも確認した。

 まさか……こいつ、撃った弾丸を跳弾させて俺に当てたのか!?

 でも、左右には檻だぞ!? 二丁拳銃で柵の部分でも当てるのに難しい筈だ!!


「ご理解、いただけましたか? デュアルでは狙うのが難しく、正確に射撃できる範囲も短い。 なので、両手でしっかりと狙い、銃本来のキルゾーンで戦うのがセオリー……なんて言われてますが、私にとってそんなの関係ありません。 このように正確に的に当てられますし、それに……」


 今度はいったん引いたかと思えば、一瞬のうちに姿が見えなくなった。


「ど、どこだ!?」

『右上だ、シンイチ!!』


 慌てて、ヘルズが指示した方向に視界を向けると、そこにはカエルの様に壁に取り付き、今にもこちらに飛びかかろうとしているミコトの姿があった。

 そのまま、こちらに飛び込んでくる。

 それは、まさに大砲から放たれた弾丸。

 俺にはどうすることもできず、剣で身を守りながら、耐えるしかなかった。


「どうです? 私にとって、相手の懐に入るだなんて造作もないんですよ」

「ふっざけンなよ、お前……何もかも出鱈目すぎンだよッ!!」


 飛び込んできたミコトを押し返し、俺も下がりつつ、距離を保つ。

 ……クソ、何もかも理不尽だ。 現実味を帯びてない。

 つーか、あれ人間か? おかしいだろ、あの動き。 ゲームかなんかのキャラか?

 畜生……どーすっかな……なんもかんも理不尽な動きをするし、おまけにあれは手加減してやがる。

 最初にしか銃を撃ってきてないのが証拠だ。

 それまでに俺を殺れるチャンスはあった。 ……俺が竜創寺の人間だからか?

 いや、それはどうだっていいように見える。

 感じるのは、ただのウザ晴らし。 あいつは俺の存在を全否定しているような奴だ。

 徹底的に痛めつけて、逃げ惑う姿が見たいんだろう。

 さあ、どうする? 相手の思うツボってもいけ好かない。

 かといってこの場所は明らかにこちらの不利だ。


『シンイチ、ここは不利だ。 ……一旦引こう』


 オーライ。 俺もそう考えていたところだ。

 気に食わないし、相手に背を向けるというのは背徳感があるが、この際仕方がない。


「チッ……」


 舌打ちしながら、俺は走りだした。

 向かうは玄関ホール。

 あそこならかなり広いし、地形を利用した戦闘も行えないはずだ。


「おや……逃げるのですか? まあいいでしょう。 鬼ごっこをするとしましょうか」


 と言いつつも、あいつは歩いて追ってくるようだ。

 ……くそったれ、あのアマ。 ボコす。 何が何でも、ボコす!!

 ぜってぇあいつの泣き顔を拝んでやる!!

 

ゴッサムシティ・・・アメコミ『バットマン』に登場する架空の町。 幾多のヴィランが跋扈する町。 治安がものすごく悪い。

ロアナプラ・・・漫画『BLACK LAGOON』に登場する架空の町。  様々なマフィアが牛耳り、昼間から売春婦が歩き回り、銃撃戦は日常茶飯事。 治安がものすごく悪い。

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