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冴えない俺が創竜の騎士になって、全ての世界を救うまで  作者: ベルゼリウス
The snake laughs by night ~蛇が嗤う夜~
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修行


「さて、シンイチ。 お主にはいろいろと足りないものが多い。 経験、技術、知識……その辺だ」

「……だから何だってんだ?」


 ヘルディオスの言葉にムッとなり、反論する。

 確かに、俺は全てにおいて何も知らないし、荒事を立てたこともない俺にとって、あまりにも無力だ。 それは自分でも理解しているし、改善しなければ、と思っている。

 だが、こうもはっきりと言われてしまうと、どうも現実を突きつけられているようで、自分の不甲斐なさと合わさってイラっとしてしまう。

 ヘルディオスもそのことをわかっているようで、「まあまあ」と俺をなだめながら、話を続けた。


「話を聞け、シンイチ。 無知を恥じている時点で、お前は大したものだよ。 もちろん、知識が必要な時は我がフォローするし、技術も教えよう。 だが、経験は必要だ。 ……お主は一度も争いごとはしたこともないな?」

「争いごと……って喧嘩とかか? ……まあ、確かにしたことないな。 そもそも、俺が生きてきたこの世界はそんなことをしてしまったら、社会的に殺されちまうんだ。 ……そういうのは、ボクシングとか、あらかじめ決められたルールの中でしか、人を合法的に殴れないな」

「……なるほど。 よほど、退屈で平和な社会で生きてきたようだな。 だが……これからはそうはいかないぞ」


 すると、目の前に眩い光を放ちながら、ヘルディオスが現れる。

 最初見た時と同じ姿だ。


「お前は私の手足となる存在だ。 だからこそ、立ちふさがる存在をなぎ倒し、蹂躙していかなければならない。 そのためにお主を強くする必要はある。 ……異論はないな?」


 そう聞かれ、俺はすぐに頷いた。


「よろしい。 では、今から行うことは説明しよう。 今、お主は眠っている状態にある。 ここでは現実世界での時間は全く無関係だ。 そのため、ここでの修行は幾ら行おうと、時は止まったままだ」

「へぇ、じゃあここで修行すれば、現実でいきなりチートを使ったみたいに強くなれるわけか」

「チートというのが分からんが……残念だが、そういうわけにもいかない。 あまり、ここで修行した場合、お主の精神が持たない危険性がある。 ……今現在だと一年程の期間だな」


 なるほど。

 そんな都合良くいくわけないか。

 だが、『今現在』という言葉が引っかかる。

 今はそんなのでも、今後俺が強くなっていけば時間が伸びるというわけか?

 まあいい。

 それでも俺が強くなるというのであれば、それに越したことはない。


「で、何をすればいいんだ?」

「基本的には、これから現れる者たちを倒していけばいい。 無論、傷を食らってもここは夢の世界だ。 だが、死にはしないが、痛みはある。 ……痛みのせいで、精神が歪む可能性もある」


 ここは現実世界と区別がつかないぐらい、ここは巧妙に出来ているというわけか。

 だからこそ、やられ過ぎて死という概念に慣れないようにしなければならない、か……。

 それこそ、死に過ぎて危機管理能力を失い、下らないことで死にたくもない。

 ここは死なない程度で、死ぬ気でやれ、ということか。


「さて、では早速取り掛かるとしよう。 最初は……こんなものか」


 そういって、ヘルディオスは何かを念じる。

 すると、目の前に何やら液体状のモノが現れた。

 何かと思い、近づくと液体状の何かが、ぶるぶると震えだし、一か所に集まる。

 そして、それらはある程度厚みを持つと、体の真ん中に一つ目が形成される。

 ああこれは……。

 これはよく知っている。 明らかに、俺が見慣れた生物だ。


「なあ、これって……」

「ああ、そうだ。 お主の記憶を辿って、尚且つ最初にお主と戦うに相応しいもの……スライムだ。 どうだ? うまく出来ているだろう?」

「……まんまだよ。 しかし、驚いたな。 ゲームのキャラを創れるだなんて」

「そりゃ、我は創造竜だぞ? こんなもの、簡単に作り出せる」


 ふふん、と自慢げに胸を張り、ヘルディオスは目を細める。

 確かにやっていることは俺には到底できないことだ。

 しかし……こう、いちいち自慢されては反応に困る。

 ……だが、どこか憎めないんだよなぁ……なんというか、こう、混ざりっけのない、純粋に自慢しているというか……


 と、その時だった。


「あ、危ないぞシンイチ」

「へ?」


 その瞬間、どす、っと鈍い衝撃が体を襲い、俺は後方に吹っ飛ぶ。

 それはまるで、殺意を持った奴が、俺目掛けて鳩尾に思いっきり殴ってきた、というのが一番似ているか。

 何事かと思い、ジンジンと痛みという警告を無視し、顔を上げる。

 そこには俺を出来たばっかりの目で睨みつけるスライムの姿があった。


「くそったれ……ヘルディオス!! 注意するなら、もっと大きな声で注意しろよ!!」

「いや、先程のはお主が悪い。 大体、修行はすでに始まっているのだぞ? ……やれやれ、この調子ならお主は何回死ぬのだろうなぁ?」


 にやり、とヘルディオスはヘドロの様に濁った笑みを見せてくる。

 あの野郎、完全に俺が苦しむさまを愉しみにしてやがる。

 ……前言撤回。 あいつは邪神だ。 悪魔だ。


「畜生……そう何度も死んでたまるか。……やってやる、ぜってぇ死んでたまるか!!」


 俺は手のひらに集中し、昨日の夜の様に創りたい武器を想像する。

 描くは常に自分の憧れているもの。 いつかなりたいもの。

 そうして、俺の手の中に大剣が生成される。


「そうだ。 その調子で頼むよ」


 不意に、ヘルディオスの言葉が聞こえたが、気にもせず、そのまま叫びながらスライムに突進する。

 そして、そのまま振り下ろすと何も抵抗もなくスライムはバケツの中の水をひっくり返したかのように、四散した。


「次、来い!!」

「わかったわかった。 では、どんどん行こうか」


 やれやれ、と言わんばかりにヘルディオスは笑みをこぼしながら、次なる相手を創造する。

 ……やってやる。

 どんなことがあろうと俺は止まりはしない。


 そうして、俺の地獄のような修行が始まった。


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