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っぽい人だから。


「なら、改めて自己紹介しようよ。ボク、ラウンジでティーセット貰ってくるから。ね?」

「なら、オレは談話室の部屋取り行ってくる。百目鬼のエスコートは隼人さんと智昭さんに譲ったあげますよ。俺、先輩を立てられる後輩なんで。だから、ちゃんと連れてきてくださいよ?ハル、行こう」

「百目鬼せんぱい、後でね」

そう言って二人はあっという間に見えなくなる。

私、今日は色々ありすぎてもう休みたいんだけど…。

「ごめんね、百目鬼ちゃん。あいつら強引でしょ。ああいうとこハヤトに似ちゃってさ。いくら言っても直らなくて。」

「トモ、人のせいみたいに言うな。俺はあんなに強引じゃねぇよ。」

「自覚がないだけハヤトの方が質悪い、と」

「なんだと?」

「ふふっ…」

テンポ良く進む会話に思わず声が漏れる。

「あ」

「あ?」

「すみません、気を悪くしましたよね。」

「別に、気にしてねぇよ。つーか、百目鬼の笑ったとこ初めて見た。」

「ファーストコンタクトではハヤト、吹っ飛ばされてたし?」

「トモ、余計なこと言うな。」

じろりと睨めば、肩を竦めて謝る。

「ごめんごめん。でも、百目鬼ちゃんは笑った方が可愛いよ。」

「………気障ですね。」

「酷いなぁ。ね、ハヤト、そう思わない?」

「自覚がないだけ質が悪いな、トモ。」

「仕返し?それ」

楽しそうな二人を見て、また笑みが溢れた。

あぁ、幼馴染みっていいなぁ。そう思えて仕方がなかった。




―・―・―・―・―・―



「じゃあ、ボクから。央都魔術学園 1年の五十嵐 陽翔(いがらし はると)だよ。皆からはハルって呼ばれてるから、せんぱいもハルって呼んでね。得意な魔術は風で、好きなことは日向ぼっこ。よろしくね、せんぱい」

「ちなみに、ハルの寝起きは危険だから近付かない方がいいな。」

「俺も何度被害に遭ったことか…」

「アキ君、隼人さん!余計なこと言わないでよ。せんぱい、ボク、そんなに寝起き悪くないからね!」

慌てて大きく身振り手振りで伝えてくる姿に幼かったころの弟を思い出す。


「次はオレ。央都魔術学園 2年、大地 亜樹(だいち あき)。百目鬼と同い年だから敬語とかやめてな。得意な魔術は土。よろしく。」

「アキ君はムッツリスケベだから、油断しちゃダメだよ、せんぱい」

「誰がムッツリスケベだって?ハルの方がスケベだろ。ちゃっかり抱き付いてるくせに」

引き離すように五十嵐君を引っ張る大地君。

教室で見掛けるときはいつも真面目で物静かな優等生って感じだったのに…意外な1面を見た気分だ。


焔火 隼人(ほむらび はやと)。央都魔術学園3年でトモとは腐れ縁だな。得意な魔術は火。よろしくな、サクラ」

「隼人さんは優しいんだよ。お菓子もくれるし…面倒見もいいんだっ。」

「俺たちのフラグシップみたいな人だし。」

「見た目、格好いいからね。口を開かなきゃ。」

「トモ、それ誉めてねぇだろ。」

むすっとしながら言い返す焔火さん。でも、この4人の中心にいるのはこの人なんだなぁってなんとなく思う。


「次は俺だね。央都魔術学園3年水無月 智昭(みなづき ともあき)。得意な魔術は水だから、他の3人に手をつけられなくなったら言ってね?これからよろしくね。」

「おい。…トモ、甘党だって言わなくていいのか?」

「ハヤト、煩い」

さっきの仕返しと言わんばかりにちゃちゃを入れる焔火さん。甘党だとバラされた水無月さんは何処と無く顔が赤くなっている。

なんだか大人っぽい人だと思ってたのに、意外と可愛い人だ。


「最後は、私ですね。央都魔術学園2年、百目鬼 咲良(どうめき さくら)です。得意な魔術は特になくて…よろしくお願いします。」


「えーっ、それだけ?他には?せんぱいが好きなものは?ボク、もっとせんぱいのこと知りたいのに!」

「おい、ハル。我儘言うなよ。」

「ハル、今すぐ全部知ることないだろ。時間をかけて知っていけばいい。サクラを困らせるな。」

駄々をこねる五十嵐君を諌めるように話す焔火さん。


「う、はーい。せんぱい、ごめんね?」

「いえ…えっと、私も日向ぼっこは好きです。五十嵐君と一緒ですね。」

そう笑いかければ嬉しそうに頷いてくれる。

「今度一緒に日向ぼっこしようね。それから、ハルって呼んでくれると嬉しいなぁ」

なんて甘えてくるようなところはまるで仔犬のようだ。


「俺は飲み物でも淹れようかな。」

話がまとまった所で水無月さんが紅茶を淹れてくれる。その間に用意してもらったお菓子へと各々の手が伸びていく。どれも美味しそうで目移りしそう。


アフタヌーンティーの時間のため、ケーキスタンドにはクッキーなどの焼き菓子、スコーンなどが並ぶ。もちろん、サンドイッチのような軽食も。

サンドイッチなど軽食ではなくクッキーやケーキなどの甘いお茶請けについつい手が伸びてしまうのは甘党の性だろう。

ちなみに、焔火さんの前にはフルーツタルト、五十嵐君の前にはチーズケーキ。大地君の前にはサンドイッチ。水無月さんの前にはシフォンケーキ。私の前にはショートケーキ。


「そういえば、隼人さん、さらっと名前呼びしました?百目鬼のこと」

「あ?別にいいだろ?」

「ボクもさくらせんぱいって呼ぶね。さくらせんぱい、このクッキー美味しいよ?」

「なら、オレも。咲良、このケーキも美味いから食べてみ?」

「おい、ハル、アキ」


「男の嫉妬は醜いよ、ハヤト。ほら、咲良ちゃん、あーん」

生クリームのたっぷり乗せられたケーキを口許へと差し出される。口を開けば直ぐにでもケーキを味わえるだろう。

美味しそう。だけど、羞恥心もありフォークと水無月智昭とに視線をさ迷わせる。


「ズルい!ボクも。サクラせんぱい、あーん…」

「智昭さん、アキ…なら、オレも。ほら、サクラあーん…」

そろって差し出されるフォーク。

「お前らなぁ…サクラ、食え。」

問答無用で口に突っ込まれたタルト。

「ハヤト、」

「隼人さん、」

「隼人さん、」

「な、なんだよ。悪いかっ」

三人から冷たい目を向けられればばつの悪い顔でそっぽ向く。

いや、私が一番恥ずかしいんだけど…。

タルトは美味しかったけど。

「さくらせんぱい、ボクもあーん!」

「え、えーっと…」

「隼人さんのは食べたのに、ボクのは食べてくれないの?」

「いや、焔火さんが無理矢理…」

「ダメ?」

まるで仔犬のような目で見られれば、言葉に詰まる。

ズルいよね。そんな目で見られて断れないじゃん。


「じゃ、あ、あーん…」

「あぁーん」

差し出されたケーキに食いつく。あぁ、美味しい。

こんなに美味しい食べ物と紅茶に囲まれて、幸せだなぁ。


イケメンさんに囲まれてなければもっと堪能できたのに。

男の人とこうやって甘いものを食べることなんて初めてだから実は緊張する。

しかも、あーん…とか。カフェで「バカップルが…」なんて思ってたことを経験するなんて…

惚れ薬のせいとはいえ、焔火さんと五十嵐君にあーん(?)をされたなんてバレたら、明日から学園にはいられないだろうなぁ。


「咲良ちゃん、本当に美味しそうに食べるね。女の子って男の前じゃあんまり食べないでしょ?見ていて気持ちいいよ。ね、今度美味しいケーキ屋さん行こう?」

「はぁ…」

「約束ね?」

「トモ、抜け駆けか!」

「んー?ただのお誘いだよ。ね?」

にこっと笑われ、苦笑いを返すしか出来なかった。



有名人だからあんまり関わりたくないって思ってたのにな。



《薬効が切れるまで残り21日》


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