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それが始まり


「学生証、何処に落としたんだろ…届け出を出して…見付からなかったら、最悪再発行…。お金が…。」

とぼとぼと今まで通ってきた道を探しながら歩く。

目の前はラウンジだ。一度頭のなかを整理してから探す方が効率いいかも。

ラウンジの扉を開けて、席を探す。


「あの、良かったら食べてくださいませんか!」

その声に視線を向ける。その先には女子生徒がラッピングをしたお菓子を差し出していた。その先には、有名男子生徒4人組の焔火 隼人けさぶつかってしまったひと。その回りには、大地 亜樹、水無月 智昭、五十嵐 陽翔。

「あ、あー」

その内の一人が渋るようにラッピングを見ていた。それをフォローするように、「ありがとね、えっと…」なんて言いながら一人が受けとる。

「華園優姫ですわ。」なんてちゃっかり自己紹介までしている。

それにしても、あの女子度胸あるなぁ。ラウンジには結構人がいて、野次馬も多いだろうに。

「あー、そっか。」

彼女はその環境を逆手に取ったんだろうな。もし、あのまま受け取らなければ非難されるのは彼等の方。彼等も受け取らざる得なかったんだろうし。だから、この大観衆のなかで、とそこまで考えて渡していたのなら彼女は相当の策士だよね…なんて、偏った見方は良くないか。たまたまかも知れないし。

そんな邪推から何と無く気まずくなって、視線を外せば彼女達から離れた席を探す。彼方に注目が集まっているのか、空いた席を探すのは楽だった。

野次馬精神は持ち合わせてないし、ああいう恋愛ごとに関わるとメンドクサイ。


「お味はいかがで…」

「百目鬼 咲良!」

大声で私の名前が呼ばれる。振り返れば、有名人4人組(かちゅうのひとたち)と視線が絡む。

そしてそのまま彼らは此方へと向かってきた。

え?

「落としてたぞ。」

そう言って焔火隼人から差し出されたのは、探していた学生証。

親切にも拾っていてくれたらしい。

「ありがとうございます。」

受け取ろうとすれば、ひょいっと手を挙げられ、「お前、意外とドジなんだな。可愛いヤツ」と甘い言葉を吐きながら笑った。それだけで黄色い声が上がる。

「隼人さん、あんまり百目鬼を見ないで貰えます?百目鬼が減るんで。」

大地亜樹が焔火隼人と私を遮るように目の前に立つ。いや、その“減る”ってなにがだ。

「ねぇ、百目鬼せんぱい。甘いものは、好き?ボクと一緒に向こうでお茶しようよ?」

いつの間にか隣に来ていた五十嵐陽翔。腕を引きながら「ね?」なんて甘えられるが、そもそも私たち初対面だよね?

「……はぁ、ハヤト、アキ、ハル。彼女が困ってるだろ。ごめんね、こんなに可愛い子を困らせるなんて、あいつらなにしてるんだか。」

呆れたように他の人を見るが、水無月智昭にも違和感が拭えない。

というより、この状況に違和感しか感じない。なんでこの四人に囲まれてるわけ?ただ休憩しにきただけなのに…。

「おい、よそ見してんな。俺だけを見てろよ。」

そう言われて顔を無理矢理焔火隼人の方に向かされる。整った顔、さすが女子にきゃーきゃー言われるだけあるなぁ…じゃなくて、ほんと、なにこの状況!?

どうにかして逃げ出せやしないかと思案していれば、「焔火様?」と女子生徒が声を上げる。

彼女の傍のテーブルにはラッピングが解かれた箱。中にはハート型のチョコレート。

「どうして?上手く作ったはずなのに…」

その言葉で脳裏に一つの仮説が思い浮かぶ。

「まさか…」

焔火隼人の手から逃れれば、テーブルの方に向かう。

「百目鬼?」

食べ掛けのチョコレートから覗いていたのは何かの果実。

「……来てください。」

机にあったチョコレートを掴み、もう片方の手で隣にいた水無月智昭の腕を掴めば、ラウンジから飛び出す。

「トモ!?百目鬼!?」

その後ろから他の3人が着いてくるのを確認し、そのまま魔法薬教室まで一直線に向かう。

どうか、仮説が当たっていませんように…。



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