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「そこに人がいたから」と供述しており…

「あーあ、なんで今日に限って教授に呼び止められてしまうかなぁ。」

第3魔法薬教室の近道を走り抜けながら思わず愚痴る。

第6講義室から小道を通り抜けるこの道は第3魔法薬教室まで一直線に突っ切ることができる一本道。ただし、暗くて何か出そうとのことで誰も通ろうとはしない。

何か出るってそれ以上の生物を使役しているのに、何を言ってるのかっていうのが私の感想だ。

小道の出口が見えてきて、全力で走り抜ければ身体に走る衝撃。それとともに、身体が後ろにへと転がっていく。


「うっわぁ~。隼人さん、大丈夫ですか?」

「そっちのお嬢さんも平気?」


ぶつけた頭を擦りながら身体を起こす。出口の近くにいた人達とぶつかってしまったらしい。


「大丈夫?」

「大丈夫です。」

土で汚れた手で触るのは申し訳なく、差し出された手を借りずに立ち上がろうとするが、思ったよりダメージが大きかったのかふらつく。

「ほら、無理しないで。」と肩を支えられる。お礼を言おうと顔をあげれば深い青。

「綺麗…」

「え?」

「あ、すみません。水無月 智昭さん。」

「あれ?俺のこと知ってくれてる?」

「有名人ですから。」

主に、女子に。という言葉は口の中に残す。

「そう?それで…」

「隼人さーん、生きてますかー?」

その声に被害者の方を慌ててみれば、赤髪の男性を男の子が木の棒で突っついていた。


「イテテっ…アキ、やめろ。」

小枝を振り払うと「おい、そこの女。何しやがるんだよ。」

大きな声に思わず身を震わせる。此方がぶつかってしまったのだから怒るのは当然だ。慌てて頭を下げ

「すみませんでした!お怪我は…。」

「擦り傷だけだ。じゃなくてだなぁ…。」

「隼人さん、女の子に吹っ飛ばされるなんて…鍛え方が足りないんじゃないですか?」

「あ?アキ、俺がひ弱だって言いたいのか?だいたいなぁ、こいつが!」

「ハヤト、そんなに声をあげなくても。彼女も反省してるみたいだし、ね?」


「ほんとうにすみませんでした!まさか人がいるなんて思わなくて…。怪我したところ見せてください。下級治癒魔法なら、私も使えます」

「あー、もういい。治癒魔法ならトモ得意だし。いつまでもグチグチいうのも男らしくねぇからな。今後は気を付けろよ。」

「百目鬼、鞄。」と差し出された鞄を受けとる。

「ありがとう。」

「ねぇ、時間大丈夫?急いでたんじゃないの?」

時計を見れば、始業時間まで3分を切っていた。

「え、あ、ヤバい!ほんとにすみませんでした!失礼します!」

第3魔法薬校舎の扉を開け、実習室内へと滑り込む。

幸い、教授は来ていなかった。そのことに胸を撫で下ろし、さっきの非日常な出来事をぼんやりと思い出す。

まさか、あの有名人達と関わる日が来るとは思っても見なかった。

「でも、女子がきゃーきゃーいうのもわかるなぁ。」

確かに、かっこよかった。


「では授業を始めるぞ!」

と教授が現れれば、そんな考えも霧散していく。

ちょっとしたアクシデント。私にはそれだけ。


これが切っ掛けで面倒ごとに巻き込まれるなど思ってもみなかった。







「百目鬼 咲良、ねぇ…。」

手にした学生に視線を落としながら、さっきぶつかった女子生徒の名前を口にする。

「ハヤト、それって…」

目敏く見付けてきたのはトモ。そして、俺の顔を見るなり嫌そうな表情を浮かべる。こういう時に腐れ縁ってやつを感じさせる。俺のやろうとすることに気付いたのだろう。

「ただ、返しに行くだけ(・・)だって。」

そう言って笑った俺を渋い顔で見るだけでそれ以上は何も言わなかった。

あぁ、いい暇潰しができたな。


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