第6話 炎以下四天王の残り
「グフォフォフォフォ、我こそは魔王四天王火のインフェルノーブル。我が肉体は炎、いかに貴様が優れた武道家であろうとも我が肉体を破壊する事は不可能よ」
鍛砕坊の前に立ちはだかったのは炎の大蛇であった。
近くに居るだけでも肌が焼け爛れそうな程の熱気は確実に鍛砕坊の体力を奪っていく。
「南無亞巳蛇打つっっっっっ!!!!」
そんな気がしただけだった。
悪しき蛇を打つ一撃は、相手の肉体ではなく魂魄を打ち抜いた。
たとえ体が固体でなかろうとも、炎とは化学反応から生じる現象だ。
すなわち、強い風を食らわせてやれば消える。
鍛砕坊は無数の音速正拳突きを放つ事で、風を巻き起こし、空気を吹き飛ばす事で一時的に真空空間を作り出した。
「ぐがっ!?」
インフェルノーブルが苦しみの声を上げる。
炎とは酸素を燃やしてその存在を維持するもの。
ゆえに、燃える物がなくなった真空空間ではデスノーブルはその存在を維持できなくなってしまったのだ。
「南無阿弥打打つ!!」
結果、火を司る四天王はその身を形作る炎を消されて消滅した。
まさに昇華《消火》である。
◆
「フーフッフッフッフ! 我こそは魔王四天王最強最後の存在、風のタイフー。我が風の肉体は炎の様には消えぬぞ。貴様らは……」
南無阿弥打打つ!!」
全身が風で出来た風の四天王タイフーは、同じ空気の振動で発生するお経の力を直に受けて消滅した。
戦闘時間約2秒であった。
◆
「つらく苦しい戦いであった」
鍛砕坊が丘の上からその先に広がる大地を見下ろす。
彼の脳裏にはこれまで犠牲になってきた仲間の姿が思い起こされていた。
敵に恐れをなし逃げ出したゲンジンとヨウエン。
死んだ目のサグジョとジョバッガとゴーグ。流されていなくなった。
陸では呼吸できずに死んだバーシャーク。
酸素がなくなって鎮火したインフェルノーブル。
さっき死んだタイフー。
皆得がたき者達であった。
まぁ死んでしまったものは仕方ない。
「皆の犠牲は忘れぬぞ」
むしろ犠牲にした訳であるが。特にサメの死因。
だが鍛砕坊にはどうでもいい事なので即忘れた。
大丈夫、御仏の教えを実践していれば天国にいけるからと思っていたので割とスルーしていた。。
「いざ! 魔王の元へ!」
そして、鍛砕坊は丘の下にある魔王の城に飛び降りたのであった。