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第三者の僕が聞いた話  作者: 夢迷四季
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真実の開示

次に夜空。彼女は小さい頃から幸せであり、孤独だった。これはまだ彼女が明るく振る舞っていた、イジメを受け始める数週間前に聞いた話。


夜空は言った。『物心ついた頃にはもう妹が母のお腹の中にいた』と。

父親は働いているし母親は産婦人科専門病院にいて面倒見れないのが理由で、彼女はずっと父親の実家に預けられていた。

その時の記憶は、ただただつまんなくて寂しくて、と言っていたかな。僕は経験したことないからわからないけど、小さい時にそれは辛いかな、それが仕方無かったとしても。

そして彼女に妹が生まれる。両親は妹が生まれるまで一人だった夜空に、小さい頃たくさんかまったから、という理由で一緒に暮らし始めても妹に付きっきりだったという。断片的な記憶ではあるが辛かった記憶しかないと言った。やはりそこでもまた祖父母に育てられたようなものだと、あくまで笑って話していた。

彼女は優しすぎたんだ、と思う。優しすぎたから残酷な世間に蝕まれてしまった。

それは小学校に入って二年生に進級した頃。

元々引っ込み思案な性格だった夜空は小学校に入学したら変わろうと努力して友達をたくさん作った。その中で親友と呼べる存在が出来たのだが、それは悲劇に移り変わった。親友にはしつこくつきまとう友達がいて、その子にイジメられていたという。本人もわかっていての行動だったらしく反省していたというが、最悪だと僕は思ってしまった。

夜空は許したが、その話を聞いたとき僕は許せなかった。もちろん子供だから多目に見るべきだとしても、やはり僕には一生かかっても許せないと思う。それでイジメが最後であればまだよかったのに、そこから彼女は更に二度…イジメられることになる。

二度目は小学校最高学年になって自然に作られたグループ内での無自覚なイジメ。


グループ内のある女の子が最後の授業参観での自由発表に出たいと言い出した。

それにリーダーの女の子、は元気よく了承。だけど夜空は反対した。


「私は人前に出るの苦手だから出ない」


けど彼女らは夜空の話を聞かなかった。というか最初から乗り気じゃないことに気づかないふりをしていたんだ。

練習も強引に遊ぶからと口実作って無理やり参加させてメンバーに加えて、何度も何度も言っていたのにまるで聞く耳を持たない。

結局直前になって諦めた夜空が一言、「本当は出たくなかったけど楽しかったからいいや」と言ったとき。


「えー!?なんでもっと早く言ってくれなかったの?」


とリーダーの女の子が言った。

僕にはわからない。実際すべて夜空の妄言であって一言も口に出して嫌だと言ってなかったのかもしれないし、言ってたのに聞いてもらえなかったのかもしれないし。

けれどこの出来事は彼女に大事なことを学ばせてくれたと思う。

そして夜空は結局泣きそうになるのを必死にこらえて当日を迎え、それまでの努力に裏切られることなく成功を収めた。

イジメというにはこの出来事では難しいが、普段から自分の思うことしか聞いてもらえない。ほとんど無視される状態で、さらに練習の最中の買い出しはすべて夜空だったという点を追加すれば、それなりに苦しかったのがわかってもらえるだろう。

聞いた話だから僕には真実かどうかも定かではないが。


比較対象は漠然としてしまうが、世の中のすべての不幸な人たちとしよう。

例を挙げるなら、虐待されている者。

暴力を日々他人から受けている者。

自分の物を取り上げられたり金を巻き上げられている者。

言われるがままの奴隷扱いされている者。

そういう人たちに比べれば夜空はかなり恵まれている方だと感じる。

ただしそれは見た限りでは、という点に限る。

精神的に苦痛を与えられる日々を夜空は過ごしていた。

それははたから見たら確かに恵まれているだろう。見た目に出ることなく本人に原因があるのだと言い切ってしまえばそれで終わりになるのだから。

しかし実際は暴力を受けるよりも苦痛だ。

まず暴力であれば周りに気づいてもらえるという希望が見いだせるが、精神的であると口頭でしか伝えられない。

それは信じてくれる人がいなければ無駄だ。


相談した相手が信じなければ嘲笑われる対象に変化し、それが拡散すれば近くに信じてくれる人もいなくなる。

いつしか自分をも蝕み、感覚を鈍らせて相談してももしかしたら自分が悪いのかも、という考えを生み、自信を無くし、正常な判断ができなくなり、人に言われるがままになり、自己嫌悪に陥り自殺を図る。


ネットを利用していた夜空はこの時点で自信を無くしつつあった。そのまま中学入学をしてしまったのだが。


一年目は比較的優しいメンバーのクラスに恵まれた。そのまま三年過ごせるものならどんなに良かっただろうか。

しかしそんな願いは空しく散り、彼女は荒れた人間の多いクラスの一人となった二年。

それなりに上手く過ごせていたのは最初の二か月だったが、そこで仲良くなった二人の女の子がまずかった。

二年に上がった時点で同じ部活の男子に恋をして、それを二人に相談していた。

普通に学校を楽しんでいるように見えるだろう。この時点ではまだ彼女は普通だったと僕でも思う。


ただ一つ、夜空は勘違いしていた事があった。

それは、この世界が不思議に満ちた奇跡が起きる世界だと思っていた事。そして自分がやろうと思えば何でもできると思っていたことだ。

ゲームのし過ぎだったのかもしれない、現実と夢との境界線があやふやになっていたのだろう。


彼女はある男子にイラついて、衝動的に喧嘩をふっかけてしまったのだ。

さらにその男子は夜空の喧嘩に乗り卑怯な手を使いまくって自身をいじめの首謀者に変えてしまった。


そう夜空はここで再び自分の首を絞めたのだ。


始まりはちょっとした無視。数日続いてクラス全体から無視されるようになった。それもそのはず。

夜空が仲良くしていた二人の女子がLINEのトークを加工&スクリーンショットしてネットに拡散。それをみたクラスメートたちは夜空をやばい奴だと思っただろうな。

それだけのことで一人の人間は狂う。

イジメは次第にエスカレートしていった。

休み時間は聞こえるように悪口を言われ、付き合っていた男子も被害を受ける。

そして授業中は先生が見ていないうちにゴミを投げられる。

帰ろうと席を立てばわざとぶつかられて、物は取られたり隠されたり、ばい菌扱いされたり。

まあ女子ってこともあってか、暴力は数える程度だったらしいけど、家に居場所がない状態なのに学校にもいられない。

まともでいられるはずがなかった。


夜空は家に帰ることを拒みつつ学校にも長居することがなくなっていったのだ。

その時はまだ縋るように二人の女子と仲良くしていたのだが、その内の一人があることを勧めてきた。


「カッターナイフとかで切ってみるといいよ」


それはまるで悪魔の囁き。

夜空は後戻りできない道に踏み込んでしまう。

所詮は自傷行為という他人に迷惑をかけることなく自分も一時的に安心できるっていうだけのこと。

ただしその行為は後から自分の身に降りかかる呪いに過ぎない。


夜空はその自傷行為に魅了され、同じく自傷をしている友人と笑いあっては切って、日々を過ごすようになる。

しかし長くは続かなかった。

それをLINEで言ってしまったからだ。

簡単に加工されてスクショされてあっという間に拡散、非難の嵐。

夜空は結局不登校になる。


急に休むようになった夜空に焦ったのか二人の女子はそれぞれを売り始めてメッセージを送ってきた。しかしまあよく加工されていたもんだな。

トーク履歴が残っていたので僕も見させてもらったが、本当にうまあく加工されているんだよ。

しかも本当のトーク履歴と照らし合わせてみれば事実が全然違うことがよくわかる。

けどそれも後からわかった話。


数日たって学校に呼び出された夜空は先生たちに囲まれて、イジメてきたものに謝れ、と言い出しだのだ。


「最初に悪口言われたからこいつらはやったって言ってるんだ。悪いのはお前だろう」


そして嘘の加工されたトークの画像を見せられたらしい。証拠品だそうだ。


「ほらな。…二人はお前に言われたからやったって証言した。けどやっぱり怖いからといろんな人に訴えたそうだ」


夜空はこれを聞いてどう思ったのだろう。

僕なら怒るさ、事実とまるで違うのだから。理不尽極まりない、その証拠は嘘だと言って問い詰めたことだろう。

しかし彼女にはできなかった。先生方の目が自分を責めるように見ている。

イジメの首謀者たちには嘘でも理にかなった証拠がそろっている。

自分には証拠もなくトーク履歴は見たくなくて消しているため証言するしかないのにそれすら信じてもらえなかった。

そしてどうしたと思う?

夜空はどんな行動に出たと思う?


謝罪だ。

イジメの首謀者や集まってきた先生方全員に。

土下座レベルで謝ったんだ。


「ごめんなさい。私が原因でした、ごめんなさい」と。


その時の三人のイジメの首謀者の顔が忘れられない、先生たちの冷たい視線が痛くて空間から逃げ出したかった、と彼女は言っていた。


そしてその一言が元になり彼女はすべての罪を着せられて結局幕引きとなったわけだ。


どう思う。

どう感じた。

どんな感情が生まれた。


怒り、憎しみ、絶望、孤独、闇。

息苦しさに何もできない自身の無力さ。

彼女はこの時一度死んだものだと僕は思う。何故かと問われると難しいけど、夜空自身はこの出来事からいろんなことを学んだと話していた。

そして“自分”を作る上げる第一歩を踏み出したのだと。


そんな夜空が倒れたと聞いた時、僕の見ていた彼女が社会の闇に押しつぶされたような感覚に陥ったのである。


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