夜色。
圭太と未央は宿主のおばちゃんに別れを告げ、只今ショップにてポーションを購入中。
「やっぱりこの先モンスターが強くなってくると予想するからこのポーションの方がいいな」
「そうだね、私も魔力回復薬買っとかないと。あ、圭太君。前衛は圭太君に任せるけどそれでいい?」
「あぁ別に構わないぞ。でも支援魔法は時々使ってくれると助かる」
「りょーかい、っとまぁこんなものでいいんじゃない?」
そんな会話は、日本でしていたら中二病だとバカにされるものだが、この世界では中二病という共通認識が存在しないからいいものだ。一通り旅の準備をこれにて済ませた二人は、雑貨を出て、大通りに出た。そこは年中街の人で賑わっている様子で、兎に角昼前の時間は混む時間帯なのだ。
「相変わらずここも凄いが、王都に行ったらもっと凄いんだろうな」
「そうだね、今日で最後かもよ?こうやって見るのも」
「いや最後にはしないさ、必ず帰ってくる。なんてったて俺たちが出会った場所だからな」
圭太の発言に相槌を打った未央の頬が真っ赤に染まっているのなんか圭太が気づくはずもなかった。きっとこういうところがあるから今まで恋愛に恵まれなかったのかもしれない。
「じゃあ、そろそろ行くとするか」
「そう、だね」
そして圭太はいつ戻ってくるかもわからない、そして名も知らないままの『始まりの街』を出て行った。ようやく”チュートリアル”が終了したのだ。
「さて、門まで来たわけだが、アインが見当たらないな」
圭太はこの街を出ていく前にどうしてもお礼の言いたい人間がもう一人居た。それすなわち、異世界に転生されて右も左もわからなかった圭太に戦い方を教えてくれたアインだ。どうしても言いたかったが、いないのならば仕方がない。
圭太は少しだけ名残惜しい気持ちを心に残して、本当に街を出て行った。
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街を出てから一時間弱が過ぎて、圭太は隣を歩いている未央を見て少しだけ訝しげに思った。
街を出てからしばらくはモンスターが近寄ってこないから問題ない、と圭太は事前に未央に話していたが、何故か未央はずっと武器を手に持ったままだったからだ。
「お前何でずっと武器構えたままなんだよ。しばらくモンスターは出ないって言っただろ」
未央は圭太の言葉を聞きながら周囲の警戒をしていた。
「いやな気配を感じるの・・・これは普通のモンスターじゃないわ。もっと大きくて殺意に満ちてる気配。街を出てからずっと、視線で舐めるかのように私たちを見ている・・・」
圭太はそんな嫌なフラグを立ててきた未央の額にババチョップを食らわせた。
「やめろってマジで?!そういうの!もう王都近いのにそんなの連れて来たらまずいっ・・・・」
圭太が喋り終る前に、圭太に向かって飛んできた三本の矢が、圭太の背を貫いた。
「・・・っ!イタイイタイ!はぁ?!なんなの急に?!」
矢が飛んできた方向に、フードを深く被った人影がゆっくりと近づいてきた。
今現在いる場所は深森。この世界にエルフという種族がいれば、エルフの仕業かもしれないと圭太は思ったが、確証がない。
「圭太君、戦闘態勢に入って・・・!」
圭太に聞こえる程度の声でそう言った。
「ったくめんどいな、敵の数は?どうせ一人に見えて複数いるんだろ?」
正解を当てるかのように圭太は言った。
「えぇ、敵の数は五人、私の察知魔法を潜り抜けて圭太君に攻撃したわ」
「つまり手練れってことだろ?それもかなりの」
無言でうなずいた未央。かなり意識を高めてるようだが、それ一方、圭太の方は余裕があった。
「未央お前は下がってろ」
「ダメよ、圭太君一人でどうこうなる相手じゃないわ!」
「頼むから下がっててくれ。お前を危険な目には合わせたくない」
圭太はそういって未央の周りに絶対障壁を張った。これは通常の圭太では使えることはできない魔法だ。つまり圭太は既に魔王化を果たしていた、ということになる。
未央は必死に叫んだ、叫び続けた。そして間もなく目の前は夜色に染まり、未央が感じていた気配は完全に消滅した。
すみません。大変仕事の遅い岸浦です。今回は諸事情で投稿が遅れました。
さて、今回の話はどうでしたでしょうか?最後はついに圭太が未央にあれを見せましたね。
次回が楽しみですね(笑)
今回はここまでとさせていただきます。
次回も乞うご期待!




