また空間へ。
魔法陣を盛大に打たれたゼウスは気絶していた。そしてヘラが圭太に向けてこう言った。
「あなたは二度死に、本来ならばもう生き返ることは叶いません」
その言葉に、再度自分の死を自覚した圭太。
(そうか、俺やっぱ死ぬんだな・・・。まぁ元々死人が一度でも生き返るなんてのがあり得ない話なんだし仕方ないか・・・)
圭太が俯いていると、ヘラは言葉を続けた。
「しかし生き返る方法がないわけではありません」
「それは?」
「それはあなた自身が災厄になることです」
「どういう・・・ことだ」
「言葉通りの意味です。あなたが、魔王になるのです」
「冗談はやめてくれ。俺は魔王を倒すっていう名目でこの世界に転生したんだ。仮に俺が魔王になったところでこれからをどう過ごしていけばいいんだ?」
「それなら問題はありませんよ」
ニコっと微笑んだヘラが言った。
「だってあなたにはもう魔王がいるじゃないですか」
「はぁ。やっぱその線で来たか・・・」
「わかっていたんですね・・・」
「まぁな・・・だってあいつ自分で魔王とか名乗っちゃってたし」
苦笑いして圭太はつい昨日のように思い浮かべた。
「あなたは魔王の存在を知っている。しかしその召喚の仕方は分からない、違いますか?」
「まぁやっぱそんなことだろうと思ったよ・・・つまり俺が魔王を使えるようになれば生き返れる。そんなとこだろ?」
肩を竦めて圭太は本当の正解に肉薄した答を言って見せた。
「その通り。しかしあなたは一つだけ勘違いをしているわ」
「勘違い?」
「そう。わたしは生き返る方法がそれだけとは言ってませんよ」
「なら・・・もう一つの方も聞かせて貰おうじゃねぇか」
「それはあなたがこの世界の中心に立つことです」
「それはつまり俺に王様とかになれってことか?」
ヘラは首を横に振った。
「あなたが人々から愛され、慕われそして、敬われる存在になることです。しかしそれは途方もないほど難しいこと。何しろあなたは魔王として生きていき人間界で普通に生活していかなければならない」
「なんかさっきよりハードル上がってないですかね・・・?」
でもまぁ、と圭太は続けた。
「それも案外悪くないかもな。せっかくの異世界転生なんだ。もっと楽しんでいかないと。それに、イーズを『使う』だなんてことはできないしな。あいつは俺の・・・いや、俺らの仲間としてこれからを共にしたいからな!」
圭太はイーズを物みたいに扱うことはできない、そう言った。それを聞いた反応したのはヘラではなくゼウスだった。
「その返事が聞けてとても嬉しいよ」
「あ、お前生きてたのか」
「いろいろツッコみたいけど今は後回しだね。今から君には魔王になってもらう、それはつまり膨大な力を手に入れることになる。それは人々にとって死の恐怖を意味することだろう。君にはそれを受け入れられるほどの度量はあるかな?」
真剣な眼差しでゼウス圭太に問う。
「まぁ自信はないがそれをなんとかするのが『世界の中心に立つ』ってことだろ?なんなら俺はその役目を遂行するまでだ」
ヘラとゼウスはお互いの顔を見て頷いた。
「分かった。ではこれから君に魔王の力を与える」
ゼウスがそういった途端、暗闇だったはずの空間が白く染まり圭太の見つめる先には黒く輝く一つの光の集合体があった。そして圭太がそれを手にした瞬間、圭太は元の世界に引き戻されていった。




