表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/99

83.ルシフェラ=ファディス――3

「――グルォオオオオッ!」

「チッ、穢らわしい蜥蜴の分際で……!」


 【竜哮(シャウト)】と共に繰り出した拳は長剣の柄に防がれるも、振り払ったもう片方の爪がガードをすり抜け堕天使の身体に鮮やかなダメージエフェクトを散らす。

 カウンター気味に首筋を掠めた刃が激痛と共に斬線を刻んでいくが、それはもう今更だ。

 空中戦という事もあってほぼ全身に及ぶ傷はとうに一つ一つの区別も効かない程の苦痛を生み出している。

 新たに一つ増えたところで、もはや全身を苛む痛みが変化したようには感じられない。


「獣に堕ちて猛り狂うというならば、この手で引導を渡して差し上げましょう!」

「ガアアアアアアアアアア!!」

「ぐっ!?」


 【ブリザード】で放った吹雪を陽動にして回り込み、尾の一撃を叩き込む。

 防御した長剣を払いのけて顔面に拳を叩きつけて頭突きで追撃。

 脇腹を深く斬り裂かれるのを感じながら、更に踏み込んで両の爪で一撃を見舞う。


 スキルも重ねたいところだが、この状態じゃ詠唱もまともな言葉にならない。

 周囲に意識を向ける余裕も無くなった中、赤く染まった視界の中に堕天使の姿だけ捉えて踏み込んでいく。


「――アレンさん!」

「ッ!?」


 間近から耳朶を叩いたのは、この上空では有り得ないはずの声。

 それが意識を一気に引き戻す。

 声の元に注意を向けると、俺の首筋の鬣にしがみつくクリスの姿があった。


「グルッ……」

「ここまでのようですね!」


 一度距離を置くと、好機と見たかルシフェラは逆に踏み込んでくる。

 奴の意図とは違うが……確かにここまでのようだ。

 視界に表示されているのは竜化の効果時間。

 その数値が今、ゼロになった。


「我が魔剣の錆となるがいい!!」

「させませんっ!」


 竜化が解けた致命的な隙を見逃すはずもなく、堕天使が魔剣を振り下ろす。

 そこにクリスが鋭い声で割り込んだ。

 片手で俺の身体を抱え、残る手に握った短剣を迫る切っ先に合わせる。

 何がどうなったのかは分からない。

 ただ現象として認識できたのは視界に走る血色の斬線。

 そして、凄まじい加速度と共に霞んだ視界のみ。

 誰かの声が聞こえたかと思うと、ボフッという音と共に目の前が真っ白になった。


「アレンさんに回復をお願いします!」

「【マキシヒール】!」

「【リザレクト】っ……ダメだ、傷が消えてねーぞ!」

「ならばこれで――【リフレッシュ】」


 喧騒の中、次第に俺の――いや、僕の意識もはっきりしてくる。

 痛みはまだ治まらないけれど、HPは八割強まで回復している。

 この感じは……誰かが掛けてくれたリジェネが、多分ルシフェラによる継続ダメージと釣り合っているのだろう。

 HPの残量を示すバーの先端が不安定に伸縮している。


 って、そんな場合じゃない!

 慌てて立ち上がったところで全身を苛む痛みに思わずたたらを踏む。


「アレンさん、大丈夫ですか!?」

「なんとか。とりあえずHPは持ち直した」


 掠れた声をどうにか返し、クリスの姿を見て息を呑む。

 庇うように右腕を抑える手の下から覗いていた禍々しい血色の痕。


「私なら平気です。アレンさんに比べれば……()っ」

「クリス!?」


 顔をしかめたクリスは短剣を抜くと、傷跡のところで一息に腕を切り落とした。

 さっと取り出した霧化薬(ミストポーション)を振りかけるとその傷もゆっくり癒えていく。

 無茶な真似を……!

 自分の事は棚に上げてそう思っていると、少し離れたところで轟音が地面を震わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ