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74.ガーディアンオブメモリー――4

投稿ミスすいませんorz

「ッ……?」


 無数の遠距離攻撃の集中砲火に呑まれた亜龍。

 爆煙が晴れた時、その姿はどこにも無かった。

 これで終わりのはずがない。

 竜化に伴って拡張された視界の全てに意識を巡らせる。


 反応があったのは地上。

 視界の隅で、見えない何かが動いた気がした。


「クリスさん!」

「任せてくださいっ。【クイックシュート】!」


 軍師(ニムエ)の指示に従い、クリスの矢が地面を貫く。

 ――見えた!

 一瞬遅れて露わになったのは、肋骨が身体を突き破って伸びるような独特のフォルムを持つ大蛇。

 序盤のボスながら全敵の中でも飛びぬけた隠密性能を持つエネミー……コブラ・コスターム。


 砲撃の爆音と煙に紛れて変身してやがったのか。

 クリスの矢にも怯む事なく真っ直ぐに目指すのは、プレイヤーたちの指揮を一手に担う軍師ニムエ。


「敵はそこだ! 【紫呪刻印(バイオレットマーカー)】!」

「ジャッ……」


 遅れてその存在に気付いたらしいガンナーの射撃もその移動を阻むには至らない。

 だが、銃弾に宿った紫炎はあっという間に燃え広がり、その輪郭を浮き彫りにした。

 このボスは姿を隠す事については他の追随を許さないが、それ以外のステータスは極めて凡庸だ。

 それをコピーしているG(ガーディアン)O(オブ)M(メモリー)の補正があっても、例えばその攻撃力が万全の防御を正面から貫いてくるような事はない。

 一度その居場所さえ特定されてしまえば更なる集中砲火の餌食になるだけだった。


「ジャ――ガ、ギギッ――」

「また変身です! 皆さん、次に備えて!」


 軍師(ニムエ)の指示に俺たちは攻撃の手を止め、次の変身に備える。

 無数の視線に囲まれながら、不気味な光が紫炎に縁取られた輪郭をぼやけさせ……。


「――――――」

「ま……マーダーフォートレスだぁあああ!」


 プレイヤーの一人が悲鳴のような声を上げる。

 ゆっくりと立ち上がった轢殺要塞の名を持つゴーレムは、全身の車輪を音高く回転させた。



「――ハァ、ハァ……」

「やったか!?」

「ああ、次だ。これで何回目だよ?」


 魔の森を治めていた悪霊の王がその動きを止め、そいつが操っていた捻じれた木々も急速に枯れていく。

 能力こそ相応に底上げされているものの、GOMが模してくるのは全て一度プレイヤーの誰かが打ち倒したボス。

 そのデータを一元化して保有するニムエの指示のもと、想定以上の窮地もなく続く戦いはそろそろ根競べの様相を呈してきていた。

 いくらなんでもボス全てと再戦させられるなんて事は無いだろうが……そろそろ俺が竜化していられる時間にも底が見えてきたぞ。

 次の敵は――。


「……来る」


 ふと、傍にいたクリスが呟いた。

 一拍遅れて俺も理解する。

 ああ、次の敵はコイツか。

 そして……だとするならば、コイツが最後にして最大の壁となって立ち塞がるのだろう。


「「――ガァァァアアアアアアアアアアアアッ!!」」


 奴の雄叫びに此方も【竜哮(シャウト)】を合わせて相殺する。

 プレイヤーの間に広がったざわめきさえ自ずから立ち消え、誰もが目の前の敵を最後の壁と察して万全の態勢で構える。


 第十二メインエリア屍城の主たる魔王。

 龍鬼バウルザーハ・グランロード(大帝)が、腰に差した二振りの山刀を静かに抜き払った。


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