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69.星核・上層――2

「ふッ――」

「「「ギギャアッ!?」」」


 落ち武者ことエンド(\(^o^)/)の放った一閃……一閃?

 思っていて少し首を傾げるが、まぁシステム上は一閃だろう。

 ともかく居合の要領で放たれた斬撃は幾つかに分かれて飛び、無数のゴブリンを一撃のもとに斬り捨てた。


 慎重に手探りで攻略中の星核(アクシズ)・上層。

 僕らはちょうど一人で進んでいたエンドと出くわし、行動を共にしていた。


 ちなみに彼が得た称号は【孤高の鬼武者】。

 その試練(イベント)内容は本人曰く“道場破り”だったらしい。

 最初に現れる無数の雑魚敵を撃破した後、それと同系統の技を扱うボスと戦闘。

 これを繰り返して剣士や槍師といった無数の武芸者を打ち倒してきたそうだ。

 要求された条件……完全ソロで。


 まず最初の戦いからして、いくら相手が雑魚とはいえこの終盤の敵が複数出てくるのを一人で撃破という条件がそもそも嫌らしい。

 エンドは人間……っていうとまるで僕は人間じゃないみたいな言い方になるけど。

 とにかく特に広範囲を一掃するような大技を持たないこの落ち武者には相当な難題になったはずだ。

 そして二刀流を扱うエンドに対し、相手はそれぞれ自分の得意な武器で襲い掛かってくる。

 特に槍や鎖鎌のような中・遠距離武器を相手に二刀流はかなり厳しい戦いになるだろうし、実際エンドも苦戦したらしい。


 その試練を全て乗り越えてこうして称号を手に生還したというのだから、まさに鬼武者という称号がふさわしいだろう。

 実際、称号獲得イベントに臨んでそのまま帰ってこなかったプレイヤーだって何人か報告されている。

 幸い親交のあるプレイヤーで称号獲得イベントに挑んだ人は皆無事だったけど……嫌な話だ。


「――【ブレイズサークル】っ」

「【ダークリーパー】【クラッシュコンボ】……【ファイナルロンド】!」

「「「ガァアアアア!!」」」


 僕がそんな事を考えていると、目の前ではアレンに負けじとクリスたちも大暴れしていた。

 クリスの放った白炎のチャクラムが霧の身体を持つ幽鬼を焼き払い、エイミのコンボが頑強なゴーレムを一気呵成に打ち砕く。

 相手の数が多い事もあって、その様子は圧巻の一言に尽きる。

 ついでにドロップの量も圧倒的だ。


「――行き止まり……か?」

「そうみたいだね」


 立ち止まったルッツの言葉に同意する。

 これまでの分かれ道もデータが上がっていない範囲では全て調べつくした。

 となれば、コレが今回のボスゲートなのだろう。


 目の前には映画館にあるスクリーンのようなサイズの巨大な鏡。

 そこに映っているのは確かにこちら側と同じ景色だけど、微妙に暗かったり足元の髑髏など細かい差異があったりして異質さと不気味さを醸し出している。


「あれ、小ボス部屋ってもう見つかってたんだっけか?」

「いいや。最終ダンジョンだしヒントは無しって事じゃない? 掲示板に上がってる情報が正しいとするなら、だけどね」


 エンドの言葉にエイミが応える。

 これまでのダンジョンは、それこそあの屍城にさえ小ボス部屋が存在した。

 そして、その部屋の主を強化したような敵がダンジョンのボスとして立ち塞がってきた。

 それが無いということは、エイミが言った通りヒント無しでボスに挑むという事になる。

 ……おそらく、実際そうなのだろう。

 最初にこの星核を調査してマップを作ったプレイヤーたちは、これまでのダンジョンでも率先してマッピングを行うばかりか一部の隠し部屋さえ見つけてきた専門家だ。

 その彼らが部屋を見落としているとは考えにくい。

 僕らの場合だと、そんな彼らにスカウトされた事もあるクリスが見逃した可能性も考えにくい。

 さて……。


「じゃあ、今日はここの情報だけ上げて引き返すか」

「了解」


 一度に複数のパーティでボスに挑めるようになった現在、ここにいる面子だけでボスを攻略するメリットはほぼ無い。自殺行為でさえある。

 というわけでルッツの言葉に頷き、僕らは新しい能力の扱いの練習も兼ねつつ町へ引き返した。


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