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68.奈落の町――5

 これでエイミも称号【万命を刈り取るもの(メガデス)】を獲得。

 その効果は既存スキル及びステータスの強化はもちろん、任意発動のものを三つ備えていた。


 第一に、一定時間のみ既存の破壊魔法を強化された状態で使用できるようにする効果。

 例えばこの効果を発動中に【名も無き死槍】を使うと、生まれる槍の数が三本に増えるというものだ。

 放たれる槍の角度は任意に調整できるようで、単純に一体の敵に集中させて威力を三倍にする事もできれば三方向の敵を同時に消し飛ばす事もできる。


 第二に、イベント中の戦闘で僕らが呼び出された時に纏っていたような禍々しい煙を纏う効果。

 この効果の発動中は破壊魔法のチャージタイム、クールタイム、そして消費SPが軽減される。

 更に煙自体に攻撃力が備わっているらしく、星核(アクシズ)上層に現れるエネミーのHPさえ凄まじい勢いで削っていくのが確認できた。

 この煙を鎌に纏わせ敵の只中に飛び込み殲滅する姿は、とてもじゃないけど魔法職に見えるものではない。


 第三の効果は……称号の説明によれば、最後の破壊魔法を発動するというもの。

 【名も無き死槍】と違って本当の意味で名前を持たないこの破壊魔法の詳細は、まだ検証していない。

 理由は二つ。

 その力は説明を見れば察せられる事。

 そして、代償のリスクがあまりに大きい事だ。

 便宜上、破壊魔法【メガデス】と呼ぶ事になったこのスキルの効果は指定した範囲に極めて高い威力、そして防御貫を備えた爆発を引き起こすというもの。

 コストは残りSP全て。

 更に代償として一定時間あらゆる手段でのSP回復が無効となり、その間最大HPも十分の一にまで低下する。


 敵も強力になってきたこのタイミングでこの代償は危険が過ぎる。

 元より多彩な手段での火力に拘った結果、防御の方はかなり心もとないエイミの事だ。

 例えるなら僕が竜化できない状態で安全圏から投げ出されるようなものか。

 いや、今の僕には【竜鱗】【竜殻】や【クイックシフト】があるから、状況として比べるなら猶更ひどい。

 そもそもこのゲームの仕様上、この破壊魔法は仲間もまとめて消し飛ばしかねないという危険性も大きい。

 他の効果が強力な事もあって、これはスタッフ側からの罠みたいなものなんじゃないかと邪推してしまうレベルだ。


 ――こんな感じで、その日はエイミの称号の効果だけ検証して解散した。

 部屋に戻った僕は掲示板を開き、他のプレイヤーが獲得した称号について公開されている情報を眺めていく事にする。


 例えばシューター……クリスのジョブであるレンジャーと違って銃火器によるスキル【砲撃】や、専用の近接戦闘スキル【コンバット】が特徴的なジョブのプレイヤーの場合。

 彼はどこのFPSだという世界に放り込まれ、片側の軍の刺客として敵軍の陣地を破壊し、バカみたいに強い敵将ユニットを暗殺してきたらしい。

 得られた称号は【戦塵の死神(ダスティレムナント)】。

 その戦場で利用した兵器の数々をスキルとして召喚・使用できる効果らしい。


 他には王道だったのが魔物使いというジョブを取っているプレイヤーの話。

 彼女は無数の秘境に飛ばされるという、エイミに近い方式でのイベント。

 魔物使いは【召喚魔法】で召喚する魔物を操ったり【テイム】で一時的にエネミーを操って使い潰したりする戦い方のジョブ。

 そこで多頭の大蛇や不死鳥なんかのボスと戦って力を示し、得られた称号【幻域の統率者(ビジョンルーラー)】によって倒したボスを召喚できるようになったとの事。

 ひときわ強そうな巨龍にも挑んだけれど勝ち目が無く撤退、その龍は召喚できる中に含まれていなかったと悔しそうに書いてあった。


 他にプレイヤーたちを牽引してる主要PTだと、「円卓」「裏切(ウラギル)」はPT単位での称号獲得イベントになったらしい。

 その内容というかタイプはどちらもエイミと同じパターン、つまり複数のステージを連続で戦う形式。

 その内容は、円卓は異世界から中世、古代と色々な世界観の戦場に召喚されて敵軍を粉砕するというもの。

 裏切たちはこれもまた色々な世界観の城や屋敷を舞台に、ボスNPCの暗殺や味方NPCの脱出補助なんかをこなしたらしい。

 芸が細かいというか、PT単位で得た称号の効果はメンバー一人一人によって違うせいで割とややこしい事になっていた。


 掲示板を眺める限りだと、プレイヤーの大多数は称号を獲得しつつある。

 もう少しすれば、いよいよラストダンジョンの本格的な攻略が始まるだろう。


 ……新しい力の数々に昂揚するより、そんな力が必要になるこれからの難易度が心配になるのは悪い癖か。

 溜息を一つついてウィンドウを閉じると、僕は明日に備えて眠りについた。


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