表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/99

59.試練の森

「っ……」


 開幕早々に放たれた、地形さえ変えそうな一撃。

 その余波は離れていたクリスにも伝わったようで、表情を引き締め弓を構えた彼女はゆっくりと移動を始める。


「――【クイックシュート】っ」


 不意にその手が閃いた。

 その矢は空中で弾かれ、ほぼ同時に迷彩柄の服を着た狩人が姿を現した。

 二度ほど矢を撃ちあったクリスは弓を納めて双剣に持ち替える。


「この程度なら……」

「【ハーミットハイド】ッ」

「【リーフショット】」

「なっ――!?」


 矢を最小限の動きで躱しながら距離を詰めるクリスに、迷彩服の狩人は何らかのスキルを使用して姿を隠す。

 だけど短い詠唱と共にクリスが手を振ると、いつの間に握っていたのか数枚の葉がエフェクトを帯びて放たれた。一見して大きく狙いを外したように見える緑の弾丸は、しかし見事に相手の姿を暴き出した。


 今の【ハーミットハイド】とかいうスキルは隠蔽(ハイド)と同時に移動を行う効果だったってところかな?

 愕然とする狩人へクリスは更に迫っていく。

 相手もぼんやり突っ立っているわけではなく連続してスキルさえ織り交ぜて矢を放つものの、それらはクリスに掠りもしない。


「【マルチ――】」

「終わりです。【風神怒濤】」


 双剣の連撃は的確に狩人の急所を捉え、そのHPを削り取る。

 その最後の一撃はトドメではなく……後方から飛来した矢を、振り向きもせず叩き落した。

 絶命し爆散する迷彩服の狩人を飛び越え、クリスは射手の方向を向きつつ再び弓矢に持ち替える。


 表示されている俯瞰図を見ると多くの赤点は動き回り、互いに出会った時点で戦いを始めている。

 そうして交戦中の狩人にまた移動している別の狩人が出くわす形で戦況は次第に加速してきていた。

 そんな時、序盤にも放たれた巨大な光線が再び森を揺るがす。


 画面を見ていると、特に積極的に相手を仕留めている狩人は何人かに絞られてくる。

 例えばさっきから巨大な光線を撃っているのは、小悪魔じみた尻尾を生やした金髪の狩人。スキル名は【フェイタルベリー】。クールタイムが終わる度にぶっ放していると思しきそれは、反動によるものか毎回滅茶苦茶な方向に絶大な破壊をもたらしている。

 正直実用的とは言い難いそのスキルが彼女の全てではない。

 とはいえ他のスキルも力任せのものが多いんだけど……【フェイタルベリー】に引き寄せられたかのように接近し攻撃を試みた狩人は皆、破壊力抜群のカウンターを受けて一撃で脱落させられている。


 それとは対照的な戦い方をしているのは、バンダナを巻いた刈上げ頭の狩人。

 彼は他の狩人に襲われたときはまるで蛇のような動きで木々をうまく使って離脱し、攻撃の際はかなりの遠距離から恐ろしい精度で急所を一撃。絵に描いたような狙撃手スタイルと言えるだろう。


 そんな猛者の中にはクリスも含まれている。その動きは今まで僕らが見てきたものと同じ。

 卓越した察知力で相手の居場所を完璧に把握し、弓と双剣を使い分けて傷一つ負う事なく狩人たちを仕留めていく。


 後は大体横並びというか……いや、どの狩人もポテンシャルは凄まじいのだろう。ただ、画面を見ていて特に戦いが際立っているのは今挙げた三人くらい――いや、もう一人いた。

 明るい緑色の髪が特徴的なその狩人が放つ矢はやけに威力が高く、金髪の狩人と違ってその精度も抜群。補助的に放つ雷にはスタン効果があるのか、彼女に狙われた狩人は全て脱落している。

 隙らしい隙といえば、矢を番えてから放つまでの時間が若干長い事くらいか? でも、その間を狙った攻撃も全て身のこなしだけで躱されている。



 主に金髪狩人の【フェイタルベリー】によって狩人たちの数はどんどん削られていき――今、また一人が脱落。残る狩人は九人となった。

 クリスを含めてさっき気になった四人は全員、生存者の中に含まれている。

 森を区画ごとに映していた映像も、残った狩人を個別に映すものに変わる。

 狩人たちのサバイバルも、いよいよ大詰めを迎えようとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ