47.黒鉄の町――4
「……あれ?」
「クリス、どうかした?」
洞穴のボス、アームイーターえの三回目の挑戦。
傍らに立っていたクリスがふと首を傾げた。
「えっと、気のせいかもしれないんですけど……ボスの甲羅に突き立った武器の数が減っているような……」
「んー……どうだろ。ルッツとエイミは何かわかる?」
「む……」
「いやー、ちょっと分かんないねー。ま、今は切り替えていこう!」
結局その日も無事に名も無き勇士シリーズの素材をゲット。
情報を掲示板に上げ、そして翌日四度目の挑戦。
「クルルルルルルルル!」
「やっぱり減ってますって!」
「確かに、そう言われてみてみると……」
「でもどういう意味があるんだろうね? 何かの演出なんだろうけどさ」
四回目の挑戦では、ボスの甲羅に刺さった武器の数は見るからに減っていた。
少し警戒したけれど行動パターンにも変化は見られず、無事に高ランク素材をゲット。
アームイーターの甲羅に刺さった武器の数は五回目で更に減り……六回目に挑んだとき、とうとう無くなっていた。
ハゲてるとかなんとか言って笑ったのも束の間、気分を切り替えて真面目に撃破。
異変が起きたのは……というより、これまでの変化の理由に当たりが付いたのはこのときだった。
「僕は今回ハズレかなー」
「私もです」
「俺もだ」
「アタシもだね……あれ?」
「誰もいない?」
改めて確認するけど結果は同じ。
これまでの五回は誰かが入手していた名も無き勇士シリーズの素材は、今回ドロップしていなかった。
「もしかして、武器が減っていたのは……」
「多分そうなんだろうね。確かに、あんなのが無尽蔵に出てきたらゲームバランスにも影響するし」
「うーん……他に良さそうなドロップも無いし、このボスはここで打ち止めってとこかな」
ボス戦は結構消耗する。そう無駄な回数を繰り返すわけにはいかない。
最後にもう一回だけ戦った結果はやはり誰も高ランクドロップ無しということで、僕らはアームイーターから手を引くことにした。
得られた名も無き勇士シリーズの素材は数が限られている。
皆で相談して悩んだり必要素材を回収しに行ったりすること数日、用途はルッツの防具とクリスの武器に決まった。
久しぶりに荒地へ向かい、グリードウィングで使い心地を確かめ……いよいよゴーレムとの再戦のめどが立った日のちょうど翌日。
僕らが集合場所にしているカフェに、一人の落ち武者が現れた。
「よう、久しぶりだな」
「……エンドか」
落ち武者……エンドは挨拶もそこそこにアイテムボックスから何かを取り出す。
赤い宝玉……この場でそれを見せるって事は、もしかして?
「流石、倒せたんだ?」
「ああ。お察しの通り、コイツは奴のコアだよ。っつーわけで、悪いな。ボスとの共闘はまたの機会にって事で頼む」
「構わん」
「うん、その時を楽しみにしてるよ。お疲れ」
「それより第二形態について情報を得ておきたいのだが……」
「別にいいけどよ、アレは俺のコピーだったし、役に立つかは分かんねぇぜ?」
武勇伝半分、参考半分って感じか。
エンドとマーダーフォートレスの死闘の顛末を聞いた後、落ち武者に別れを告げた僕らは岩山へ向かった。




