表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/99

46.アームイーター――4

 ――というわけで、再びアームイーターの潜む洞穴へ。

 前回の帰りと同様に蝙蝠(ダークバット)だけ仕留めながら最大速度でゲートへ向かう。


「アレンさん……」

「大丈夫。もう無茶なマネはしないよ」


 ゲートの前で立ち止まり、心配そうに振り返るクリス。

 こちらを案じる表情を浮かべたその顔に軽く頷き、先にゲートをくぐる。

 そうだ。

 ……これ以上、クリスたちに心配をかけるわけにはいかない。

 改めて決意を固める。

 視線の先で、アームイーター……洞穴の主が、目を赤く輝かせた。


「クルルルルルルルル!」

「チッ、間に合わないか」

「こっちは大丈夫! 二人は手筈通りに行って!」


 駆けだし、アームイーターの左右を取るルッツとエイミ。

 ほとんど同時に天井からは三体のナイトファングが現れる。

 昨日の再現のようにクリスが精密射撃で足並みを乱すのとターゲット取りを同時にこなす。

 そのまま流れるような動きで双剣に持ち替え、スキルによる連続攻撃で一体を撃破。


「もう一体――!」

「わわ、っと……クリス、今がチャンス!」


 こういう時のために持っていた投擲用の短剣を投げつけ、クリスに襲い掛かろうとしていた蝙蝠の注意を引く。

 思ったよりあっさりと僕にターゲットを切り替えたナイトファングの噛みつきを躱しつつクリスに合図を出す。


「まったく……すぐ仕留めます! 【グレイブエッジ】【割殺】【回し蹴り】!」


 一瞬だけ嘆息したクリスの連撃。いつもの【グレイブエッジ】に【割殺】の赤黒いエフェクトが加わり、短剣が突き立つと同時に回し蹴りがその刃を深く叩き込む。

 刃はバターでも切るように滑らかに入り……パカッと見事にナイトファングを両断した。


「――【クイックショット】」

「ギッ!?」

「【連拳】」


 そこから動作に一切の遅延なく早撃ちを披露したクリスは迫ってきていた三匹目の蝙蝠にとびかかり、矢を無数の拳で打ち込み容赦なく爆散させた。


「アレンさん、ボスに接近しますよ!」

「……あ、うん!」


 鮮やかな手並みに見とれていた意識を引き戻し、ボスが新たに仲間を呼ぶより早く効果範囲内へ。

 ルッツとエイミが地道にHPを削っているところへ、クリスが一条の矢を放り込んだ。


「こちらは片付きました。ここからは私も援護します」

「ありがと、助かるよ! ――【クラッシュコンボ】!」

「【ヘビィスマッシュ】!」


 ……そして、僕も隙を見て回復薬を投げたり補助アイテムを使ったりする事しばらく。

 それはもう何回目かになるルッツのエフェクトが、ひときわ激しいエフェクトを散らした時の事だった。

 苛立ったように激しく首を振る陸亀(アームイーター)。その尾から現れた白蛇が牙を剥く。


「この盾は壊させん……!」

「ジャッ……!」


 禍々しいエフェクトを帯びた蛇牙による噛みつき。ルッツはコンパクトに構えた剣でその顎を真下から打ち上げることによって凌いだ。

 そうして生じた隙を逃すことなく迅速な動きで僕たちのラインまで退いてくる。


「よし、行くか! 【起動(スタートアップ)竜化(アセンション)】!」


 二人が下がったのを確認し、入れ替わるように前進して竜化。

 ガンつけてくる白蛇の赤い眼を真っ向から睨み返す。

 まずは蛇が吐き出した毒霧を【ファイアブレス】で処理。

 亀の顔面めがけて爪を突き出し、迎撃しようとした蛇首を鷲掴みにする。


「そぉら捕まえたァ……なんて、な」

「ッ――!」

「まずは一発、喰らっとけや! 【旋月】!」

「――――――!?」


 怯む素振りを見せた蛇首に、遠心力の乗った尻尾を叩きつける。

 前回と同じく効果は覿面。


 ……落ち着け。熱くなるな。

 内心そう呟く。

 視界の端に亀首を確認。そして、強化された視力で暴れる蛇頭の位置を見切る。


「【ツインブレイク】ッ……【旋月】!」


 左右から交差するように振り下ろした爪で蛇頭を補足。爪を食いこませたまま身体を一回転させ、さっきと同じ場所にもう一度【旋月】をぶち込む。


「ッ、アレンさ――」

「おっと。……言っただろ。心配は無用だって!」


 尻尾に噛みつこうとしてきたエフェクトつきの亀牙は、宙を掴んだ足を起点に身体を逸らして回避。

 威嚇の声と共に伸びてきた蛇首は竜腕でその喉元から振り払う。


 一発、二発、三発……そんな調子でどれだけ殴り続けただろう。

 気が付けば思ったよりあっけなく、ボスの身体は砕け散った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ