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3.平原

 新シリーズ3話投稿の三話目です。

 そうしてクリスともフレンドとPT登録を済ませた後、互いのジョブとスキルを確認することになった。


 ルッツは防御に優れたナイト。PTに必須の前衛だ。

 スキルはナイトの適性スキルである騎士道、聖剣術と汎用スキルの心得。

 壁をきちんとこなしつつ状況に応じて強力な攻撃も可能、且つ最下級ながらも大概の事ができる心得も抑えた構成だ。


 クリスはバランスの取れた能力で何かと器用なレンジャー。

 スキルは適性スキルの狩猟と自然魔法、汎用スキルの総合体術。

 元から万能タイプの専用スキルで物理・魔法の両方を備え、至近距離の戦闘でも体術で応戦できる様はまさにオールラウンダー。


 僕はナイトより若干攻撃寄りの性能をした竜騎士。

 スキルは適性スキルとも違いこのジョブでしか使えない固有スキルの竜頭、竜腕、竜脚。

 効果時間は短くクールタイムも長い必殺技でスキル枠を埋めた、典型的なネタキャラだ。


「――ちょっと待て」

「言いたいことは分かる。正直すまんかった」

「……知り合いを見捨てるような真似は寝覚めも悪いし、面倒くらい見てやるが。クリスは、こんなPTでも良いのか?」

「だ、大丈夫。私もアレンさんの分まで頑張るから」

「面目ないっす。ところで僕が言うのもなんだけど……後衛が居た方が良い、よね」

「む……」


 正座を解いて立ち上がる。

 前衛、万能、雑用……この面子だと、物理が効かない上に硬い敵なんかを前に火力不足になる恐れがある。

 壁にぶつかってから考えるってのも一つの手だけど、その頃にはもうPTも大体固定されてきてる可能性が高い。

 ただ……PTメンバーを募っても、命が懸かった状況で足手纏い抱えてるようなPTじゃあな……上限六人集めるとして、あと三人か……厳しい。

 潔く僕が身を退くなんて自己犠牲は出来ないけど。


 とりあえず酒場に寄ってPT勧誘だけ出した後、僕らは始まりの町の外に踏み出した。

 それと同時、僕ら三人の恰好が切り替わった。

 ルッツは全身鎧と兜、盾に剣まで揃ったフル装備。

 クリスは軽鎧を着て背中には弓矢を背負い、腰にはナイフを下げた軽装。

 僕は動作を邪魔しない簡素な鎧。だけ。


「アレン……武器はどうした」

「槍術とか取ってないからねー」

「あ、弓かナイフ使いますか――じゃない、使う? ……すいません、どうにも慣れないのでやっぱり敬語で話させてください」

「分かった。それではお言葉に甘えてナイフを貸してもらえると」

「どうぞ」


 借りたナイフを装備して更に進む。

 ……ん? なんかボールみたいなのが転がってきた。

 エネミーなのを示す黄色い枠に、タマジロという名前が書かれている。


「じゃあ、最初は貰う」

「ギュッ!?」


 そう言ってルッツが剣を一閃。

 ダメージが入ったエフェクトと共にタマジロはひっくり返り消滅する。

 何もしてない僕にも普通に経験値が入った。

 やっぱり最序盤だけあって、敵もかなり弱く設定されているらしい。

 他にもビッグマウスとか言う鼠が出てきたけど、これもルッツの剣で一撃だった。


「クリスもやってみるか? 弓の練習がてら」

「は、はい」


 ルッツが手で示した、少し遠くに転がるタマジロに弓を構えるクリス。

 真っ直ぐ飛んだ矢は見事一撃でタマジロを仕留めた。遠距離だけどドロップしたアイテムがアイテムボックスに入る。

 クリス曰く、弓矢はある程度システム補正が掛かるから当てやすいそうだ。ただし矢は消耗品らしい。


 さて、次は僕の番って事でタマジロに挑んだけど……。


「せい! ――とっ?」

「ギュィイ……」


 刺そうとしたナイフは表面をガリッと削って火花を散らすに留まった。

 小さくノックバックしたタマジロはボール状態を解くと、短い四肢を踏ん張って威嚇する。


「ギャオッ」

「うおっ!」

「アレンさん!」

「いや、まだ最初の敵だから」


 ジャンプして引っかこうとしてきたタマジロを、身を逸らして躱す。

 クリスがちょっと本気で心配してるっぽいのが恥ずかしいな。

 ルッツの言う通り、最初の敵相手に苦戦してるようじゃ格好悪いにも程がある。


「【起動(スタートアップ)竜頭(ヘッド)】【起動:竜腕(アーム)】【起動:竜脚(レッグ)】」


 こんな所でだけど、とっておきのネタを披露する。

 気分はまるで……着ぐるみを着たような感じだ。視界は狭まり、腕や脚も若干動かしにくい。


 ――特殊スキル・竜化(アセンション)の発動を確認しました!


 へっ?

 予期せぬシステムメッセージが走った直後、急に視野が開けた。

 いや、これは開け過ぎだろう。仕組みは分からないが斜め後ろまで見えてるし、違和感が尋常じゃない。

 視点も明らかに高いし、何よりさっきから文字通り地に足がついた感覚がしない。というか浮いてる!

 飛んでるよ僕!? フライハイ!


「え、どういう事!? どうなってんの!?」

「こっちの台詞だ! 大丈夫なのか!?」

「何が大丈夫なのか分からない!」


 あ、声だけは普通に出た。いや、普通って言ってもエフェクト掛かってるけど。

 えっと……確認できる限りじゃ外見は青い東洋竜で、体長は三メートル半くらい。腕と脚もそれなりに長くて、何より空を飛べる。

 個々のスキルをもう少し成長させて発現させるようなブレスとかも多少解放されてる。

 視界の端に表示されてるのは……残り時間? 気付いた段階じゃ4:35だった。

 五分もこのまま!? と思ってたら、どうやら任意で解除できるらしい。迷わず着地して能力解除。

 普段通りに戻った感覚に思わず溜息が漏れる。

 SP切れから来る倦怠感に、僕はたまらず大の字に倒れ込んだ。

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