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27.新緑の町――4

 ダンジョンクリアの条件は地味に悪意がある、と思う。

 あるパーティがメインボスを撃破、次のエリアに進めるようになったとして……仮に、そのメンバーを殿堂入りしたと表現するとしよう。

 殿堂入りしたプレイヤーがまだそのボスを撃破していない別のPTに入った状態で再びボスを倒しても、新たにプレイヤーが殿堂入り認定されることはない。

 スタッフ側からしたら前線のプレイヤーが後続のプレイヤーを引っ張り上げる作業なんてつまらない程度の考えかもしれない。

 でもデスゲームでそんな事をするのは正気の沙汰とは言えないんじゃないだろうか。

 まあ、一介のプレイヤーに過ぎない僕にどうこう出来る話でもないし。スタッフに苦情を送って改善してもらえるような状況でもないんだけれど。


 ……それにしても、ギルドみたいなシステムが無いのも珍しい気がするな。

 集団の正式名称みたいなのがはっきり決まらないから、なんだか収まり悪い感じだ。


 で、ケルピーを突破した三つのPTがまたどれも個性的というか……割とバランス重視ではあるけど、その中でうまく分かれたみたいな印象がある。


 一つ目が通称「長夜」こと「ロングナイツ」。特徴はメンバー全員が長髪ってことで、名前の元々の由来はロン毛騎士団だって話だ。

 構成は六人フルメンバー。

 ルッツと同じナイトが二人、遠距離から砲撃を叩き込むシューターが一人、エイミとは違って魔法攻撃重視のソーサラーが一人、それぞれ回復重視と攻撃重視のスキル構成をしてるビショップが一人ずつ。

 前衛と後衛、物理と魔法、攻撃と回復のバランスが取れている王道のチームだ。


 二つ目が「円卓」。僕らの「ハンターズ」と同じで、本人たちは特に何も名乗ってないけど呼び名がいつの間にか定着していたタイプだ。

 ここも構成は六人フルメンバー。一番の特徴はリーダーがロイヤルという支援に特化した珍しいジョブを取っていることだろうか。

 他のメンバーはナイトが三人、ビショップが一人、忍者が一人。その様子が王族と専属の部隊みたいなものを連想させたのが円卓の呼び名に繋がっている。

 余談になるが、リーダーであるロイヤルの名前はリューヴィ……劉備をモチーフにしていることが度々ネタにされる。


 三つ目は「裏組織(ギルド)」、通称「裏切(ウラギル)」。

 一番の特徴を挙げるなら全員が……多感というか、自分の世界を持っているというか……端的に言うと中二病の気があることか。

 構成はやはり六人フルメンバーで、その全員が忍者。今は生産職の進歩もあってアレンジされているけれど、最初の頃は全員黒ずくめという強烈な集団だった。

 色々とんでもなく見えるけれど、実際は普通に良識ある少年少女ということでプレイヤーたちには生暖かく見守られている。

 忍者っていうジョブ自体がスキル構成にもよるけれど物魔攻守そろった万能タイプということもあって、第一印象からは想像できないほどの安定感を誇る……らしい。


 これで進行状況は僕らを含めて四つのPTが並んだことになる。

 まあ、横道も含めれば僕らが一歩リードしてる形になるけど。

 戦死者が出たことで停滞した状況の打破を目指していたとはいえ、自分が最前線にいるってのはプレッシャーが半端じゃなく重い。それでもこうして目的に達成の見込みが出てきて、ようやく少し安心できた。


 他のPTの状況も掲示板に上がっている範囲で見ると、悪くはないように見える。

 どのプレイヤーもレベリングは欠かしていないため、ボスを突破するだけの実力は備えているように見える。

 多かったのはケルピーの行動パターンが変わってからの、泡を用いた大規模攻撃に怖気づいて撤退したって話だ。


 泡攻撃……つまり水属性。

 そして僕が僅かなりとも傭兵業で供給した、もしくは「ハンターズ」として市場に回したケルピー(水耐性)素材は着実に流通している。

 属性耐性でぐっと有利に立てるスピードタイプのメインボス……そんな展開が続くと思うほど楽観的にはなれないけど、少なくとも今の停滞が崩れるのにそう時間はかからないだろう。


「それより気になったのは……」


 掲示板を移り、次に挑む予定のサブ(脇道)ダンジョンの情報を表示する。

 そこ……地底ステージに関する情報はそこまで多くない。

 ダンジョンは廃坑をモデルにしていて、ボスはモグラみたいな相手らしい。

 もちろんというべきか、人が暴れるだけのスペースは十分にあるけど……情報を見る限り、竜には対応していないように思える。

 というかボスマップがβ時代と変わらないなら、竜化したらぎゅうぎゅう詰め。

 本人は碌に動けないし、敵からは格好の的だし、味方からすれば凄く邪魔。なんとも僕に優しくないステージだ。

 吸血鬼(ヴラディ)の時に披露した竜化エスケープも厳しいだろう。

 となると……今から覚悟を決めておく必要があるかもしれない。


「――怖っ」


 竜化無しでのボス戦を想像して思わず震えた。

 連携なら今までずっと見てきたから、そこに混ざることに不安はない。

 問題は僕自身のスペックだ。


 全身が頑丈な竜鱗に守られる【竜化(アセンション)】と違い、単体で発動する三つのスキルで変化するのは対応する部位だけ。

 試したことはないけれど、攻撃はなんとしてでもガードして生身の部分へのダメージは避けないと致命傷になるだろう。

 ブレスや感覚強化のある【竜頭(ヘッド)】はまだ良いとして、【竜腕(アーム)】【竜脚(レッグ)】は攻撃だけじゃなくて防御も考えながら接近戦をしないといけない。

 今までひたすら逃げ回るか、竜スペックに任せての力押ししかしてこなかった僕にそんな技術があるのか?

 どう立ち回るのが一番役に立てる?

 自室のベッドに転がったまま、僕はひたすら考え続けた。


 投稿ミスすいませんorz

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