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15.反省会

 バブル・エリミネータを撃破した後、町に戻った僕たちはセナさんの店で夕飯を頂きつつ反省会をしていた。

 ちなみにセナさんはもちろん、タイラーさんやニコルさんといった生産職プレイヤーに素材は預けてある。

 エイミはゲーム内で新聞を発行しているプレイヤーに、フレンドコールでボス戦の様子を伝えてたみたいだ。


「――悪いな、アレン。毎度損な役回りで」

「気にするなって。出番が無いのは良い事だし、こんな状況(デスゲーム)じゃ尚更さ」

「それは正しいんだが……」

「そもそも元を正せば、こんなネタ構成にした僕の自業自得だし」

「そうだったな。気遣って損した」

「少しくらいオブラートに包もうか」


 堅物(ルッツ)が何か負い目を感じてたみたいだが、それは間違いだ。

 こう言うのもなんだけど、僕の【竜化(アセンション)】はPT四人の中でも特に強力で、ボスとの相性も良いスペックを誇っていると思う。

 ……エイミの【破壊魔法】のインパクトで少し霞んでるというか、抜きんでてる感は薄いけど。

 ともかく。その優位は一つの誤算で崩されかねない、そして崩れれば取り返しようのない酷く脆いものだ。


 屈強な身体を得て生きるか死ぬかの大博打ってのは嫌いじゃない。寧ろ大好きだ。

 が、流石に本当の生命が掛かってる状態で無闇に博打るほどバカじゃない。

 特にボスとの初戦なんて状況じゃ、逃走手段として【竜化】を温存できる事には安心こそすれ不満なんて無い。


 不満があるとすれば、それはむしろ僕自身だ。

 ボス戦ともなるとスキル無しでは攻撃に参加するのも儘ならない低スペックな本体は、竜化のスペックの代償にしても厳しすぎる気がする。

 防御面だって並の魔法職に匹敵する足手纏いギリギリライン。

 だから、暴れられる時は全力で竜化のメリットを引き出さないと……。


「――それで、さっきのボス戦の反省だが」


 っと。

 移った話題に置いて行かれないように思考を切り替える。

 真っ先に手を上げたのはエイミだった。

 普段βテスターとして先人的な雰囲気のエイミだけど、こうしているのを見ると年相応の幼女っぽいな。


「一つ言いたい事があるんだ」

「何だ?」

「クリスって天才なの?」

「ふえっ!?」


 突然水を向けられたクリスが奇声を上げる。

 確かに話すことは色々あるけど、筆頭かもしれない。

 ドレッドヴァイパーの隠密を見切ってた頃から片鱗を見せていた素質が、今回明るみに出た形になるだろうか。

 勿論ボスにしては防御の低めなケルピーとの相性もあったのだろう。

 それでも、機敏な魚馬を相手に確実に初動を潰すなんて誰にでも出来る業じゃない。


「現実でスナイパーでもやってたとか?」

「し、してませんよ!?」

「じゃあそういうスキルでも取ったの?」

「いえ、特には。限られた状況に特化したようなスキルは後回しにしてます」

「……つまり、クリスはその実力だけでボスを封殺したと」

「言い過ぎですって!」


 まあ、MVPにこれ以上追及するのも無粋か。

 ここは仲間の優秀さを単純に喜んでおこう。


「そんな事を言うなら、最後のエイミさんの判断も良かったと思いますよ?」

「確かに、良いトドメだった。ただ分かってても急に自分の生命を生贄にって言われたら驚くけどね」

「正直、唱えてちょっと楽しかった」

「逆の立場なら僕もそう思ったんだろうなー」


 エイミが最後に唱えた【雷神の魔槌】は破壊魔法の一つで、メリットはほぼ一瞬で発動できること。消費SPも多くない。

 ただしコストはもう一つある。

 それが指定したPTメンバーの残りHPの半分。

 これは威力に直結する。生贄になった身としては「こんな僕の命でも……役に、立てて……良かった……」みたいな? 凄く死亡セリフ臭いな。

 まあ、無駄遣いかもと心を痛めながらも回復薬を呷ってた甲斐があった。

 攻撃対象に術者が接触してないと発動できないって制限もあるけど、これは武闘派のエイミには好相性だから問題ない。


「――さて、これからはどう動く?」

「一つ考えがあるんだけど」

「なんとなく予想はつくな」

「だろうね。……あのケルピーはスピードタイプだけどついていけない程じゃなかったしさ。【竜化】的には割とカモなんじゃないかなって」

「油断は禁物ですけどね」

「分かってる。それで皆はどう思う?」


 そう聞くと、三人は特に迷うこともなく頷いた。

 同じ属性の装備は反発し合うから、ボスの素材で作られた防具はそのボスに対して効果的な安全対策になる。

 流通させて損は無いだろう。

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