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10.湿林

 最初のボスである亜種(バリアント)ゴブリンを無事撃破した僕らは平原エリアを突破。

 現れたゲートをくぐって第二の拠点である新緑の町に辿り着いた。

 セナさん達もすぐ引っ越すわけにはいかないだろうから、とりあえず僕らもこの町はサブ拠点として登録。

 ついでに彼女ら生産職プレイヤーにもフレンドコールでボス討伐の報告をして、と……。

 一応拠点は最初のまま変わらないけど、もし始まりの町が消滅してもひとまずは大丈夫。

 時間も遅くなってきた事だし、一度始まりの町まで引き返した。


「ただいま!」

「おかえり。無事で良かったわ」

「これが今回のボスからのドロップになります。装備の強化をお願いできますか?」

「あとサブ装備はもう出来てるの?」

「ええ、任せておいて。装備の予備も容易してあるわ」

「分かってるって」


 エイミ、いつの間にそんな話を。

 序盤だし予備装備もボス戦の時とほとんど変わらない。

 明日も普通に狩りに出かけられそうだ。

 その後はタイラーさん(細工師)ニコルさん(調合師)にも顔を見せた後、それぞれのプライベートエリアに戻った。


「さて、これからどうする?」

「動くなら大体三つだよね。新しいエリアの探索か、脇道のボスにも挑むか、|亜種ゴブリンやグレートフィン《もう倒したボス》で経験値稼ぎか」

「うーん……特に飛び抜けて対価が美味しいわけでもないけど……」

「どうした、エイミ?」

「折角ボス部屋まで行ったんだし、浅瀬はクリアしておきたいなって」

「そうだな。気持ちは分かる」

「浅瀬のボス……アイアンハーミット、でしたっけ? エイミさんはβテストの時に戦った事が?」

「うん。その時の情報は――」


 部屋に備え付けのベッドに寝転び、僕らはフレンドコールで今後の方針を相談していた。

 エイミが語った情報によれば、アイアンハーミットは防御タイプ。

 機動力は低い反面、殻から露出した部分の防御力も高い。

 それに伴って攻撃力も侮れないが、少し距離を取れば回避は容易なのが救いらしい。

 万が一の場合の撤退も簡単だと予想される。

 もっとも、β時代と大きな違いが無いことが前提だが。

 うーん……。

 そういうボスなら、折角だし少し試したいことがあるんだけど――。


「一つ確認したいんだが、エイミは最初に浅瀬のボスを倒すことに拘っているか?」

「うん? いや、そんな事は無いよ」

「そうか。それなら先に、今挑める小ボスの素材を一通り得ておきたい。今の情報が分からない状態で亜種ゴブリンと同等の敵に挑むなら、万全の備えが欲しいからな」

「それなら、明日はどちらのダンジョンに行きますか?」

「もう一つの脇道――湿林は少し難易度が高めらしいからな。平原にしよう」


 そんな方向で話はまとまり、翌日は平原の小ボス部屋へ。

 ゴブリンやタマジロを倒していると現れた小ボスの名ははぐれコボルト。

 能力や動きはゴブリンより明らかに上で、耐久力はグレートフィンにも少し勝るほどだ。

 まあ一体でしか登場しないため、そう手強い相手でも無かったけど。


 その次に向かったのは湿林。

 巨大な羽虫のビッグバグ、蛭をモチーフにしたイヴィルリーチなんかが現れる。

 そういうのが苦手なプレイヤーには辛いダンジョンだろう。

 僕もこの手の敵は好きじゃない。


「うわ、また出た……【起動(スタートアップ)竜頭(ヘッド)】」

「いけ、アレン! 噛み砕く!」

「アレンは命令を無視した!」


 アホ騎士の無茶振りに付き合うはずもなく。

 誰があんなの齧るか! 無理!

 【ファイアブレス】を意識すると口から放たれた火炎弾がビッグバグを焼き尽くした。効果は抜群だ!

 ブレス系は口が塞がるから発声発動じゃないけど、特に不便は感じないな。


 そんな風に進んだ先の小ボス部屋。

 ここに現れるドレッドヴァイパーは、最初の三エリアの中で一番厄介な小ボスと言われている。

 その高い隠密性に、今の所先手を取れたプレイヤーはいないそうだ。

 幸い攻撃力に優れるわけではないので誰が狙われても致命傷には至らないが、心臓に悪過ぎると掲示板では不評。

 ダンジョンや他の敵の要素も合わさり、湿林エリアは他二つより一段と不人気だった。


 ルッツがイヴィルリーチを斬り捨てた少し後。

 山勘でそろそろボスかと思った僕は【竜頭】を起動して辺りに注意を配る。

 ――!


「来たっ」

「何処だ!?」

「分かんない」

「ダメじゃん!」


 前方から何かが近づいてくる。

 けれど目を凝らしても蛇が何処を動いているのかまでは分からない。

 ……一歩及ばなかったか、と思った時。

 後ろから飛び出した人影があった。


「【グレイブエッジ】!」

「ギャッ――」

「「「!?」」」


 地面から尾が跳ね上がる。

 ナイフを蛇の頭へ正確に突き立てていたのはクリス。

 ドレッドヴァイパーはそれきり動かなくなった。

 ……凄ぇ。


「見えてたの?」

「僅かに。実は、半分くらい勘です」

「それでも掲示板に上げて自慢できるんじゃないかい?」

「や、それは勘弁してください!」

「分かってるって」


 その後もクリスは悉く蛇の出現を見切ってみせた。

 二、三回ほど一撃で仕留められない事こそあったけど、十分凄いと思う。

 一応クリスのPSはずば抜けて高い感じです

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