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稽古

 伯爵宅を辞した後、ジークは宿へと向かった。まもなく昼になる。食事を取って惰眠を貪ろうと宿に入った瞬間それが不可能になったと悟った。何故か苦笑いするヴィッシュと目が合ったのだ。その彼女の周りには蒼薔薇の面々がいる。ただ、いつもの快活さはなく暗く沈んでいる。

 何事かとヴィッシュに視線で問いかけてもただ苦笑いするだけ。

 意を決し声をかけることにする。

「なぁ、何かあったのか?」

この問いに全員が声をそろえた。

「「「「あなたが原因です。」」」」

これには流石のジークもうろたえた。心当たりがないのだ。

「どんだけ修行すりゃあそこまでの手練になれるんだよ・・・。」

とは戦士のサンドラの弁。

「戦士で魔術師で斥候職で野外活動も出来るってあたしの立場が・・・。」

とは斥候職のリンの言い分。

「系統が違えども戦士職の方にあそこまで高位の魔術を使用されると・・・。」

と嘆くのが魔術師のミーナ。

「今までの私たちっていったい・・・。」

と戸惑うのが神官のジュリシス。

「まぁ、皆自信をなくしてしまったんだ。」

と締めくくる精霊魔法を使う剣士ヴィッシュ。

(めんどくせぇ事に巻き込まれた!!)

と呻くジークの姿があった。



「この間も言ったが俺だって最初っから何でも出来たわけじゃねえよ。」

結局、蒼薔薇の面々と昼食会を開くことになった。専ら語っているのはジークとヴィッシュだが。

「何べんも何べんも失敗して身に着けてきた技術だ。これでございと教わったこともあったが、失敗から学び取ったことの方が多い。そして、創意工夫しながら鍛錬をしてきたんだ。お前らだってこれからだろ? そんなお前らと俺を比較対象にすることが間違っているんだよ。」

「だからと言って今の調子での鍛錬はいけないと思うのです。私たちは強くなることに貪欲なのです。」

 この言葉にピンと来るものがあった。先ほども似たようなことをいわれたばからだ。関わったら泥沼になる事は必至だ。

「アンナに聞きました。店の裏で朝、鍛錬をしていると。」

「・・・・・・・・・あぁ。」

「ぜ・・・!」

「却下」

「まだ全部言ってない!」

「言われずとも話の流れで分からいでか! 要するにお前らも稽古をつけて欲しいってクチだろ!」

「も?」

「騎士の連中が俺のことを先生と呼び始めやがったんだよ! そして稽古をつけて欲しいとよ。仕事優先って言い訳でお暇してきたがここでお前らの稽古を承諾すると騎士の連中だけでなくスィーリアやエドワードまで押しかけてくるのが目に見えるだろ!」

「あの、仕事って何?」

少し気分が持ち直したのかリンが問いかける。

「調査だよ。調査。お前らだって未開拓地の調査依頼を伯爵から受けてるだろ?」

「あぁ、調査ね・・・。」

「手つけてねえのか?」

「正直村の警護で手一杯だった。未開拓地ってちょっと気を緩めるとゴブリン共が巣をすぐ作るから・・・。」

「・・・こりゃ本気で稽古を考えなきゃならんかなあ・・・。」



「じゃあ、稽古をつける事になったの?」

「ああ、調査するにしても村が安全じゃねえと気が気じゃねえからな。しばらくの間は蒼薔薇と騎士隊の面々、あとは希望者に稽古をつけることにした。だから、当面の間未開拓地の調査はお預けだ。といっても完全に放置するわけじゃねえ。蒼薔薇の連中の鍛錬を兼ねて調査には入る。」

あの後、惰眠を貪ることも出来ずに伯爵宅に事情を報告するために参上したのだ。

「色々と仕事を増やしてすまないね。」

「これも必要なことさ。」

「・・・計画はどうやって組むの?」

「早朝は騎士隊の詰め所で剣の稽古、日中は調査の鍛錬、夕刻は魔術の講義、この予定だ。」

「騎士隊は調査の鍛錬に加えるの?」

「蒼薔薇の連中が単独で調査できるように成ったら入れ違いの要領で騎士隊に山狩りの練習をしてもらうさ。それまでは村の警護をしてもらう。当分は蒼薔薇だけさ。」

「・・・スィーリアが怒り狂うかもしれないな・・・。」

「ん? 何かあるのか?」

「いや、別になんでもないよ。」 

こうしてジークは騎士隊と領民に先生と呼ばれるようになったのだ。

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