慧眼の士
お読みいただきありがとうございます。
本日二話目の更新です。
(フブカの奴が目と鼻の先にいる・・・か。)
真冬の寒空の下、ジークは白い吐息を吐きながら遠方を見ていた。
ジークの元にフブカ自らが普請の為に最前線に基地を作ると知らされ自身もまた乗り込んで来たのだ。
(何故フブカと三バカを頭に据えた? 失敗が目に見えてる・・・。! あぁ! それが狙いか? 失敗させたいんだな! でも何故だ?)
名目上はフブカの子だが実際はメルキアの胤を仕込まれた女性たちの事をまだ知らされていなかった。
「さぁ、見事な基地を作りワシを馬鹿にした者達を見返してやる!」
「・・・。」
「フブカ様・・・。」
「何を仰るのです!?」
三人の腹心が乗り気でないことが腹立たしく当り散らす。
「なんだ!? そのやる気のなさは!? 我らの力を見せつける絶好の好機ではないか!」
「フブカ様、普請は春以降しかできません。」
アモンデスの言葉に絶句する。
「何故じゃ!」
「冬だからでございます! 材料はどうするのですか!? 人足の手配はどうなさるのです!? また、それらの資金はどこから調達なさるのですか!?」
「そ、そのような事お主らがやればよいではないか!?」
「この度の普請役はフブカ様です。我らに丸投げなど出来ません。必ずご指示を出さねばならないのです。」
ベリガンが説明をしてもただ、駄々をこねる様に喚き散らす。
「うるさい! うるさい! お前らがやればよいのだ! ワシのいう事を聞け!」
「フブカ様そう言う訳にもいかないのです! 我らは崖の淵に居るのですぞ!」
ガンドの一喝にフブカは黙り込む。
「良いですか!? フブカ様!? 我らはここジルベルク帝国に来てから何一つしておりませぬ。その為帝国は我らの存在を懐疑ておるのです! スイストリアを取り戻す大義名分としての存在価値が失われつつあるのです! ここで失敗をしようものなら放り出されますぞ! その後どこに行くと言うのですか! ジルベルク包囲同盟なる物が我らジルベルクの禄を食んだものを受け入れてくれると本気で思っておいでですか! 知恵は我らが貸します! フブカ様の手で普請役をこなさねば役に立たないとして国外放逐されますぞ! それで生きてゆけるのですか!」
「・・・ワシはとんでもない案件を取り扱っているのか?」
やっとそのことに気づいたが安請け合いした以上もう手遅れだった。
「はぁ!? 胤無しに子が出来ただとぉ!?」
カティアがもたらした情報にジークは驚きを隠せなかった。
「落ち着いてください、ジーク様。報告にはまだ続きがございます。」
隠し持って来た情報をジークに伝える。
「フブカの子を宿したと言われるものは三人。この三人は出自がはっきりとしておりません。にもかかわらず最近になって帝国の大物貴族の血筋という事で表舞台に出てきたのです。何より怪しいのが頻繁にメルキアの私室や寝室に出入りしてるという事です。おそらく胤はメルキア=ジルベルクかと思われます。」
「・・・お前、結構危ないトコまで潜ったろ・・・。ご苦労だったな。」
「! 有りがたきお言葉!」
ジークの労いに感激するカティアに重要な情報を持ってきてくれた事を感謝しながらジークは長考に入る。
(メルキア。お前はスイストリアで御落胤騒ぎを起こしたいのだろうがそうはいかんぞ。他国が干渉できるように劇場を整えてやろう! まずは同盟国であるファーナリスからだ!)
策動を逆手に取ろうとジークの暗躍が始まった。
メルキア=ジルベルクの元に大きな知らせが入って来た。
「・・・何だこれは・・・。」
一枚の羊皮紙に書かれた報告に愕然とした。
『フブカ=スイストリアが子供の頃の熱病が原因で無精子症と言う病気にかかっている事が分かりました。この病は胤無しにするとの事です。フブカが胤無しの話は大陸中の噂話になっております。』
密偵からの報告に足元が崩れる思いがした。
(スイストリアの恥になりかねない事をこうも公にするか!?)
ジークにとって今の新生されたスイストリアと悪徳の象徴である旧体制のスイストリアのフブカは全くの別物である。
痛くも痒くも無い。
ファザード王にも説明してフブカの御落胤騒動が起きない様にするための処置だと伝えるとあっさり承諾された。
今のスイストリアは旧体制と決別した最早別の国なのだ。
旧体制と言う他国の恥がどれほど広がろうがどうでもいいのだ。
ましてや義父を拷問した張本人の恥である。
ジークは広まれば広まるだけ良いとさえ思っている。
これが広まればフブカの言う「下賤な民」からも嘲笑の対象になろう。
こうして御落胤騒動を起こす前に事を防がれたのだ。
密偵の実力の差が如実に表れた。
ファーナリス法王国でもこの噂は広がっている。
ただしそれにさらに追加の情報が入っている。
『フブカ=スイストリアが子供の頃の熱病が原因で無精子症と言う病気にかかっている事が分かりました。この病は胤無しにするとの事です。フブカが胤無しの話は大陸中の噂話になっております。更にジルベルク帝国は実験として魔道を用いて非道な行いによりフブカの子を三人の女性に身籠らせたとの事。その子らは産まれても人の形はしていないでしょう。悪行の意果てに生み出された実験で孕まされたのですから。』
と、追加されている。
法と正義を尊ぶファーナリス法王国はこの所業に激怒。
人の成す事では無いとしてスイストリアに協力を申し出て来た。
悪徳を共に滅ぼそうというのだ。
(それを言ったら姦淫の力を持ち何人もの女を囲う俺はどうなんだ?)
自分で仕掛けておきながら自己嫌悪するジークであった。
メルキア=ジルベルクの仕掛けた御落胤騒動とそれに付随する他国の干渉不可能はこうしてあっけなくジークの密偵のもたらした情報で崩壊した。
それらの情報を制したジークの勝利と言えよう。
何度も推敲を重ねておりますがやはり誤字脱字が多いです。
作者が気づいていない物も有りますので誤字脱字、設定の矛盾がありましたらご報告ください。
修正します。




