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快進撃

読んでいただいてありがとうございます。

本日二度目の更新です。


「がばばばばばばばばぁぁぁ!」

ファーナリス法王国で猛将と言われるヒョードル将軍はマテリア平原から南下。

ジルベルク帝国の北東の軍事要塞を攻めていた。

騎兵三百での進撃に「籠城する必要などない」とジルベルク側は判断し野戦に持ち込んだ。

要塞から出撃してきた帝国兵約一千、ヒョードルはあっさりと引き上げる。

これを帝国兵は「猛将ヒョードルを討ち取る絶好の機会」とし追撃を掛けた。

要塞から兵を引っ張るだけ引っ張った。

結果は予備隊百を残し、全軍追撃と言う形。

ヒョードル将軍が最も得意とする事こそ野戦だ。

それに気づかずに追撃である。

気付いた時には要塞から離れ過ぎていた。

そこをヒョードル将軍が転進、迎え撃つ形を取る。

正面からぶつかるかと思いきや帝国の追撃隊の両脇から矢の雨が降る。

この矢の雨が終わった時、猛将ヒョードルが牙を剥く。

「がばばばばばばばばぁぁぁ!」

生き残った歩兵に殲滅の為の騎馬隊が襲い掛かる。

突撃をして追撃隊を後方まで抜く。

両脇の塹壕に潜んでいた歩兵が挟撃しにくる。

こうして挟まれて動けなくなったところをヒョードル将軍率いる騎馬隊がもう一度突撃を掛けて殲滅する。

(これが釣り野伏の陣かぁぁぁ! 童<わっぱ>ぁぁぁ! 凄いぞぉぉぉ!)

ファーナリス、アーメリアスにとって目の上の瘤と言われたジルベルク帝国の北東の軍事要塞はこうしてあっさり陥落した。

ヒョードル将軍はそのまま指示通りスイストリアと合流するために西へと向かう。



グレステレンは度々激突する戦域であるグレステレン・アーメリアス・妖精族領これらが隣接する領地から帝国兵を引き付けるためジルベルク帝国の南部最大級の砦の傍に陣をしいた。

小細工無用の正面切っての激突をするためだ。

引き付けて空になった隣接地域はアーメリアスが打って出てもぎ取る事になっている。これで妖精族領はジルベルク帝国と隣接しなくなる。さらに言うならここはアーメリアスに深く食い込むようにせり出した領土でもある。アーメリアスがジルベルクの侵略で失った領土だ。長年奪還を夢見てきた領地である。

そしてガリムスはジルベルクの南西部を欲していた。

なぜなら未だ奴隷として強制労働させられている者達がいるからだ。

(多くの同胞よ! 今、助けるぞ!)

スイストリア海軍がグレステレンに到着し、傭兵部隊が合流する。

グレステレンの兵数は二千五百まで上がった。

この戦場は死闘となった。

互いに兵の命が大勢失われた。

だが、そのおかげでジルベルク帝国から南西部のみならず南域のほとんどをもぎ取った。

ジルベルク帝国は南部の労働力を一気に失う事となった。



アーメリアスの王子プリス=アーメリアスはジークの読みの凄さに感服していた。

だが、まだ「読み」の段階である。

実践は違う。

(英雄の眼力を試させてもらおう・・・。)

プリスは自ら一千の兵を率いてジルベルク・アーメリアス・グレステレン・妖精族領、この四つが隣接する地域に向かう。ジークの読みが確かであればここには予備兵としてわずかな兵しかいないはずだ。

そしてそこには寡兵と呼ぶのもはばかるほどの少人数しかいなかった。

ジルベルクにとって南部の労働力として奴隷は財産なのだ。失うわけにはいかなかった。結果それが領土を失う事となるとは夢にも思っていない。

あっという間に平らげる。

(・・・長年奪還に苦労してきたというこの領土をこうも簡単に取り戻せるなんて! 彼の英雄は千里眼でも持っているのか!?)

アーメリアス軍はこのまま一度北へ移動し南西へと進路を取る。

グレステレンと戦うジルベルク帝国の背を突く為に。



(地図一枚を見ただけでこれほど戦を運べるものなの!?)

エルミナは恐怖を覚えた。

アーメリアスは奪われた領地をあっさりと奪還できたという。

そしてジークの指示の元、南西部で戦っているグレステレンを援護するためジルベルク南方軍の背を突く大役を任せている。

おそらくこれが止めとなりジルベルクの南部は勢力図が大きく変わる。

それだけではない。この領地奪還で妖精族領はジルベルク帝国と隣接しなくなる。

戦う事自体は可能だが、組織的な戦となると対応しきれない。

その軍事力が低い妖精族領としてはありがたいことだ。

なにせ数が少ないのだ。

(絶対に敵に回せない! こんな軍略の化け物と事を構えること自体が馬鹿げてる! 金声玉振の大人と言われてるけど必要なら私が愛妾の一人となってでもいいからスイストリアと好を結ばないと!)

この時密かに人質となる覚悟を決めた。



(流石は我が君! 同盟を謳いジルベルクの脅威を取り除きながら他国の力を計り、それぞれを削る。駆虎呑狼の計と二虎競食の計を併せて行うとは! このクローゼ、感服しました! 仰せの務め果たしてご覧にいれます!)

闇の軍刀<ダークセイバー>と言われるジークの懐刀、クローゼがクローディアを伴ないジルベルク帝国の北西部を攻め取るために進軍を開始した。

北西部は西に進軍してきたヒョードル将軍を総力で迎え撃つ為次々と砦を空にしているのだ。

クローゼはこの空にした砦を落とし続ける。

砦に翻るはスイストリア王国の旗と赤地の布に黒い狼が標されたペンドラゴン侯爵の旗、同じく赤地の布に黒い妖精を標したクローゼの旗が翻る。

その後クローゼは東に奔る。

ヒョードル将軍を援護するためにジルベルク帝国の北西軍の背後を突くのが目的だ。



クアートではジークを前にして評議会代表のラギールがうなだれていた。

二枚舌を使いジルベルク帝国にも同盟にも良い顔をしていたのがばれていたのだ。

「申し開きはあるまい。」

このジークの一言で心が折れた。

(利に聡い私たちよりはるか上にいるじゃないか!)

ラギールは心の中で同盟一本に絞らなかった過去の己を呪った。

こうしてクアートはジルベルク帝国の影響から逃れるために自治権を放棄してスイストリアの保護下に入った。



(ジークよ! お前はどこまで策を巡らせている!)

ジルベルク帝国皇帝メルキア=ジルベルクは狂気の笑みを浮かべる。

次々と知らせが入ってくる。

北東部はファーナリスのヒョードルが要の軍事要塞を落とした事。

そのヒョードルは西に移動している事。

北西部は西に移動し始めたヒョードルを迎え撃つために総力を挙げて迎え撃とうとしている事。

その隙を突かれて対スイストリアの為に設けた砦が次々と陥落。今ではジルベルク帝国に睨みを効かせる様になった事。

スイストリア軍はその後東へ移動し、ヒョードル率いるファーナリスと挟撃。

これでジルベルク帝国の北は両国に取られた。

南部は南部で大変な事態になった。

アーメリアスから奪い取った領土が取り返されたのだ。

それだけではない。これによって妖精族領への侵攻の足がかりが無くなったのだ。

加えてグレステレンの侵攻も激しい。

南部最大級の砦が落され南部の勢力図が一気に変わった。

本来であればグレステレン一国では落ちはしない。そこにアーメリアスが援護として現れ背後を突かれた。

これが止めになった。

奴隷を囲っていた南西部を失ったのは痛すぎる。

最早南への征伐は諦めねばならないだろう。

帝国中央部に残された兵力で東に位置するアーメリアスを攻める事もできるがそれをやれば中央が空になる。

北と南から挟撃されて帝国の歴史が終わる。

本当に手詰まりになった。

だがそれでもメルキア=ジルベルクは笑みを浮かべる。

(ジークよ! この帝都にも英雄と呼べる「神格位」の勇者がいるぞ! 冬が来る前に決着を付けれるか? 邪神討伐の英雄と神の祝福を得た勇者。果たしてどちらが強いか勝負だ!! ジークよ! 見事打ち勝ち俺の物になれ!)

ジルベルク帝国皇帝メルキア=ジルベルクの欲が形となって歪みはじめる。

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