同盟
(やっとここまで来れたかよ・・・。)
ロッツフォードの産業がやっと軌道に乗り金を稼げるようになったのだ。
農業の自給率に至ってははほぼ九割である。驚異的な数字である。
(後はアノ遺跡を使い城塞都市化すれば・・・!)
こうしてジークはロッツフォード独立の画策を進めていくのであった。
マテリア平原の敗戦から一年、スイストリア王国とファーナリス法王国で軍事同盟が再度結ばれた。ジルベルク帝国はマテリア平原の一部を占拠後、その占領地を徐々に広げているのだ。これを黙って見過ごすわけにはいかないということで同盟が成された。同盟を破棄した側、同盟を破棄された側であるが背に腹は変えられぬ。互いに思うところはあるだろうが大人の対応で結ばれたのだ。だが実際の構造はファーナリス対ジルベルクだ。スイストリアは敗戦の傷がまだ癒えていない。それでもできる限りの協力をするということになった。
(どうも嘘くせぇな・・・。)
今回の軍事同盟をジークは怪しんでいた。
独立派が成りをひそめて法王国派主軸ですんなり同盟がなされたのだ。
最悪の場合を想定してどのようにすればロッツフォードが生き残れるかを考えていると情報収集・情報操作を任せているファニスとカティアからの報告があった。
「ヒョードルのおっさんが?」
「はい、今はファーナリス法王国で将軍の一人となっているそうです。」
「中央大陸<こっち>に居るのは知っていたがまさか聖騎士になって居るとは・・・。どっちかって言うと蛮族の酋長って雰囲気があるのに。」
この言葉に二人ともクスリと笑みを浮かべる。
「我々としても知らぬ仲ではありません。共に肩を並べて戦った仲。接触を試みますか?」
「あぁ、そうしてくれ。ファーナリスにツテがあるのは心強ぇからな。後、独立派の動向も探ってくれ。どうも、きな臭い」
「分かりました。では、私が行って参ります。」
カティアがそう言って出て行こうとすると来客の知らせが来た。
「がばばばばばばばばぁぁぁ!! 元気かぁぁぁ!! 童<わっぱ>ぁぁぁ!!」
「・・・相も変わらず豪放磊落なご性格で・・・。」
ロッツフォード領に唐突に現れたのは当のヒョードル将軍だった。
「よく俺がここに居るって分かったな・・・。」
「ジークという名前で邪神を殺せるのはお主しか居らんわぁぁぁ!」
このヒョードル、声がやたらでかいのだ。おかげで何処にいるかすぐに分かる。
「ワシが今日ここへ寄ったのはついでじゃあぁぁぁ!」
「ヘイヘイ、どのようなご用件で?」
「・・・お主ぃ、変わったかぁ?」
「・・・実は結婚した。」
「!! お主ぃ、ついに銀の乙女を手にしたかぁぁぁ! めでたい! 酒宴じゃぁぁぁ!!」
「まず、先に用件を言えよ!」
この言葉遣いにとうとう周りの騎士達が声を荒げる。
「貴様! 先ほどから我らの殿に向かいその言葉遣いと態度はなんだ!」
これを制するのはヒョードル将軍。
「構わん! 童は特別じゃぁぁぁ! 本来なら一国の王でもおかしくない大人じゃぞぉぉぉ!」
「・・・殿がそうおっしゃるのなら。」
そう言って引き下がる。
「慕われてんなぁ。とりあえず場所移そうぜ? お供と一緒に俺の自宅に来てくれ。」
「ここで構わん! 話などさっさと終わらせて、酒を飲もうぞぉぉぉ!」
「・・・そうだった、そうだった。こういう人だったよ・・・。」
こうして町の入り口近くの外で会談をすることになった。
いくら晴天とは言えどもこのまま会談させるわけにもいかないため天幕を張った。
さらに領主であるソルバテス=ロッツフォード伯爵を外すわけにもいかず、主だった面子を集め会談場所に向かった。そこに集まったのは伯爵、嫡子エドワード、騎士隊所属の次男エヴァン、ジーク、そしてスィーリアを始めとする銀の乙女達、眷属達の筆頭を務めるアクアーリィ、ヒョードル将軍、将軍の共で来ている騎士、それらのおもてなしの準備をするロッツフォードの町人の面々、等々総勢百名を超える人数が集まっていた。
「客将?」
ヒョードル将軍の話の内容を要約するとこうだ。
スイストリアとファーナリスで結ばれた同盟。その使者としてスイストリアにヒョードル将軍は親書を届けに来たのだ。その帰り道にここへ寄ったとの事。戦の内容は主軸はやはりファーナリスの聖騎士団だ。だが今回も数でどうしても劣る。そこで義勇兵に冒険者や傭兵を雇うことになった。その指揮をヒョードル将軍が任されたのだが、毛色の違う軍を二つも三つも指揮を執るのは骨が折れる。ファーナリスにも指揮官は居るが傭兵など毛色の違う軍の指揮は無理だと判断された。自分の配下の騎士達に傭兵団を加えると指揮系統に混乱をきたす恐れがある。そこでヒョードル将軍推薦のもと傭兵団の指揮をジークに執って貰おうと訪れたのだ。
「・・・俺が客将になることをスイストリアは承諾したのか?」
邪神討伐という名声があっても今のスイストリアではロッツフォードに献身するジークの存在を煙たがっている。ましてここで手柄を立てられればスイストリアはおろか大陸中にその名声を響かせてしまう。面白くない事この上ないはずだ。
「そこはワシがごり押しした!」
えぇー! という声が周りから起こる。
「童<わっぱ>ぁぁぁ! お主はここで燻っていてはいけない存在じゃあぁぁぁ! 大陸中を巻き込む大炎と成るべき存在じゃあぁぁぁ! これを機に表舞台に出て来いぃぃぃ!」
この言葉にロッツフォードの面々は押し黙った。そうだと思ったからだ。
この言葉にファーナリスの騎士達も押し黙った。それほどの人物なのかと。
「・・・他ならぬヒョードル将軍の頼みだ。引き受けよう。」
こうしてジークはファーナリスへ赴くことになった。
「誰か共を連れて行くべきじゃない?」
「傾国」「スイストリアの黒い魔女」などといわれていたフェルアノは新たに銀の乙女としてジークに仕えている。
そのフェルアノが心配して助言しているのだ。
あの後、ヒョードル将軍の口上通りに酒宴と成ったのだ。
張らせた天幕にそのまま就寝させ今に至る。
「今回の同盟、どうも嘘くせぇ。なにより独立派が大人し過ぎる。」
「確かに怪しさ満点よね。」
同意するフェルアノにジークはさらに言う。
「どうせ碌でもねえ事考えて実行しようとしてるのは分かりきってるんだ。それらに対応できる人材をここの残しておきてえんだよ。全責任は俺が取るから各々で判断して行動してくれ。」
「信頼されてるのね。」
「あぁ、信頼している。」
そう言ってフェルアノを抱き寄せ自分の股間を体に押し当てる。
「ちょっと! 夕べ私たちとあれだけしたのにまだ足りないの!?」
「・・・嫌か?」
「・・・もう、ずるい! そんな顔されたら拒めないじゃない・・・。」
しばらく離れ離れになることからジークは自分付きの銀の乙女スィーリア達、アクアーリィを筆頭とする自らの眷属たち全員と翌日まで契り続けたのだ。
「童ぁぁぁ! 色男じゃのぉぉぉ! あれだけの女を堂々と囲っておるかぁぁぁ!」
出立の日にはヒョードル将軍にからかわれた。
お供の騎士達には白い目で見られた。
ロッツフォードの面々からは激励の言葉を貰った。
それらを無視してジークは己の思考に没頭した。
(今回の客将の件は渡りに船だ。ファーナリスと繋がりを作るにはこれ以上の手はねえ! 今回の同盟は俺にとってはロッツフォード領とファーナリスとの同盟構築だ。絶対にしくじれねえ! さらに未開拓地の地図という手土産があれば独立時に援助を取り付けることが出来るかも知れねえ!)
こうしてジークはスイストリアとファーナリスとの同盟を上手く利用しようと考えをめぐらせた。




