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結婚

ジークとスイーリアは遺跡で二日過ごすことになった。

体に施した化粧の後遺症でジークが倒れたのだ。

それでも三日後には起き上がって魔法の行使が出来たのだからたいしたものである。なお、ジークは装備を同じ黒でも魔法の収納袋を使い軽装なものに変更していた。



瞬間移動<テレポート>の魔法でスィーリアが気に入っている丘にやってきた。

(自宅よりこっちの方がしっかりと覚えている俺って末期だよなあ。)

苦笑いを浮かべるジークが気になりスィーリアが問いただすが誤魔化した。

そうしてオルトロスとタイユウが来るのを待って運んでもらった。



二人の帰還に村は湧いた。わずかな希望をジークが掴み取ったこと、そのおかげでスィーリアが無事帰って来れたこと。今回の襲撃でも死者が出なかったことなど、祝うべきことがたくさんあるのだ。

それでもジークの衰弱が激しい為、休養を要した。お祭りはジークが回復してからということになった。もう、すっかり村の一員なのだ。



「で、何で俺が寝込んでいる間に報告が行われていねえんだよ・・・。」

ジークがスィーリア、エリーゼ、クローゼの三人からかいがいしく看護を受けている間、伯爵への報告をスィーリアが「自分にも分からないことが多々ある」と言って放りっぱなしにしたのだ。

復調そうそう頭痛に襲われるジークであった。



ジークは事の顛末の報告の為に伯爵を筆頭にスィーリア、エリーゼ、クローゼ、クローディア、蒼薔薇の面々、エドワード、エヴァンまでも説明に呼んだ。

「報告だけなら僕だけでいいはずなのに、この面子を呼ぶって事は何かあるのかな?」

伯爵の問いにジークはただ、黙ってうなずく。

「邪神討伐の件だけじゃねえ。俺自身にかかわることだ。」



「・・・それがジーク君達、金色の民の成り立ちなんだね・・・。」

「これで分かったろ、俺が異常だということが。特に簒奪した姦淫の力の為に複数の女性と関係を持ち続けなければいけない事。俺と男女の関係を持つと銀の乙女か神格位の眷属となり人間をやめなければならないという事。他にも色々あるぜ。本が一冊できるぐらいにな。」

誰も口を開かない。

今、目の前にいる人物が古代魔法王国時代以前から生き続けているという事。

あまりにも途方も無い話についていけてないのだ。

常に複数の女性と関係を持ち続けねばならないなど女性からみて我慢できないことだろう。スィーリアだってそうだろう。チラリと見てみた。

すると毅然とした態度でこっちをジッと見ているのだ。ジークは自分から目を逸らしてしまった。まるで自分が穢れているように感じてしまったのだ。

「質問は受け付けねえ。そう言うもんだと思っていてくれ。」

こうしてジークは伯爵宅を後にした。



「久しぶりに飲んじゃみたがこんなに不味かったか?」

伯爵宅を辞したその日の夜、久しぶり、少なくとも二年以上ぶりになる、酒を飲んでみた。だが、二口ほど口に運んでみたがちっとも陽気な気分になれない。まるで酢でも飲んでるような気分になった。

(俺自身はスィーリアと結ばれたいと思っている。だがそれが意味するのは抑えている姦淫の力に歯止めが効かなくなるということだ。そうなれば複数の女性を閨<ねや>に呼ぶことになる。スィーリアにそれを理解しろと言う方が無理だ。なによりスィーリアの霊格の高さなら間違いなく銀の乙女になる。俺と同様に長い年月を生き続ける化け物になる。あ、化け物のところなんぞに嫁には来ないか・・・。)

・・・陰湿なことを考えてるからちっとも陽気になれないことに気づかないぐらいジークは本格的に落ち込んでいた。

そんな夜分にジークの館に来客があった。



「ジークがお酒を飲んでるところ、はじめて見た。」

「・・・・・・。」

来客はスィーリアである。ジークは眉間によった皺を指で揉みほぐそうとしている。

「・・・以前も言った気がするが年頃の女性が独り身の男の所に入り浸るなよ!

ましてやこんな夜分に来るなんぞ正気を疑われるぞ!?」

怒鳴るジークをよそにスィーリアは傍に寄ってきた。

今度は何だと思いジッとしていると手を首にまわされ口で口をふさがれたのだ。

ジークは混乱の極致に追いやられた。何で? どうして? 疑問しかわかない。

だが引き離すことも出来ない。それを承諾の意志と取ったスィーリアは舌まで絡ませる。

「!!!!!」

しばらくジークの口を味わった後、ゆっくりと離れた。

「ふぅ、初めての口付けがお酒の味と言うのも大人っぽくていいものだな。」

パニックになったのはジークの方である。

「な、な、な、な、何で・・・?」

「父上にジークの妻になりたいと言ってきた。」

「!」

「邪神に体を乗っ取られようとした時、ジークのことを考えた。邪心に渡せないと思った。この心も体も髪の毛一本に至るまでジークのモノなんだと強く思って抗うことが出来た。これが私の気持ちなんだとはっきり分かった。だからもう、私は自分を偽らない。貴方の事を愛しています。妻として迎え入れてください。」

「・・・昼間の話を聞いてなかったのか!? 俺と結婚すると言うことは俺の獣欲を受けると言うことだぞ! 俺だって男だ! 我慢なんぞせん! 欲望の限りを尽くすぞ! そうなれば姦淫の力に歯止めが効かなくなる。結果何人もの女性を毒牙にかける最低な男の妻と後ろ指をさされるんだぞ! それだけじゃない! まぐわった女がどういうわけか年を取らないとなりゃ気味が悪いと言われるぞ! ましてや、同じ世代の人がドンドン死んでいく中、自分だけが若さを保ったまま生き続ける事に耐えられるのかよ!」

興奮状態になり肩で息をするジーク。そんなジークに優しい声でスィーリアは語りかける。

「ジーク、自分が今泣きそうな子供みたいな顔をしているって気づいてる?」

「!」

「それだけのものをジークは今まで一人で背負ってきたんでしょ? 今日からは私も一緒に背負うわ。」

「分かって無い! 分かって無いよ! それがドンだけ苛酷なことか全然分かって無いよ!」

「うん。確かにまだ分かって無いんだと思う。でもね、このままジーク以外の誰かと結ばれても不幸にならないだけであって、幸福ではないんだよ?」

「・・・・・・。」

「・・・ジーク。もう一度言うわ。貴方を愛してます。誰よりもずっと貴方のことが好きです。私を妻に貰ってください。」

「・・・側室やら愛妾が山のように出来るかも知れないんだぞ。」

「奥のことを取り仕切るのも妻の務めと心得ているわ。」

「・・・化け物と罵られるんだぞ。」

「貴方と結ばれない方が辛いわ。」

「・・・周りがドンドン死んでいく中で自分だけが取り残されるんだぞ。」

「貴方がいるわ。」

「・・・スィーリア!!!」

今度はジークの方から口を塞ぐ。舌を絡ませ口腔を蹂躙する。

スイーリアの豊な胸を揉む。引き締まった尻を撫でる。

もう止まらなかった。

「やめてって言ってもやめないからな。」

「ジーク、その口で、舌で、指で私の全てを愛してください。」

ジークは陵辱の限りを尽くそうとした。

スィーリアはそれを喜んで受け入れた。



「じゃあ、これで本当にお義父さんになれたんだね。」

感慨深げに言う伯爵に対してジークは非常にバツが悪かった。少なくとも結婚してから行為をすべきだったと大いに反省した。だからと言って後悔があるわけではない。

とにかく義父になる人物に報告しないわけには行かない。

ということで行為の三日後に挨拶に来たのだ。

隣にいるスィーリアと共に歩んでいくと決めたのだから。

「これで村祭りの催し物が一つ増えるね。というよりこっちが主題だね。」

「挨拶してからお付き合いじゃなく、お付き合いしてから挨拶に来るっていう順番が逆になってることは無視かよ。伯爵。」

「他人行儀だな、お義父さんと呼んでくれないの? それに順番が逆になったて結果は同じでしょ? ジーク君とスィーリアが結婚するって。」

「いや、そうじゃなくて・・・。」

お宅のお嬢さんは俺の手で男を知りました。傷物にしました。などなど色々とあるのだがあえて言わないと言う選択肢を取った。

「父上、我侭を言って申し訳ございません。ですが・・・。」

「あぁ、いいよ、いいよ。結果よければ全てよし。スィーリアが幸せになれればそれでいいんだよ。」

「ありがとうございます、父上。・・・ほら、ジークも。」

「ありがとうございます、お義父さん。」

これに、伯爵がウンウンとうなずく。



ロッツフォードの村は賑わっていた。ご息女であるスィーリア様と村の英雄ジークが結婚するのだから。



村の教会で式は執り成された。

「では、誓いの言葉を」

「スィーリア、俺はこんなだ。迷惑ばかりをかけるかも知れない。それでもお前を愛している。共に乗り越えていこう。」

「ジーク、私はまだ貴方の背負っているもの全てを知っているわけではありません。ですがそれを支えるだけの女になってみせます。愛する貴方との苦楽を共にすることをここに誓います。」

二人は村中の人々から祝福を受けた。


ロッツフォードの村は今日も平和だ。

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