ほしがり妹とよくなし姉
……なんでこんな童話しかかけないんだろう…。
…まあ、グリム童話だって本当のお話は残酷だって聞くし…いいかな。
シンデレラのお姉さんがつま先切って目玉くりぬかれるよりは残酷じゃないと思うし。
それでわ↓
ある所に、仲良しな双子の姉妹がいた。
……いや、仲良しではなく、双子の姉は純情に妹が好きで、双子の妹は純情に姉が嫌いという、片一方だけが仲良しだと思っている双子の姉妹だった。
容姿端麗、頭脳明晰、さらには欲が無い少女が、双子の姉妹の姉の方。
平々凡々、怠け者、さらには欲しがりな少女が、双子の姉妹の妹の方。
そんなある日、姉に結婚話が舞い込んできた。
姉は嫌だった。結婚してしまえば、勉強することも、働くことも出来なくなってしまう。
そこで、欲しがりの妹は、姉に話を持ちかけた。
「入れ替わらない?」と……
妹は姉に何か1つでも勝りたいと同時に、結婚というものが欲しかった。
姉は、そんな妹の提案を妹の好意だと思い、その提案に乗ったのだった。
数日後、提案どおり、結婚式場への馬車に乗ったのは、姉ではなく妹の方だった。
しかし、誰も気が付かない。知っているのは、当人である双子の姉妹だけ。
一方姉の方は…妹が行くはずだった定食屋に、下働きとして奉公にだされていた。
元々働き者で勉強家の姉は、その定食屋で人気者になり、いつしか、その店の看板娘となっていた。
沢山の人が看板娘である姉を見にやってくる。そのおかげで、定食屋は大もうけ。
そんな時、一人の青年がやってきた。
その青年はとても捻くれており、素直にお礼の一言も言えなかった。
相手を上から目線で言うその言葉に、売り言葉に買い言葉で姉は言い返してしまった。
それを気に入られ、青年に付きまとわれる姉。
ついには、なんだか成り行きで結婚することにまでなってしまった。
こうして、結局結婚することになってしまった姉。
しかし、一つだけ最初の結婚と違うところがあった。
青年は、この国の王子だったのだ。
最初は、この城も妃という地位も、王子という地位を持つ青年そのものも…すべて嫌いだった。
だが、しだいに捻くれもので皮肉屋で上から目線で…でも、不器用で優しい天邪鬼な青年に、姉自身も知らぬうちに惹かれていった。
姉が密かな恋心の芽を咲かせようとしている頃、妹から初めて手紙が届いた。
その内容は「会って相談したい」とのことだった。
姉は、迂闊に城から出られないことを手紙に書き、城の秘密の通路で待ち合わせることにした。
ここなら城から出たことにはならないだろうと思ったからだった。
約束の夜…姉が待っていると、妹がやってきた。
再開を喜ぶ姉を冷たい目で見ながら、妹は言った。
「入れ替わらない?」と…。
それは、あの時とまったく同じだった。
ただ一つ違うのが、姉が入れ替わるのを拒んだ。という点だけ。
王子である青年を好きになりかけていた姉は、妹の相談を拒んだ。
それを憎々しげに見ながら、それでも、妹の相談…いや、企みは止まらなかった。
あなたは、王子の役に立っていないでしょう?ただのお飾り。
きっと、城の人々もあなたの事を邪魔だと思っているわ。政治にも関わらない。
人々のことにも何も口出ししない。そもそも、顔を出さない妃は、本当にいるのかもわからない。
皆、そう思っている。その点、私だったら政治の事は知っているし、今でも人々に寄付金をしているわ。
あなたよりもよっぽど私の方がお似合いなの。
だから………入れ替わって。
そういわれれば、反論の余地などなかった。全て、本当のことなのだから。
政治には関われず、厨房にもいれてもらえず、人々のことも、私には口を出す余裕なんかない…。
悲しさに打ちひしがれながら…姉は、妹と入れ替わったのだった。
***
入れ替わった妹は、姉の部屋で探し物をしていた。
姉がいつも所持しているはずの結婚指輪を探しているのだった。
あれがなければ、姉じゃないとバレてしまう。
まあ、気長に探そう。妹がそう思ったとき、
紙を見つけた。
それは、姉が王子にあてた手紙だった。
その内容は、「私は双子の妹と入れ替わることにした」というものだった。
その中には、妹から入れ替わろうと言われたことと、自分は役立たずということ、そして…愛しているということ。
妹はそれをゴミ箱に捨て、こんなことをした姉を制裁することにした。
そうすれば、姉の分も私のものになる。妹はそう考えたのだった。
妹は王子にこういった。
「妹が、あなたは役立たずだから、入れ替わろうと。けれど、私はあなたを愛している。そういって断ったら、あなたから貰った指輪を取られたの」
そういって、泣きまねをする妹。
王子はその泣きまねに気が付かず、王子は妹のふりをしている自分の妻に怒った。
姉のふりをしている、妹に気が付かず…。
翌日、王子は妹のふりをしている姉を捕え、首を刎ねた。
執務をしていた王子は、死刑執行人が、手に何かを握っているのに気が付いた。
死刑執行人がそれを王子に見せる。それは、王子が妻に挙げた指輪だった。
王子は、これを妻のふりをしている妹に届けようと指輪を取ろうとした時だった。
死刑執行人が、何の真似か王子の手を避け、指輪を自らの懐に入れたのだった。
王子が怒鳴ろうとしたとき
部屋の扉が開き、城のメイドや兵士などがゾロゾロと部屋に入ってきた。
何事かと聞こうとしたとき、一人のメイドが前へ進み出て、一つの紙を王子に見せた。
その紙は、姉が王子にあて、妹にゴミ箱へと捨てられたあの紙だった。
王子はそれを読んで驚愕した。この手紙の通りだと…自分は、妻を殺したことになる。
信じたくなかった王子は、部屋を飛び出し、妻の元へとかけた。
妻の部屋を王子が開くと、そこには散らかったドレス…そして、妻のふりをしているらしい妹の姿があった。
その部屋を見ただけで、王子はこの人物が自分の妻でないことを知った。
妻は、何も欲しがらなかった。それゆえに、妻の部屋はとても質素で…きれいだった。
人は、そんな急に変われるものではない。そのため、妻でないとわかったのだった。
王子は、怒りにまかせて剣を抜き、妹を殺そうとした。
…しかし、その剣は振り下ろされることはなかった。
妹が大好きだと語っていた妻が、妹を殺されるのを願うはずがないと思ったからだ。
王子は兵士を呼び、妻のふりをした妹を捕えるように命じた。
そして、一人咽び泣いた。
***
王子は、継承権を弟に譲り、自分は遠い森ですむことにした。
以来、王子を見る者はいなかった。
ただ、後になって城に、こんな噂が流れた。
”王子の妻は生きており、王子と子供と三人で暮らしている“
それは、あの死刑執行人が実際に語ったものだった。
その噂も、死刑執行人が退職したとともに消えていったが…。
今日も、王子が暮らす森では、男性と女性と…幼い子供の声が響き渡る。
冬の童話祭と聞いて、急いで書きました。
…もうちょっといいやつを書きたかったな…。
まあ、がんばったからいいや。
次はもっといいのを書けるようにがんばります。
ちなみに、姉が生きていたのは死刑執行人が逃がしたからです。
あと、メイドが紙を見つけられたのは、掃除した時に見つけました。
それでわ。