無気力系クズ
俺の名は生瀬泰三。23歳フリーター、風呂なしトイレ共同の
激安アパートに住んでいる。
とにかくだらしがなく、向上心がなく、覇気がない。いつもやるきがない。
楽なバイトでぎりぎり生きていける程度の収入を得て、日々なんの目的もなく、ただ生きている。
はっきりいって生きているのがめんどうくさい。楽に死ねるのなら別に死んだってかまわないのだ。
とくにやりたいこともないし、彼女もいなけりゃ友人もいない。親兄弟とも疎遠でろくに連絡もとっていない。
一番楽に死ねる方法をネットで検索したり、ビルの屋上から下をながめてみたり、首吊り用のロープに軽く首をかけてみたりしてみたが、やはり死ぬ決意はつかないらしい。やはり死ぬのは怖い、ただそれだけの理由で生きている。
高校を卒業後、正社員の仕事も何度か体験したが長くは続かなかった。「おい、生瀬、お前やる気あるのか?!」「やる気出せよ、生瀬!!」「どうしてそう毎回遅刻する?」「また忘れたのか、覚える気あるのか!?」
だいたいいつもこんな感じで上司や同僚から怒鳴られ、結果、くび、くび、くびの連続。まあそれは仕方が無い、本当に俺にはやる気が全く無かったのだから・・・。
そもそも俺の生きている理由が、死ぬのが嫌だからという、全く能動的ではない理由なんだから、やる気などでるはずがない。
しかし現代は競争社会。万人に努力を強いられ、努力できない、一生懸命できない者にはクズのレッテルが貼られてしまう。
欲しいものや、やりたいこと、夢、希望、そういったものがある連中はいいさ、そのために頑張れる。
だが俺はどうだ?なぜ頑張れる?生きている理由など何も無い、ただ俺の生命を存続させるためだけにどれほどの情熱を傾けられるというのだ。周りに迷惑がかかる?育ててくれた両親に申し訳ない?知ったことか。
人間になんか生まれてこなければよかったんだ、植物かなんかに生まれてくればよかった、そうすればこんなわずらわしいことから解放されて楽に生きれたというのに・・・。
そういえばこの前、職場の上司から「どんなクズでもいいところの一つや二つあるものだが
お前はいいところなんか一つもありゃしないな」と言われた。確かにそのとおりだ、俺には
いいところが一つもない。自分でもクズであることは自覚しているが、はっきり言われると
いささか悲しいものがある。
「あー、早く地球爆発しねえかな・・」
このまえバイト先の同僚が、俺にこんなことを聞いてきた。
「なあ、生瀬って彼女いるの?」
「いや」
「好きな人は?」
「それもいない」
「綾瀬さんってどう思う?」
綾瀬とは、同じくバイト先の同僚の女の子だ
「別になにも」
「可愛いと思わない?」
「まあ、可愛いほうだとは思うよ」
「なあなあ、ここだけの話、綾瀬、お前のこと好きかもしれないってよ?どうよお前?」
「はあ・・・ぶっちゃけどうでもいいっす」
「え、なんて?」
「好きとか嫌いとか、他人から特別な感情を抱かれるのはめんどくさいから、、、できればなんとも思わないでほしいね。そっとしておいてほしいよ」
同僚はあきれた表情をしている。しかしこれは俺の本心なのだ。
とにかくめんどうくさいのは大嫌いだ。彼女なんてできたらどうせめんどうくさい。
俺には欲望が無い。やりたいことがない、行きたいところもなければ食べたいものも無い。
ありとあらゆる欲が無い。どうしてと言われてもわからない。ただそういう設定を与え
られたから、としか言いようが無い。
アニメでもドラマでも映画でも、それぞれのキャラクターに設定があるじゃないか。
だから俺も、そういう設定になっているというだけの話。
みんなは幸せになるために努力すればいいさ、俺は幸せがなんなのかもわからないし、
別に努力したくない。このまま何もなく人生を終えられればそれでいい・・。