約束(8)
「はぁはぁはぁ」
ミーナは息をきらせて長い廊下を走った、不安な表情で、城に入ってから初めてセイラ以外が見た無表情では無いミーナの表情だった。
数時間前。
ミーナは昨日から感じてる体の不調を隠す様に何も無い様にいつもと同じ時間から仕事を始めた。
「はぁ」
しかし、仕事のペースはいつもと違い体は思うように動かない、いつもより遅いペースで朝からの水汲みを終えると井戸の前に座り込んでしまった。
「・・・・大丈夫・・・・大丈夫」
自分に言い聞かせる様にミーナは繰り返すとゆっくり立ち上がろうとしようとすると、目眩がミーナを遅いまた座り込んでしまう。
「大丈夫か?」
ミーナに声をかけたの騎士団団長のジェイだった。
「大丈夫です」
ミーナはジェイを見ないまま答えてゆっくりと立ち上がる。
「顔色が悪い、少し休め」
ジェイはミーナの腕を掴みミーナを引き止めるとミーナはそのまま倒れる様に気を失った。
「おい!しっかりしろ!」
ジェイはミーナを受け止めると軽くミーナの頬を叩いたが反応は無い。
「凄い熱」
ミーナは高熱で倒れてしまったのだ。
「団長」
そこに来たのはジェイの部下で騎士団のファイだった。
「ケイト様に伝えろ、俺はこいつを医務室に運ぶ」
「はい」
ジェイはミーナを抱き上げると城内にある医務室に向かった。
「セイラさん次はあっちだよ」
「うん」
セイラの仕事は城内の清掃、クロエはセイラとペアーで仕事を進めた。
「きゃぁぁ、ジェイ様」
その声は少し離れた場所で掃除をしてた子の声だった。
「何、どうしたの?」
クロエとセイラもその声に慌てて行くとジェイに抱き上げられたミーナの姿が見えた。
「ミーナ!」
セイラは驚きジェイの元へと駆け寄った。
「お前、こいつの知り合いか」
「はい!ミーナどうしたんですか?」
「熱がある、一緒に来い」
セイラは小さく頷いてジェイについて一緒に医務室へと向かった。
「先生、急患だ」
「ジェイ、おまえさん毎回急患しか連れてこんな」
「文句ならあとで聞く」
王家専属医師でもある、コリンは呆れた様に迎え入れた。
「疲れだな、食事もまともに食べないで働いてたんだろ」
診察の間もミーナは目を覚ます事は無かった。
「人は多いだろうに、食事もしないで過労とはどんな仕事してたんだ」
コリンは眉間に皺を寄せて紙に診断結果を書き込んでいた。
「・・・・ミーナ」
セイラは涙を流してミーナの眠るベットの横に座った。
「失礼します」
医務室に入って来たのはユーアだった。
「ジェイ様、本日は大変ご迷惑をおかけしました、ケイト様に代わりお礼申し上げます」
ユーアはドアの近くに立って居たジェイに頭を下げた。
「先生、診察は終わりましたわよね」
「あぁ、疲労だ」
ユーアは診察結果を聞いて口元に笑みを浮かべてセイラを見た。
「セイラさん、仕事にお戻りなさい、彼女も起こして、まだ仕事終わって無いわよ」
セイラはユーアの言葉に耳を疑ったが直ぐにユーアを睨んだ。
「ユーア様、彼女は疲労で倒れたんだ、休ませてやっても良いだろう」
セイラが言う前にユーアに言ったのはジェイだった。
「そうだな、一日は安静にせんとな」
コリンもフォローするように言うとユーアはジェイとコリンを見た。
「管理にはお二人に権限はございません、それに彼女はもともと城入りの出来ない庶民、城に居る以上決められた仕事をしていただかないと」
セイラはユーアの前に立ち、平手でユーアの頬を叩いた。
「なっ!あなた、ご自分の立場わかって居るの!わ、私に」
「わかんない、でも、ミーナが倒れたのは馬鹿みたいな理由だって事はわかってる!これ以上ミーナをバカにしないで!ミーナは私の親友であんたたちより頭が良いんだから」
セイラの瞳には涙がたまり、今にも溢れてしまいそうだが、必死に我慢して居た。
「あっ、あなたたち二人、城から追い出してやる!私に逆らってただでは済ませないは」
ユーアはそう言って部屋から出て行った。
「私・・・・初めて人を叩いちゃった」
セイラは少し痛む手を見つめて呟いた。
「お嬢ちゃんなかなかやるな」
「まったくだ・・・・しかし、女は怖いな」
「なんじゃ、今頃気づいたか」
ジェイもコリンもセイラの勢いに何も言えなかった。
「私・・・・会って来ます・・・・これ以上、ミーナに辛い思いして欲しくない」
セイラはまだ眠るミーナを見て何かを心に決めた様に頷き部屋を出た。
それから数分後ミーナゆっくり目を覚ました。
「ここは」
「医務室だ」
「仕事が!」
ミーナは慌てて起き上がったせいかまた目眩を感じた。
「安心せい、あんたの友人がユーア様に逆らって今日は休みだ」
「セイラが・・・・セイラは?」
「誰かに会いに行ったが・・・・ユーア様じゃろうな」
ミーナのなかに一気に不安が広がった。
「違う・・・・セイラ」
ミーナはベットから出ると裸足のまま部屋を出た。
その表情は不安でセイラの事だけが心配だった。