約束(6)
謁見の間からミーナが出て来るのをセイラは不安な表情でケイトと待って居た。
「ミーナ」
「セイラ」
「さぁ、部屋に案内します」
城の本館から離れた場所に暮らす場所が用意されて居る。
「セイラさんはこちらの部屋を同室はクロエさんです」
部屋の前にはまだ幼さが残る可愛らしい女の子が立って居た。
「初めまして、クロエです」
「セイラです」
「クロエさん、セイラさんに仕事を教えてあげて」
「はい」
「ミーナさん、あなたはこちらへ」
ケイトはミーナを連れてまだ奥へと続く廊下を歩いた。
別館だが、廊下には美術品が並び、掃除も行き届いてる。
「あなたは特例として城入りをしたので部屋に余裕がありません、なのでこちらを使ってちょうだい」
ミーナが案内されたのは物置部屋、両端には荷物が積み上げられ、湿気の匂いが部屋の中に充満して、古いベットと机が置かれて居るだけ。
「仕事があります、着替えて直ぐに出て来て」
「はい」
しかし、ミーナは何も言わずに部屋に入ってドアを閉めた。
小さな窓から入る光は少なく、ドアを閉めると薄暗かった。
「セイラさん、どうかしたの?」
同室のクロエが心配そうな表情のセイラに声をかけた。
「うん・・・ミーナ大丈夫かな?」
「ミーナってさっきケイト様に連れて行かれた子?」
「うん、親友なんだ、でも、ケイト様はミーナの事嫌ってるみたいだから」
セイラはますます不安な気持ちになった。
「・・・・彼女が特例?」
「あ、うん、王子様を助けて気に入られたらしくて・・・・ミーナは城入り嫌がったんだけど」
「仕方ないわ、他の人は王子様目当てで城入り志願者が多いから気に入られて城入りした人を良くは思わないわね」
セイラは今度は悲しそうな表情をした。
「ミーナ」
「あなたの仕事よ」
ケイトはミーナにバケツを二つ渡した。
「井戸があるはそこからここまで水を運ぶ、樽は三つ、掃除用、調理用、飲食用全てが一杯になるまで井戸から水を運びなさい」
井戸から樽までの距離はけっこうあり、誰もが嫌がる仕事の一つだった。
「はい」
「あなたは陛下とお話しても、王子の特例だとしても、身分をわきまえなければならないのですよ、食事は他の者が終わった後、入浴は一番最後で、掃除をする事、別館の清掃もあなたの仕事です」
「はい」
次々に言われる仕事だが、ミーナはただ返事をするだけだった。
「始めて」
ケイトに言われ、ミーナはバケツを持ち井戸まで歩いた。
何度も往復し水を入れるが入れる度に使われ一杯になるにはほど遠かった。
「早くしてちょうだい、掃除が進まないは」
「こっちもよ、食事の用意がすすまない」
ミーナは一日中水を運び、夜を迎えた。
「はぁ」
最後の一杯、ミーナは運ぶとそのまま座り込んでしまった。
「ミーナ、大丈夫?」
「セイラ・・・・私は大丈夫、ほら戻って」
「でも」
「いいから、戻って」
微笑み真っ直ぐセイラを見てミーナが言うとセイラは心配そうにミーナを見ながら小さく頷いた。
「何も望まない・・・・望めば争いと悲しみがあるだけ・・・・大丈夫・・・・これくらい平気私は何も望まない」
ミーナは空に輝く星を見上げて自分に言い聞かせ何度も繰り返した。




