約束(2)
馬の走り去る音でミーナは目が覚めた。
「寝てしまったのか」
いつの間にか眠りベットに運ばれて居たミーナはまだ薄暗い外を見つめた。
『世話になった、礼はするロックス』
一枚の髪がテーブルの上に置かれて居るのを見つけるとミーナは口元に笑みを浮かべた。
変わらない日常、畑に出て野菜の世話をする、何も変わらない平和で穏やかな日々。
「ミーナ、休憩しない?」
「セイラ」
バスッケとを上に上げて畑仕事をしてるミーナに声をかけたのは、友人のセイラだった。
「はい」
「何?また村長と喧嘩でもしたの?」
セイラはミーナの言葉に小さく頷いた。
セイラは村長の一人娘で、喧嘩をすると毎回ミーナの所に来るのだ。
「今度の原因は?」
「お父様ってば酷いのよ、勝手に城入りの申請をしたの」
城入り、それは地主や村長の娘が城に仕えて、王や王妃、王子や姫の侍女になる、気に入れたら王子の花嫁になれる可能性があるからか、年頃になると親たちが城へ申請し、それが受け入れられたら晴れて城入りとなる。
「怒って出て来たのか」
「だって、私の意見も聞かずに勝手に決めるんだもん」
セイラはカップを両手に持って小さく溜め息を吐いた。
「話したの?」
「・・・・まだ・・・・でも、怖いの・・・・どうしたらいいのかなぁ」
ミーナはゆっくりと立ち上がってセイラを見た。
「行くよ」
「どこに?」
セイラは不思議そうにミーナを見た。
「レンの所」
「ま、待って心の準備が!」
歩き出したミーナの後ろをセイラは複雑な表情で歩いた。
レンはミーナの友人でセイラの恋人でもある。
「レン」
「セイラ、ミーナ」
レンは村で研究をしてる考古学者の助手をしてる。
「どうした、二人がそろって珍しいな」
「レン、セイラが話があるって」
真剣なミーナの表情にレンは何も言わずに小さく頷いた。
「セイラ、こっちに」
レンに声をかけられセイラは小さく頷いた。
二人の背中を見つめてミーナは小さく頷いた。
「どうした?何かあったのか?」
人が少ない教会の庭、レンは何も言わないセイラを見つめた。
「・・・・ごめんなさい」
セイラは下を向いてレンに謝った。
「どうした?話してくれないとわからないだろ」
「・・・・お父様が、城入りの申請をしたの」
セイラは涙を流した、レンはポケットからハンカチを取り出してそっとセイラの涙を拭き取った。
「待っててもいいか?」
レンの言葉にセイラは驚いてレンの顔を見るとレンは優しく微笑んで居た。
「でも!早くても三年は帰って来れないのに」
「待ってる、三年でも四年でも、セイラが帰って来るのを待ってる」
レンはセイラの頬に優しく触れて微笑んだ。
「レン」
「セイラ、俺はお前を待ってていいか?」
「うん、うん待ってて・・・・必ず帰って来るから・・・・私を待ってて」
レンは涙を流すセイラを抱きしめた。