46 交戦と復活
銀色の鎧を纏った騎士たちが前衛に立ち、黒ローブの魔術師たちが後方から支援する。
火球、氷槍、風の刃が同時に放たれ、保守派の盾の壁に次々と叩きつけられた。
「総員! 守りを崩さず前進せよ!」
バルムス・バルトーアの号令に、黄龍騎士団の白銀の甲冑が一斉に前進する。
盾を重ね、槍を構えた密集陣形で突き進む彼らを、革新派の長剣と魔法が迎え撃つ。
狭い地下の大部屋はたちまち修羅場と化した。
剣と剣が激しく火花を散らし、魔力が爆ぜる音が連続して鳴り響く。
保守派の前衛が一人倒れれば、すぐに次の騎士が埋め、革新派の魔術師が一人吹き飛ばされれば、別の魔術師が即座に補充する。
血が床の石を濡らし、悲鳴と怒号が混じり合って渦を巻いた。
デュオはラスタバンとバルムスに守られながら、必死に前へ進もうとしていた。
ラスタバンが古の杖を振り、防御結界を幾重にも張る。バルムスは大剣を振り回し、近づく革新派の騎士を次々と弾き飛ばす。
「邪魔をするな、バルムス!」
ライオネルが咆哮し、バルムスに切りかかる。
二人の大剣が激しく交錯し、火花が舞う。
ライオネルの剣には、かつての親友に対する痛みと、理想への執着が混じっていた。
「貴様の理想は、結局人を殺すだけだ!」
「ならば貴様の『正義』は、ただの惰性か!」
二人は互いの剣を激しく打ちつけ合いながら、なおも言葉を投げ合う。
その背後で、ダナン・オーウェンが冷たい笑みを浮かべていた。
「ラスタバン……お前のような頑固者に構っている暇はない」
ダナンが手を掲げると、黒い魔力が凝縮され、巨大な闇の槍が形成された。
それをラスタバン目掛けて放つ。
ラスタバンは咄嗟に結界を強化したが、衝撃で体が大きく後退した。
「っ……!」
その隙を突いて、革新派の魔術師数人がデュオ目掛けて魔法を放つ。
しかしバルムスが即座に回り込み、盾でそれらを弾いた。
「デュオに触れさせるものか!」
戦いは混沌を極めていた。
双方に多くの死傷者が出る。
黄龍騎士団の白銀の甲冑が血に染まり、革新派の黒ローブが焼け焦げる。
同じ国を守るはずの者同士が、互いの「正義」のために殺し合う。デュオはそんな光景を、涙を堪えながら見つめていた。
「こんな……こんなはずじゃ……」
そのときだった。
戦いの振動と、飛び交う魔力の奔流が、祭壇の最奥にある封印にまで届いたのか。
大きな扉が、ゆっくりと、しかし確実に軋み始めた。
地響きのような低いうなりが大部屋全体に響き渡る。
「な、何だ……?」
ある革新派の魔術師が、恐る恐る顔を上げた。
次の瞬間——ドゴォォォンッ!!
祭壇の巨大な扉が内側から激しく叩かれ、ひび割れが走った。
その隙間から、青白く輝く炎が勢いよく噴き出した。
闇のように濃い、赤と青が入り混じった高熱の炎が、部屋を焦がす。
「ファラ……!?」
誰かが絶叫した。
赤竜の咆哮が、祭壇の奥から響いてくる。
封印が完全に破られたわけではない。まだ不完全な覚醒だった。
しかし、その炎の熱と威圧感は、戦っていた者たち全員の動きを凍りつかせた。
「総員、後退! 一旦大部屋に戻れ!!」
ラスタバンが叫ぶ。
ダナンも、珍しく動揺した表情で手を挙げた。
「くそっ……今は戦闘どころではない! 一旦退け!」
両軍の兵士たちが、互いに剣を交えていた手を緩め、恐怖に駆られて後退し始める。
ファラの炎が容赦なく部屋を舐め回し、結界を張っていた魔術師たちに焦りが見え始める。
デュオはラスタバンとバルムスに守られながら、震える足で後ずさった。
その瞳には、戦いの惨状と、目覚めつつある邪神の影が焼きついていた。
戦いは、突如として「人間同士の争い」から、「人類 vs 邪神」という、より根源的な戦いへと姿を変えようとしていた。




