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三ツ星英雄譚 (十五年の歳月をかけて完成した作品、現在編集しながら投稿……)  作者: ノアキ光


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2 デュオ・ネーブルファイン登場

 今私達が住む世界は、今のところ三つの時代に分けて考えられます。


 「第一の時代」は、創造神と彼の息子である火の神ファラが、世界の覇権をめぐって争った時代でした。神を二分に分けての戦いは、世界の大半を荒廃させましたが、最後はファラが創造神の太刀を受け、創造神の勝利に終わりました。


 ところが、戦いに敗れたファラの、憎しみに溢れたその血涙は、何年も何年も流れ続けて、いつしか大きな海を創りました。これが「魔海」です。魔海からは、ありとあらゆる邪悪が生まれ、やがて地上に住む神をおびやかすようになりました。


 そこで神々は、土で膨大な数の人形を作り、それに命を与えて、邪悪と戦わせることにしました。ここに「人間」が誕生し、「第二の時代」が始まったのです。「第二の時代」は、神と人間が協力し合い、邪悪と戦った時代と呼ぶことができるでしょう。神々の予想以上に、人間は邪悪に対して勝利を収めました。かつてのように、神同士の強大な力がぶつかり合い、世界を破滅させるようなことは、もうありませんでした。


 しかし魔海の邪悪はいつまでたってもその姿を消しませんでした。なぜならば、魔海の底ではすでにファラが復活し、自らの力を解放していたからです。ここで創造神は、ファラを倒し、魔海を完全に封印するため、一人の人間に神と同等の力を与えました。ディースと呼ばれたその青年は、神の力をたずさえ、魔海の王ファラに見事打ち勝ち、魔海を封印することに成功しました。


 神の力があまりにも強大だったので、人間である彼も命を犠牲にしましたが、その功績を称えて、創造神は彼を戦神として祭りました。また、人間の長きにわたる苦労に応え、創造神はついに人間を神々の支配から解き放ちました。


 こうして神と人が分かれた「第三の時代」が始まっておよそ千年が経ち、私たちの歴史は今へと受け継がれています。




☆   ☆   ☆





「・・・聞いていますか?デュオ。…デュオ・ネーブルファインッ!!」


 そう怒鳴られて、一人の生徒が顔をガタッと前へ向けた。青色の髪を後ろでまとめており、眼鏡をかけていたが、そのあどけない顔つきを見るとおそらく十代前半といったところだろうか。教室中が密かな笑い声でざわついた。


 デュオと呼ばれた少年はあわてて、身にまとったローブでよだれを拭き、机を拭き、ずれた眼鏡を戻して言う。

 「・・・聞いてませんでした。ごめんなさい。クリストファー先生、もう一度お願いします」

 あの話を再び! 教室中を抗議の声が飛び交う。

 「はい静かに! ……デュオ、私の授業は役に立ちませんか?」

 そういってクリストファーと呼ばれた若い女教師は、悲しそうな顔をしてデュオの前に立った。

 「い、いえ! そんなことないです!」

 あわてつつも必死で応えているところを見ると、この少年、かなり素直で真面目な子である。


 女性教師は続けた。


「ここは魔法学校ですが、魔法以上に覚えねばならないことだってあります。私の古代史もそのうちの一つです。私は、魔法しかできないような人間を作りたくはありません。わかりますね?」

「・・・はい」デュオはうつむいた。先生の気持ちは痛いくらいにわかる。

「よろしい。頑張りなさい。」教師は生徒達に言った。「では授業を再開しましょう」

 生徒の失敗に対して、この教官はあまりくどくどと説教をしたことがない。そこがクリストファー先生のいいとこだよね、とデュオは思った。

 気を取り直してペンを握り、授業にとりかかった。





☆   ☆   ☆





 ローマリオ大陸中最大の国力を誇るディース王国。その王都ディースは世界でも有数の貿易都市である。世界中の文物が休むまもなくこの都市に集結しているおかげで、都市は非常に高度な発展をとげていた。都市の中央には巨大な神殿があり、ここには戦神ディースという太古の神が祭られている。この神の名にちなんで、ディースという名がこの街に付いたわけである。


 この神殿は、はるか昔から闘技場として栄えており、鍛錬に鍛錬を積んだ格闘家達があまたの伝説をつくってきた。現在でもその伝統は、三年に一度行われる武闘大会という形に姿を変えて、歴史の一頁に根強く残っている。


 そこから少し北西に歩いたところに、王立魔法学校「セイラムズ・ガーデン」がある。これがまた世界でも有名なトップクラスの頭脳が集まる魔法学校で、学生達は日夜となく学に励む。


 青髪の少年――デュオ・ネーブルファインもまた、ここの学生であった。


「はー」


 昼休みも終わりに差し掛かった頃、中庭にある一本の大樹の下で、あと少し残ったお弁当をスプーンでつつきながら、デュオはため息を漏らした。両手を照らす木漏れ日が微かに揺れている。


 すでに昼食を食べ終えていた男の子が話しかけた。

「お前らしくねえな。あんなのよくあることだって。気にすんなよ」

「・・・うん。ありがと、ファルス。」


 ファルス・ペンドレンは、デュオの親友である。短く切った金色の髪と、快活そうな目が特徴で、女子生徒からのウケもよい。その容貌のとおり、さっぱりした好青年であった。


「あ、わかった。実はあれだろ。うんうん。美人だもんなあ、クリストファー先生」

「そ、そんなんじゃないって!」

 半分図星を当てられて、デュオは顔を赤らめながらも必死で否定した。確かに、クリストファー先生を怒らせてしまった・・・このこともため息の原因のひとつであったのだが。

「冗談だよ。次の授業、お前の嫌いな実技だからだろ?」

 デュオの悩むことといったら、たいていはこのことだ。

「・・・うん。・・・今日も初級クラスで羽根飛ばしなんだろうなあ」


 デュオ・ネーブルファインは、極度の魔法音痴だった。


 セイラムズ・ガーデンは、魔法学校ではあるものの、その入学の段階ですでに魔法が使えるか否かということは、あまり問題にしない。過激なほど難しい筆記試験で好成績を収めれば、それで合格の二文字が手に入る。デュオもそうして入学した学生の一人であった。


 しかし、そういった学生でも、わりと早く魔法を見につけるようになる。なぜなら筆記試験それ自体が、すでに魔法の資質を問うようにして作られているからである。つまり、学校の役割は、入学者の素質を見抜き、「内に秘めたる力を、外の世界に干渉させるための技術」を身につけさせてやることだと言える。


 元々学ぶことが大好きだったデュオは、筆記試験でトップの成績を収めたという伝説をもつ。よって、入学から5年目、ホントにいいかげん魔法が使えるようになってもいいのだが、今や彼は、学園はじまって以来の大例外となってしまった。いつまでたっても、魔法の「ま」の字も予兆として現れることはなかった。万年初級クラス「羽根飛ばし」である。


「気にすんなよ……だいたい魔法使えるやつは世界中でも限られてんだから。でもお前ホント5年生になってから疲れた顔するようになったな。ちゃんと寝てんのか?」

 ファルスが心配そうに言った。


 実は、5年生になっても一向に魔法を使えるようにならない自分に、デュオは本当に危機感を覚えるようになった。そこでデュオは「毎日1時間は魔法の練習をしよう」、という健気なスローガンをたて、実行していたのである。


 大抵そのトレーニングは、学校が終わって、宿題をやって、課題図書をよんで……つまり深夜に行われたから、今日のように、授業中に居眠りして教師に叱られるようなことも頻繁に起こるようになってしまった。


「僕には才能がないのかなあ・・・」


 そんなデュオでも、このような愚痴をこぼすのは、珍しい。


「はは、でもさあ、お前にゃその優秀な頭脳があるじゃん。だったら、少しは魔法使えるやつにも舞台をゆずってやるべきだと思うけどな」

 随分と達観したセリフである。しかし、そういう考え方ができるところが、ファルスにの魅力の一つでもある。


 チャイムが鳴る。弁当はいつのまにか片付いていた。

「そだね。ま、気長に特訓してみるよ。人生は長いし」

「そうさ。苦労は買ってでもしろっていうだろ? 今は苦労すべき時だ。この時期をチャンスと思うんだ」

 そう言って、二人は、談笑しながら授業に戻っていった。


 どうでもいいことだが、老けた12歳だった。


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