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三ツ星英雄譚 (十五年の歳月をかけて完成した作品、現在編集しながら投稿……)  作者: ノアキ光


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16 腕試し

「おわ、あった!」


 デュオの嬉しそうな声が、洞窟の中で響いた。本日4個目の水晶キノコである。ちなみに、先ほどの運命の瞬間は、彼の頭の中では、すでになかったことになっていた。


 順調、順調、とマリーが言った。


 三人は先ほどの道を戻って、分岐点まで引き返し、まだ行っていないほうの道――右側の通路―――を現在歩いていた。気分はすっかりベテランである。


「これ売ったら、お金どうするんだ?」

 コートが言った。

「当然、皆で山分けよ。なにに使うかは個人に任せる」

「マリーは、何に使うの?」

「あたしは、そーねえ。剣でも一振り買おうかしら」

「アブねー女だな」


 うっさい、とマリーは声色を荒立てた。

「デュオはどうするよ」

「ん? 僕は……そうだなあ」

 と、デュオが考えを口に出そうとしたその時、


 洞窟全体を轟かす様な、大きな唸り声が聞こえた。


「何!?」


 狼の遠吠えにも似たその声に表情をこわばらせながらも、マリーは慣れた手つきで背中にしょっていた剣を抜いた。


「モンスターなわけないよな」


 コートが身構える。

 すでにその額からは、あぶら汗が滝のようにでている。


「この先からだよね」

 そう言ってデュオは、火炎瓶を取り出した。

 三人はじりじり後ずさった。モンスターなんかと戦っても、勝ち目はありえない。

 逃げるが吉だ。三人はコクリとうなずきあった。


 遠吠えが一段と近づいて聞こえる。徐々に三人の元へ近づいてきているではないか。


「どどどどど、どうしよう」


 デュオが最後尾から話しかける。腕は震えてて、松明が今にも落ちそうだ。

 もちろんマリーとコートが前列で、まだ見ぬ猛獣の方向を睨みながら少しずつ後退している。

「とりあえず、下手に刺激しないように。火炎瓶はまだ使わないで」

 三人は洞窟の曲がり角を曲がる。


 後退しながらマリーは、考えていた。


 洞窟の通路は、戦うには少々狭い。剣を無闇に振れば、二人が巻き添えを食う危険性も十分ある。だとすると、戦うとしたら、さきほどの二手に分かれたところの分岐点だろう。あそこもさして広いとはいえないが、この通路よりは幾分ましだ。


 勝てる自信はなかったが、後ろを向いて逃げるほうがよっぽど怖かった。


 コートも同様のことを考えていた。足では追いつかれはしないだろうが、自分だけ生き延びたところで、それはそれで寝覚めが悪すぎる。マリーの得物はかなり魅力的だが、こんなところで振り回せそうな代物ではない。とすると、分岐点まで後退して、そこで戦うのがベストだ。


 マリーと目が合う。どうやら、マリーも同じ魂胆の様だった。


 ……やるしかないな。

 いい腕試しだ。

 火炎瓶もある。

 大丈夫。勝てる。



 勝てる!



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