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追放された無能、実は“無限魔力吸収”の化け物でした 使い切るほど強くなる俺、気づけば弟子が全員最強美形軍団に  作者: 慈架太子


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第2章:無限成長、止まらない進化

「静寂の森」のさらに上空、切り立った断崖が連なる山脈の入り口。そこは、地上の魔物たちが決して立ち入ることのない、天空の捕食者の領域だった。


ヴァルティスは岩場に立ち、上空を旋回する巨大な影を見上げていた。

翼開長は十メートルを超えるだろうか。エメラルドグリーンの鱗が陽光を弾き、鋭い咆哮が鼓膜を震わせる。「森の王」とも称される飛竜、ワイバーンだ。


「……来たか。お前の『風』、俺の糧にさせてもらうぞ」


ヴァルティスが右手を掲げると同時に、ワイバーンが急降下を開始した。猛烈な風圧と共に、鋭い爪が岩を削り取る。


属性の限界と「飛竜」の硬度

「まずは小手調べだ。『ウォーターバレット』!」


連射される高圧の水弾。スライムを一撃で霧散させたその威力だが、ワイバーンは翼をひと羽ばたきさせただけで生じた突風で、弾道の半分を逸らした。直撃した数発も、鋼鉄よりも硬い鱗に当たって虚しく弾け飛ぶ。


(流石に水弾の質量だけじゃ、この鱗は抜けないか……なら!)


ヴァルティスは瞬時に魔力を練り直し、指先を鋭く突き出した。


「『ウォーターカッター』!」


超高速回転する水の刃が空を裂き、ワイバーンの右翼の付け根を捉えた。キィィィィン! と金属音が響き、数枚の鱗が舞い散る。だが、傷は浅い。飛竜の生命力と魔力耐性は、Dランク冒険者が想像していた遥か上を行っていた。


「……傷を入れるのが精一杯か。なら、外側がダメなら内側だ」


ヴァルティスは冷徹に次の術式を組み上げる。ワイバーンが再び大きく口を開け、高熱の火炎を吐き出そうとしたその瞬間――。


窒息の檻:アイスマスクへの昇華

「『ウォーターマスク』」


ヴァルティスの指先から放たれた巨大な水塊が、空中で意思を持つ生き物のように形を変え、ワイバーンの頭部を丸ごと包み込んだ。

「ガ、ゥ……!?」

炎を放とうとした喉に大量の水が流れ込み、飛竜は激しく咳き込む。空中でバランスを崩し、もがき苦しみながら地上へと墜落していく。


だが、ワイバーンは必死に首を振り、遠心力で水を振り払おうとした。

「逃がすか。……冷えろ」


ヴァルティスが魔力をさらに流し込む。水球の分子運動を瞬時に停止させ、熱を奪い去る。

シュゥゥゥ……!


「『アイスマスク』」


先ほどまで流動していた水は、一瞬にして硬質な氷の塊へと変貌した。ワイバーンの頭部は、逃げ場のない「氷の処刑台」に固定されたのだ。

呼吸は完全に遮断され、鼻腔と口内は凍てつき、眼球すらも氷の圧力に晒される。


ドォォォォン!!


轟音と共に、ワイバーンが地響きを立てて岩場に激突した。もはや空の王の威厳はない。頭部を氷に封じられたまま、巨体がビクビクと痙攣し、やがて静かに動かなくなった。


略奪と進化:風の胎動

ヴァルティスは息を荒くしながら、物言わぬ巨躯へと歩み寄った。

今の連戦で、魔力はほぼ底を突いている。視界がチカチカと点滅し、立っているのもやっとの虚脱感が襲う。


(……来い。俺を、もっと強くしろ!)


ヴァルティスがワイバーンの胸元に手を触れた瞬間、真の「覚醒」が始まった。

「魔力吸収」が発動し、大気中の魔素、そしてワイバーンの体内に残留していた膨大な魔力と、その核である巨大な魔石が、光の粒子となってヴァルティスの掌へと吸い込まれていく。


「ぐ、ああああああああっ!!」


凄まじい情報の奔流だ。

空を切り裂く鋭さ。重力を無視する軽やかさ。全方位を包み込む不可視の刃。

ワイバーンがその一生で感じていた「風」の理が、ヴァルティスの魔導回路を強引に拡張しながら刻み込まれていく。


ドクン! と心臓が跳ねた。

空っぽだった器が瞬時に満たされ、さらにその境界線が、これまでの倍以上の広さへと押し広げられた。


「はぁ、はぁ……。これが、『風』か……」


ヴァルティスがそっと指を動かす。それだけで、周囲の空気が彼の意思に従って渦を巻いた。


新たなる力:風の弾丸と刃

彼は試すように、指先を前方の巨岩に向けた。


「『ウィンドバレット』」


放たれたのは、不可視の衝撃波。

着弾した岩は粉砕されるのではなく、内部から爆発したように弾け飛んだ。空気そのものを圧縮して放つ弾丸は、水よりも遥かに速く、回避は困難を極めるだろう。


続いて、彼は掌を水平に薙いだ。


「『ウィンドカッター』」


ヒュンッ!

目に見えぬ真空の刃が走り、先ほど苦労して傷をつけたワイバーンの死体ごと、背後の岩壁を十メートルにわたって一文字に切り裂いた。ウォーターカッターよりも遥かに鋭く、そして長射程。


「……すごいな。魔力が無限に回復するだけじゃない。属性を得るたびに、俺の『魔力弾』は別の次元へ進化していく」


ヴァルティスは、切り刻まれた岩壁を見つめながら独りごちた。

かつて自分を「無能」と呼んだ者たちが、今のこの光景を見たらどう思うだろうか。

だが、もうそんなことはどうでもいい。


水を手に入れ、風を手に入れた。

次は、さらに熱く、さらに強固な力を。

ヴァルティスは自らの内側に広がる無限の宇宙を感じながら、次なる獲物――火を吹く地竜、レッサードラゴンが棲まう火山地帯へと視線を向けた。


一歩踏み出すたびに、彼の体からは強者のオーラが溢れ出していた。




ワイバーンの巨躯から「風」の理を奪い去ったヴァルティスは、これまでにない身体の「軽さ」を感じていた。魔力吸収によって拡張された器には、暴風のごとき魔力が荒れ狂い、出口を求めて全細胞を叩いている。


岩場に立ち、眼下に広がる広大な「静寂の森」を見下ろしたヴァルティスは、ふと、その溢れ出す風の魔力を足の裏に集中させた。


重力の呪縛からの解放:レビテーションの産声

(風は自由だ。重さに縛られない。空気の流れを、俺の意志の支えにしろ……!)


足元でシュゥゥゥ……と小規模な竜巻が巻き起こる。次の瞬間、ヴァルティスの身体がふわりと浮き上がった。地面から数十センチ。わずかな距離だが、それは人類が数千年の歴史の中で、ごく一握りの高位魔導士にしか許されなかった「領域」への第一歩だった。


「……浮いている。これが、『レビテーション』か」


一度感覚を掴めば、あとは魔力操作の熟練度が物を言う。ヴァルティスはさらに魔力を練り上げ、自身の周囲に風の衣を纏わせた。ワイバーンが空を滑空する際に翼で捉えていた空気の「流れ」を、魔力によって擬似的に作り出す。


「行け……もっと高く、もっと速く!」


ドォォォン!!


足元で爆発的な風圧が発生し、ヴァルティスの身体は弾丸のように上空へと射出された。

ただ浮くのではない。風魔法で推進力を得、レビテーションで姿勢を制御する。それは、既存のどの文献にも記されていない、ヴァルティス独自の「飛行魔法」の完成だった。


空中要塞:飛行魔法+各種バレットのコンボ

雲を突き抜け、高度数百メートル。遮るもののない大空で、ヴァルティスは己の進化した力を試すべく、両手を広げた。


「検証開始だ。まずは……速さ」


飛行魔法で加速しながら、右手を前方に突き出す。

「『ウィンドバレット』・連射!」


シュシュシュシュッ!!

不可視の衝撃波が、音速を超えて眼下の雲を穴だらけにする。地上にいた頃とは比較にならない初速。飛行による慣性が魔力弾に乗り、破壊力が倍加している。


(次は、鋭さだ。風と水を、混ぜ合わせろ……!)


滞空しながら、左手に『ウォーターカッター』を形成し、そこに高密度の『ウィンドカッター』を螺旋状に巻き付けた。

「複合魔法――『ストームスライサー』」


放たれた青白い刃は、空気を切り裂く摩擦熱で蒸気を上げながら、数キロ先にある山の頂を文字通り「削り取った」。物理的な切断力に、風による真空の吸い込み効果が加わっている。


破壊の極致:バレットの強化と「爆裂」

ヴァルティスはさらに加速する。空を飛ぶ快感と、魔力を消費し尽くす中毒的な快楽が混ざり合い、彼の精神をさらに研ぎ澄ませていく。


(もっと、もっと強い衝撃を。一点に、全ての魔力を叩き込め!)


彼は飛行を急停止させ、その反動を利用して、両掌の間に巨大な魔力球を作り出した。

今までの『ウォーターバレット』や『ウィンドバレット』ではない。全ての属性の根源である「無属性の魔力」を、風の圧力で限界まで圧縮し、水の粘性で爆発を抑え込んだ、歪なほどに高密度な弾丸。


「……『メガ・バレット』」


放たれた一撃は、もはや弾丸というよりは「光の柱」だった。

ドガァァァァァァァン!!!


地上、誰もいない荒れ地に着弾した瞬間、巨大なキノコ雲が立ち上り、半径数百メートルの地形がクレーターへと変貌した。大気が震え、衝撃波がヴァルティスの頬を叩く。


「ははっ、……あははははっ!!」


空の上で、ヴァルティスは狂ったように笑った。

かつては溝掃除の依頼で小銭を稼いでいた。

受付嬢のミラに冷たくあしらわれ、カイルに泥水を飲まされた。

だが、今の自分はどうだ。

空を支配し、一撃で地図を書き換える力を持ち、そして――。


(……ああ、また来た。最高だ)


凄まじい虚脱感。魔力が枯渇し、細胞が悲鳴を上げる。

その直後、天空の魔素が、そして先ほど吹き飛ばした魔物たちの残滓が、滝のような勢いで彼の中に流れ込んでくる。


ドクン。

器が広がる。さらに太くなる。

最大魔力量は、この飛行実験だけで数倍に跳ね上がっていた。


「次は火山だ。レッサードラゴン……。お前の『火』を、この最強のコンボに加えてやる」


ヴァルティスは空中で反転し、赤く煙を上げる遠方の火山群へと向け、音速の壁を突破する爆音と共に飛び去った。

その姿は、地上から見れば一筋の「墜ちる星」のようであった。



「静寂の森」の北方にそびえる「獄炎の山」。その中腹、煮え滾る溶岩が川を成す焦土に、ヴァルティスは降り立った。


地上を歩くのは久しぶりの感覚だった。だが、彼の足元には常に微弱な風の魔力が渦巻いており、熱せられた岩石から伝わる熱を遮断している。


「……いたな。お前が、この山の主か」


前方の洞窟から、地響きと共にその巨躯が現れた。レッサードラゴン。

ワイバーンが空の王なら、こいつは陸の重戦車だ。赤銅色の鱗は溶岩に浸かっても無傷なほどの耐熱性を持ち、その口端からは常に黒煙と火花が漏れている。


灼熱の洗礼:初の「苦戦」

「まずは空から失礼させてもらうぞ。……『飛行魔法』!」


ヴァルティスが爆音と共に急上昇する。上空数百メートルから、進化した『ウィンドバレット』の乱射を見舞った。だが、レッサードラゴンの反応はワイバーンとは一線を画していた。


「ガアアアアアオォォッ!!」


ドラゴンが咆哮と共に、天に向かって巨大な火炎放射ブレスを放った。

「なっ……!?」

ただの炎ではない。魔力によって極限まで加熱されたプラズマに近い熱波が、ヴァルティスの放った空気の弾丸を「膨張・霧散」させたのだ。それどころか、熱気がヴァルティスの『レビテーション』の気流を乱し、飛行のバランスが崩れる。


(熱い……! 風を巻いても、空気が熱せられすぎて浮力が安定しないのか!?)


ヴァルティスは歯を食いしばり、高度を保とうとするが、地上からのブレスが容赦なく追撃してくる。回避に専念せざるを得ず、攻撃に転じることができない。初めての「思い通りにいかない戦い」に、ヴァルティスの背中に冷や汗が流れた。


学習と選択:窒息の連発

だが、ヴァルティスの脳は恐怖ではなく、冷静な「最適解」を弾き出した。


(ワイバーンを殺したのは何だ? 物理的な破壊力じゃない……『窒息』だ。火を吐くなら、酸素を奪えばいい!)


ヴァルティスは急降下し、ドラゴンのブレスの合間を縫って、両手から全魔力を注ぎ込んだ最大級の『ウォーターマスク』を放った。


「食らえ……! これで終わりだ!」


ドォォォン! と巨大な水塊がドラゴンの頭部を包み込む。

だが、次の瞬間、凄まじい水蒸気が爆発的に発生した。ドラゴンの体温があまりに高いため、水が瞬時に蒸発ボイルしてしまったのだ。


「なら、一発じゃ足りないっていうのか……だったら、枯れるまで注ぎ込んでやる!」


ヴァルティスは空中で狂ったように魔法を連発した。

『ウォーターマスク』、『ウォーターマスク』、さらに『ウォーターマスク』!

蒸発する端から、新しい水を、さらに冷たい魔力の塊を叩きつける。

十数発、二十発。ヴァルティスの魔力残量がレッドゾーンに突入し、視界が真っ赤に染まったその時、ついに水の供給量が蒸発量を上回った。


「……凍れッ!!」


アイスマスクの極致:レッサードラゴンの沈黙

ヴァルティスは最後の一滴まで魔力を絞り出し、術式を『アイスマスク』へと強制遷移させた。

ジュゥゥゥゥ……ッ!!

凄まじい音と共に、ドラゴンの頭部周辺で水蒸気が一気に冷やされ、巨大な氷の塊が形成された。


「ガ、グ……ッ……」


火の化身であるドラゴンが、自らの熱を奪われ、肺を氷で満たされる絶望。

レッサードラゴンは数歩よろめき、その巨体を溶岩の河の縁に横たえた。自慢の紅蓮の鱗も、内側からの窒息と冷気の前には無力だった。


略奪:火属性魔法の取得

ヴァルティスは墜落するように地上へ着地した。

足の震えが止まらない。魔力は完全にゼロ。指先一つ動かすのも億劫なほどの虚脱感。

だが、その限界の向こう側から「それ」はやってきた。


「……はぁ、はぁ……。吸え、全部だ……!」


レッサードラゴンの亡骸から、深紅の魔力が立ち昇り、ヴァルティスの中へと濁流となって流れ込む。

大気中の魔素が、ドラゴンの魔石が、そして「熱」そのものの理が、ヴァルティスの肉体を内側から焼き変えていく。


ドクン。ドクン。ドクン。

三度の大きな鼓動。

彼の魔導回路は、火を運ぶための耐熱性を獲得し、かつてないほどの太さへと変異した。

最大魔力量は、これまでの倍を遥かに超える「海」のような広がりを見せる。


「……これだ。この熱だ」


ヴァルティスが指をパチンと鳴らす。それだけで、指先から青白い炎の礫が飛び出した。


「『ファイアバレット』」


放たれた炎の弾丸は、着弾と同時に周囲を蒸発させ、岩石を溶岩へと変えた。

水、風、そして火。

三つの属性を揃えたヴァルティスの周囲には、自然界の均衡を乱すほどのプレッシャーが漂っていた。


「苦戦は……もう、これで終わりだ。三つの属性を混ぜ合わせれば、俺に敵う奴なんて、この世界に一人もいない」


ヴァルティスは再び空へと舞い上がった。

次は「土」。そしてその先にある「光」と「時空」。

伝説の師匠と呼ばれるまでの道のりは、まだ始まったばかりだった。



「獄炎の山」での死闘を制したヴァルティスは、すぐには次の地へ向かわなかった。自身の「器」をさらに広げ、新たに手に入れた「火」の属性を馴染ませるため、山道に生息するレッサードラゴンを数日にわたって狩り続けたのだ。


研鑽と収穫:解体の極致

「……『ストームカッター』」


指先から放たれた風と水の複合刃が、巨大なレッサードラゴンの死体を一瞬で解体していく。かつてのヴァルティスなら、錆びたナイフで数時間かけても終わらなかった作業だ。だが今は、魔力操作だけで肉と皮、そして魔石をミリ単位の精度で切り分けていく。


(アイテムボックスがあれば全て持ち帰れるんだが……今は贅沢を言っても始まらないな)


彼は、手に入れた極上の魔石のうち、特に質の良い10個を選び取った。残りの素材は惜しみなく放置し、ただ「魔力吸収」の糧とする。10個の魔石だけでも、王都の金貨で家が建つほどの価値がある。これを軍資金にすれば、次のステップへ進めるはずだ。


そして、この反復作業の中で彼は新たな術式を見出した。

水と火。相反する二つの属性を一点で衝突させ、爆発的な膨張を引き起こす。


「……『スチームエクスプロージョン(蒸気爆発)』」


空間に固定された水球の内部を、火属性の魔力で一気に超高温へ加熱する。発生した超高圧の蒸気が逃げ場を失い、解き放たれた瞬間に周囲を粉砕する。それは防御を無視し、内部から破壊し尽くす「壊滅」の魔法だった。


強襲:五体の動かざる山

山を下る道中、異様な殺気がヴァルティスを捉えた。

前方の岩場が「動き出した」のだ。

現れたのは、全身が鉱石のような鱗で覆われた巨獣「ロックリザード」。それも、五体という群れだった。地竜の亜種であり、その防御力はレッサードラゴンを凌駕する。


「数で押せば、俺が退くとでも思ったか?」


ヴァルティスは不敵に笑い、すでに手慣れた「必勝パターン」を組んだ。

ワイバーンやレッサードラゴンを絶望に沈めてきた、死の拘束。


「『ウォーターマスク』・五連!」


空中に五つの巨大な水球が生成され、突進してくるロックリザードたちの頭部を正確に捉えた。岩の巨獣たちは鼻先を塞がれ、猛烈な勢いで首を振るが、ヴァルティスの魔力によって固定された水は剥がれない。


「……凍れ。お前たちの自慢の鎧も、窒息の前には無意味だ」


「『アイスマスク』」


シュゥゥゥ……! と周囲の熱が奪われ、五体の頭部は巨大な氷の塊へと封じられた。どれほど強固な鱗を持っていても、酸素がなければ生き物は死ぬ。五分と経たず、五体のロックリザードは物言わぬ石像へと変わった。


略奪:土の理

ヴァルティスは倒れたロックリザードの一体に手を触れ、意識を集中させた。


(吸え……この堅牢さを、この重厚さを!)


「魔力吸収」が発動する。ロックリザードの体内に眠る土の魔力、そして足元の地面から吸い上げられた大地の精髄が、ヴァルティスの体内に流れ込む。

ドクン!!

体内の魔導回路が、今度は「岩」のような強靭さを得て変質していく。


「……これが、土属性か」


彼は足元の土を軽く蹴り上げた。

「『ソイルバレット』」

土が弾丸となって放たれ、岩を砕く。

「『ストーンバレット』」

さらに魔力を込めて土を圧縮し、鉱石以上の硬度を持つ石の弾丸を射出する。

さらに彼は、水で培った「マスク」の技術を土に応用した。

「『ソイルマスク』」

対象の顔面を砂と土で覆い、肺を土砂で埋め尽くす。水よりも剥がしにくく、重い。


創造の力:拠点の建築

四属性――水、風、火、土を揃えた瞬間、ヴァルティスの魔力操作は「破壊」から「創造」へと踏み込んだ。


「これだけの力があれば……野宿ともおさらばだな」


彼は開けた平地を見つけ、両手を地面についた。

(土を固め、岩を隆起させ、火で焼き固めろ。風で成形し、水で冷やす)


ゴゴゴゴゴ……!


地面が盛り上がり、ヴァルティスのイメージ通りに石造りの頑強な平屋が姿を現した。窓枠は土の魔法で滑らかに削られ、壁は火の魔法でセラミックのように焼き固められている。

一介の冒険者が、わずか数分で「家」を建てたのだ。


「……ふぅ。これが俺の、最初の拠点か」


家の中に入り、石の椅子に腰を下ろす。

凄まじい魔力を消費したが、即座に「魔力吸収」が始まり、最大魔力量がまた一段階引き上げられた。もはや、彼の魔力は街一つの魔導士全員分を合わせても届かないほどに膨れ上がっている。


「残る属性は、光と時空……」


ヴァルティスは窓の外を見つめた。

最強になった後のスローライフ。その理想に、一歩ずつ、確実に近づいている。

だが、彼がこの場所で「伝説の師匠」と呼ばれるようになるのは、もう少し先の話である。



数週間の「静寂の森」と「獄炎の山」での修行を終えたヴァルティスは、かつて自分を追い出した街、ラグラシアの門を潜った。


身に纏う装備こそ以前のままだが、その佇まいは劇的に変化していた。歩くたびに微風が周囲の塵を払い、全身から溢れ出し続ける魔力は、無意識のうちに周囲の空間を僅かに歪ませている。


冒険者ギルド「銀の翼亭」の重い扉を押し開けると、特有の喧騒が鼻を突いた。


「おい、見ろよ。あの無能、まだ生きてたのか」

「薄汚い格好しやがって。薬草でも摘んできたのか?」


酒場でたむろする冒険者たちの嘲笑が飛ぶ。だが、ヴァルティスは一瞥もくれず、真っ直ぐに受付カウンターへと歩を進めた。そこには、以前彼を冷酷に突き放した受付嬢、ミラが退屈そうに書類を捲っていた。


「……あら、ヴァルティスさん。まだ冒険者を辞めていなかったんですか? しぶといこと」


ミラは顔を上げると、隠そうともしない蔑みの笑みを浮かべた。


「ここは一端の冒険者が依頼を報告する場所です。溝掃除の完了報告なら、あっちの新人用窓口へ行ってください。他の方の邪魔ですから」


「……素材の買い取りをお願いしたい」


ヴァルティスは静かに、腰のポーチから無造作に「それ」を取り出し、カウンターの木机に転がした。


カラン、という硬質な音。

一つ、二つ……全部で十個。


「なっ……!?」


ミラの言葉が凍りついた。カウンターの上で鈍い赤光を放っているのは、鶏の卵ほどもある巨大な魔石。それも、ただの魔石ではない。内部で炎の渦が巻いているかのような、圧倒的な熱量を帯びた極上品――『レッサードラゴン』の魔石だ。


「これ、は……。偽物……ですよね? ヴァルティスさん、冗談にも程があります。あなたがドラゴンの魔石なんて手に入れられるはずが――」


「鑑定しろ。本物かどうかは、お前が一番よく知っているはずだ」


ヴァルティスの低い声に、ギルド内の喧騒が潮が引くように消えていった。周囲の冒険者たちが、生唾を飲み込んでカウンターを囲む。


「……ま、待ってください。鑑定官を呼びます!」


ミラが震える手で魔導鑑定器を起動させ、魔石を一つ置いた。

キィィィィン! という高い共鳴音が響き、鑑定器の水晶が真っ赤に発光する。


「鑑定結果……属性:火。純度:特級。種別:レッサードラゴン……。十個すべて、同品質です……っ!」


ミラの顔から血の気が引いていく。レッサードラゴンといえば、本来ならBランク以上の複数パーティーが数日がかりで討伐する難敵だ。それを、この「無能」と呼ばれた男が、たった一人で、それも十体分も。


「……どういうことだ、ヴァルティス! お前、まさかどこかで盗んだんじゃないだろうな!?」


野次馬の中から、以前彼を追放したカイルが声を上げた。胸当てに深い凹みを残したままの彼は、恐怖を隠すように叫ぶ。


「Dランクのお前が、ドラゴンを倒せるわけがない! 詐欺だ! Dランクを隠れ蓑にした犯罪だぞ!」


「騒々しいな。何事だ」


奥の執務室から、威厳のある声と共に、ギルドマスターのバルガスが現れた。歴戦の勇士である彼は、カウンターに並ぶ魔石と、それ以上に、ヴァルティスが纏っている「異常な密度」の魔力に一瞬で気づき、目を見開いた。


「……貴様、ヴァルティスと言ったか。この魔石は、お前が仕留めたものか?」


「ああ。解体の練習台にした残骸の一部だ」


ヴァルティスは淡々と答えた。「解体の練習」という言葉に、場が再び凍りつく。


「マスター! こんなの、明らかな不正です! こいつは魔法も使えない、剣も下手な、ただの無能なんです。何かの間違いです!」


ミラが必死に訴えたが、バルガスは冷徹な一瞥を彼女に投げた。


「……黙れ、ミラ。お前の目は節穴か? この男が今、どれほどの魔力を練り、この空間を支配しているか解らんのか。お前がバカにしていたのは、ドラゴンを『練習台』にするほどの化け物だぞ」


「ひっ……!?」


バルガスはヴァルティスに向き直ると、深く頭を下げた。


「すまない、ヴァルティス殿。部下の不手際を詫びる。……これほどの魔石、一つ金貨7枚。十個で金貨70枚だ。即金で支払わせよう」


ギルド内が、どよめきから戦慄へと変わった。金貨70枚。一生遊んで暮らせるほどの金額が、目の前の「Dランク」に支払われる。


「ヴァルティス、さん……あの、私、その……」


ミラが媚びるような笑みを浮かべようとしたが、ヴァルティスは彼女を視界に入れることすらなく、差し出された金貨の袋を無造作に受け取った。


「ランクはどうでもいい。ただ、もう俺に絡むな」


ヴァルティスは背を向け、ギルドの扉へと向かう。道を開ける冒険者たちの顔には、畏怖と、自分たちが化け物を嘲笑っていたという事実への後悔が張り付いていた。


「……まさに『Dランク詐欺』だな。あんなバケモノを放っておいたとは……」


バルガスの呟きを背に、ヴァルティスは表へ出た。

かつては重く感じたこの街の空気も、今はあまりに薄く、退屈に感じる。


「金も手に入った。次は……あの森の拠点を、さらに広げるか」


彼は足元から風を巻き起こし、周囲の視線など気にする様子もなく、街の喧騒を置き去りにして空へと舞い上がった。




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