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252  作者: Nora_
7/10

07

「いえーい、クリスマスだー」

「そうだな」


 つまり学校も終わった、夏休みとは違って登校日があるわけでもなく来年の六日まではゆっくりすることができる。

 ただ、ゆっくりすることができるということはとにかくだらだら過ごす可能性が高まったわけだから脳と体的にはあまりよくなかった。

 とはいえ、なにか用があるわけでもないのに寒い外に積極的に出かける陽キャラでもないからどうなるのかは容易に想像することができる。

 だからもし勉の中に遊びたいとかなんとか連れ出したいとかそういう気持ちがあったのなら、その場合は遠慮なくぶつけてもらいたいところだった。

 寒くても誘われれば付いていく、部屋やリビングに張り付いておくよりも遥かに健全な時間となることだろう。


「瑚子ちゃんも刀根さんもちゃんといるからそのことがより嬉しく感じるよ」

「いまはいないけどな」

「それは僕が涼二を連れ出しているからだよ」

「で、なんでだ?」

「クリスマスの日ぐらい涼二と二人きりの時間が欲しかったんだよ」


 またこういうのか。

 にやにやへらへらしているわけでもなく真面目な顔そのものだから嘘なのか本当なのか悩むことになる。

 まあ、嫌ではないがそういうのは異性に言うべきだと毎回ぶつけることしかできない。


「ちょっとまだ早いけど今年もありがとね」

「おう、勉もな」


 来年も同じようなやり取りができればいいな。

 こればかりは俺と勉次第だからどうなるのかはわからないがその気持ちは強い。


「あとは……あ、最近は付き合いが悪くてごめん」

「別にいいよ」

「やらなければいけないことをやっていたんだけど涼二といられなくて寂しかった」

「はは、はいはい」


 俺といられなくて寂しかったなんて勉からしか聞くことができないだろう。


「渡したい物があるから僕に家にいこう」


 渡したい物か。

 刀根といったときに買った物は既に渡してあるからただ付いていくだけでいいのは楽でいい。


「これだよ」

「おいおい……こんなの貰えないぞ」


 そもそも自分の写真をプレゼントしようとする方がすごい。

 それでも流石にそれは冗談だったらしく「は冗談だとして、今日お世話になるからお菓子とかデザートとかいっぱい買っておいたんだ。だから持っていくのに協力してほしいんだよ」と変えてくれた。


「いやマジで大量だな」

「うん、女の子が二人いるって意識していたら甘い物ばかりになっちゃった」


 まあ、なにも一日で全て食べきらなければならないなんてルールもないのだ。

 構わないのなら持って帰らせればいい、あとは俺らの家にも置いていってくれれば母や妹がすぐに終わらせてくれる。

 どちらも甘い物が大好きでこの前は勝手に食べた云々で喧嘩になりそうな二人だったからよく見ておかなければならないことには変わらないが捨てることにはならないからいい。


「よし、入った。じゃあ戻ろうか、早くしないと喜ばせるつもりが逆効果になっちゃうからね」

「おう」


 そこから先は場所を提供しているからとかなんとかで母も参加して盛り上がっていた。

 刀根なんかはそのせいで落ち着きがなかったから少し申し訳なかった、ただ無理やり違うところにいかせることもできなかったから水を差さないように静かにしていることしかできなかった。

 だって妹に手伝うと言ってあったのに結局「私がやるから休んでいていいよ」という母の言葉に甘えてしまったからだ。


「涼二ークリスマスのときぐらい笑いなさいよー」

「ちょ、近い近い」

「私だって息子とゆっくり楽しくお喋りがしたいときだってあるのよー」


 あ、これは素面ではなくて酒を飲んだ結果だ。

 元々参加するつもりだったのか酒を大量に買い込んであった、それでも先程冷蔵庫を見た感じだとまだ半分ぐらいは残っていたから父とまた一盛り上がりしそうだった。


「勉、母さんの相手を頼む、俺は片付けを手伝ってくるから」

「任せて」


 役立たずとかゴミとか言われないだろうか。

 自分から手伝うとか言ってしまっていただけに近づくのも勇気が必要だった。


「あっちでみんなとお喋りしていればよかったのに」

「なにも手伝わないで終えるのは無理だったんだ」


 普通……か?

 特に怒っている感じは伝わってこない、ただただ本当にそう思って発言しているようにしか見えない。

 ただ、これは願望的なものが強いからだ、本当のところなんていくらごちゃごちゃ考えたところでわかりようがなかった。


「じゃあ洗ったやつを拭いてくれる?」

「任せろ」


 しかしなんだ、怒られなくてよかったのはよかったがなにもなさすぎるのもそれはそれで怖く感じるものだ。

 特に話したいこともないみたいで片付けが終わったら妹も三人の輪に加わっていた、つまり現状は放置された変な人間となっている。

 やはりなにも感じていない……なんてことはないよなあ、いつもなら積極的に話しかけてくるぐらいなのにそれすらないもんなあ、と。

 でも、ここで必死に話しかけようものならそれこそ大爆発に繋がるかもしれないからできなかった。

 結果、台所の床に座って自分を落ち着かせることが唯一俺ができることだった。




 ハイテンションの母が言い出したことで今日はみんなこの家に泊まることになった。

 こういうときも妹がいてくれてよかったと思う、刀根には妹の部屋で寝てもらえばいいからすぐに話し合いも終わる。

 ただ? やはりその主が駄目みたいで風呂に入ったらさっさと刀根と一緒に部屋にこもってしまった。


「うーん、今日の瑚子はいつも通りのようでそうじゃなかったね」

「急に冷静になるのやめろよ」


 それができるのなら刀根がいるところでやってほしいところだ。


「だって涼二とまともにお喋りをしていなかったから、勉君はなにか知っていることはある?」

「最近はあんまり一緒にいられていませんでしたけど喧嘩をしたわけじゃないと思います」


 そうだ、喧嘩は別にしていない。

 約束を破ったのは今日だけでそれ以外はちゃんと言われた通りにしていた、なんなら最近は妹とばかり過ごしていたことになる。


「涼二は?」

「作るのを手伝うって言ってあったのに母さんに任せてしまったからだと思う」

「お母さん的には違う理由からだと思うな」


 そうだったらいいが。

 ま、これもいますぐにどうにもならないことだから勉に先に風呂に入ってもらって出たら俺もすぐに済ませた。

 流石に同じ部屋で寝るのはアレだからと客間に布団を敷こうとしたらやだやだ攻撃を食らってしまい……。


「へへへ、今日は涼二を独占できて嬉しいなあ」

「勉、最近はなにをしていたんだ?」

「お、聞いちゃう? それはねー実は毎日ー」


 ああ、これは本当のところは教えてくれないな。

 なんでもかんでも吐けばいいわけではないから今回も仕方がないと片付けるしかない。


「近所のお爺ちゃんに毎日キャロルを見せていたんだ」

「へえ、犬が好きなのか?」

「うん、昔に飼っていたみたいなんだけど死んじゃってからはもう精神的に無理だったみたいでさ、だからキャロルとお散歩をしていた僕を見て羨ましくなったみたいなんだ」


 嘘であれ本当のことであれ飼うまではいかないが気になるという人は多いだろうな。

 俺だって猫とか犬とか爬虫類とか色々気になった時期はあったからわかる、それでも色々揃えるのにかなりの金と、それこそ先程も出ていたようにいつかは死んでしまうからそこが気になって行動することはなかった。

 この先も羨ましいなあ程度で終わらせておくぐらいがいいと片付けていることだ。


「なら久しぶりに犬に触れられて嬉しいだろうな」

「うん、キャロルもすぐに慣れていたからそれぐらいならって思ってね」

「それでなんでそんな顔を?」

「もうあんまり余裕がないみたいでね」


 病気か、寿命か、どちらにしてもという話か。


「その人を見ていたらもっとキャロルを連れていってあげたいという気持ちと、涼二達と一緒にいたい気持ちがごちゃ混ぜになっちゃってね」

「だから朝に『絶対に参加するから』って言ってきたのか」

「まあ、クリスマスは元々そのつもりだったからあれだけど忘れてほしくなくてね」

「この短期間だけで忘れるような残念な脳じゃないよ」


 勉がいてくれてよかった、そうでもなければ母と刀根だけが盛り上がっている四人で集まっている意味はと言いたくなる変な時間になるところだった――いやあれか、勉にも助けられて母にも助けられていたということかと今更気づく。

 明日母に礼を言うかと片付けてからはなんか一気にすとんと落ち着いてしまって気が付いたら朝だった。

 ちゃんと自分の布団ですーすー寝息を立てている勉を起こそうとしてやめる、流石にまだ早いから可哀想だ。


「「あ」」


 で、こういうときに限って遭遇したりするものだ。

 まだ早起きしていた母が~となった方がよかった、礼だって時間が経つと言いづらくなったりするものだから。


「一緒にお部屋で寝たんだ」

「おう、勉がどうしても一人は嫌だって言うから仕方がなくな」

「私達の方は綾乃がすぐに寝ちゃってちょっと退屈だったよ」

「母さんがいて落ち着かなさそうだったからな」


 今回もあくまで普通か。


「お兄、手伝ってくれなかったから怒っているとかじゃないからね?」

「じゃあなんですぐに部屋にこもっちゃったんだ?」

「……お兄を独占したくなったから、なんて言ったら笑うよね?」


 怒られるよりは遥かにいいが最近の妹はどこかおかしくなってきてしまっている感じがする。

 小さい頃だってこんなことは言っていなかった、付いてきてくれる存在ではあったがお兄ちゃんは~と結構言葉で刺してきていたから差がすごい。


「いや……だから四人で過ごすよりも二人で過ごしたくなってしまったと?」

「うん、だけどそのままぶつけると迷惑だから早く離れることで、ね」

「そうか」


 そういうところでは成長できているということか。

 これまた小さいときの話になってしまうが一度こうと決めたらそれを達成できるまでやだやだ攻撃をよく仕掛けてきていた。

 ただ、中学生になってからは一切なくなって今度は遠慮ばかりをするようになってしまったという感じだ、とはいえ成長しようとも極端にやるようになっているのは変わっていないのがまだ安心できるところかもしれない。


「ちょっと歩かない? まだ早い時間だから私達がいなくても二人に迷惑はかからないだろうからさ」

「わかった」


 戻ってもう一度寝るのも現実的ではないからありがたかった。

 あとはやはり妹と問題なく話せていることが大きかった。

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