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252  作者: Nora_
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06

「クリスマスと言ったらピザだよね」

「え、ケーキじゃない?」

「ケーキも食べるけど僕的にはピザだよ、あんなのクリスマスぐらいにしか食べないからね」

「そういえばそうか、ピザを頼もうとは滅多にならないからね」


 俺らの家はケーキを買うぐらいでそれ以外は普通の食事だからあんまりこれだと言えるような内容ではなかった。


「あ、お兄、今年は頑張って用意するから一緒に楽しもうね」

「それなら手伝うよ」


 そうか、ならもう少しぐらいはクリスマス感が出るということか。

 これまでのことを考えれば駄目だと言われる可能性が高いがもし戦力外通告を受けたらクリスマスプレゼントでも選びにいけばいい。

 

「うん、一緒に頑張ろう」


 クリスマスに頑張ろうとしていることといいあっさりと受け入れるなんて珍しいことだ。

 今年は勉もいるから張り切っているのか? ただそれには参加する流れにならないと意味がない。

 ここは兄として動いてやるか。


「えーそれなら僕も参加したいなあ」


 まあ、そうする前に勉の方が動いてくれた形になる。

 やっぱり妹がいるところには急に現れたり、参加したくなる勉だ。


「いいよ? お兄だって勉君がいてくれた方がいいだろうから」

「刀根さんもいいよね?」

「うん、あ、だけど綾乃を誘うのはお兄に任せようかな」

「ん? じゃあいってくる」


 今日は昼休みにも来なかったから直接教室へ、そうしたらまた突っ伏していたからこの前と同じように声をかけた。

 でも、今回は前回のように起きてはくれなかったからどうしたものかと側で悩んでいると「刀根さんを起こしたいの?」と言われたから頷いたら代わりに起こしてくれた。


「ありがとう」

「気にしなくていいよ」


 起きたばかりはやはりすぐに俺だとはわからないのか怪訝そうな顔で見ていたが刀根といつものようにしたら「涼二か」と。


「クリスマス、一緒に過ごしてほしい」

「ほわ!?」


 大きい声だ、それでもこれでしゃっきりとしたことだろう。

 いつまでも知らない人間を相手にするかのような態度でいられたら困るのだ、先程の女子だってただ優しいのもあるだろうが刀根のことを考えて行動してくれただけだ。


「あ、瑚子と勉もいるぞ」

「そ、それを先に言えっ、廊下にいくぞ!」


 年の終わりが近づくにつれて廊下もどんどんと寒くなっていく。

 廊下で過ごす生徒も極端に減って基本的に教室にいるからまあ大事な話がしたいならありかしれないが寒い。


「じゃあなにか買いにいかないとな」

「ご飯の方は俺と瑚子でやるからいい、だから買うとすればプレゼントを渡したい場合とかだな」

「俺は瑚子になにかあげたい」

「それなら付き合うよ」


 俺も妹と勉に買いたい、刀根にだって同じだ。

 だからこそ一緒に出たかった、だってそうでもなければ出会ったばかりの刀根には渡しづらいからだ。


「つ、付き合う、ね」

「さっきといいなんでそんな反応なんだ?」


 妹のことを出しておけばすぐに妹が言い出したことだとわかってくれるはずなのだが、あと少しでも関わっていれば俺が一人で積極的に誘い出す人間のようには思えないだろう。


「……いや涼二よ、普通は出会ったばかりの異性をクリスマスに誘ったりはしないんだからな?」

「瑚子みたいな共通の友達的存在がいてもか?」

「む、そう言われると――いやそれでも瑚子が誘うならともかく涼二が誘ってきたりしたらやっぱり違うだろ」

「悪かった、勉に誘われたかったよな」

「「はあ……なんでこうなるんだろう」」


 結局妹も来たのか、どうやら勉はいないようだが。


「見ていた感じだとお兄が急に誘ってきたことに驚いているだけで参加してくれるんだよね? 綾乃もいるならもっと楽しめるね」

「逆にいいのか?」

「え、当たり前だよ、寧ろ参加しないとか言ったら当日に家まで押しかけるよ? なんなら綾乃のお家で開催にしちゃうからね?」


 あ、これは間違いなくやる、昔からずっと一緒にいるから冗談かそうではないかはすぐにわかる。

 元々参加するつもりでも突撃はされたくなかったのか「じゃあ急に突撃されないように参加しておかないとな」と返していた。


「それと少し早いけど今日の放課後にでも涼二と一緒に物を見にいくつもりだ」

「今日の放課後か……私、お友達に頼まれていて付いていけないからお兄のことよろしくね」


 これは……いや、これは別に俺達に合わせて嘘をついたわけではないか。

 あの三人ともまだ関わり続けているみたいだからそっちと過ごすのかもしれない。


「任せておけ、ふらふらしていそうな涼二を必ず家まで帰すぞ」

「うん――あ、そのまま家に寄ってご飯を食べていけば?」

「それもいいかもな」


 少し前までのように普通に会話をできているだけで俺的には十分だ。

 あとはどれだけいい物を見つけられるかで変わってくるから物探しを頑張りたいところだった。




「簡単に見つかってよかったな」

「そうだな、あんまり遅い時間まで連れ歩くことになると微妙だから助かったよ」

「それって俺のことを考えて、だよな?」

「刀根は女子なんだから当たり前だろ」


 これが勉なら十九時になろうと二十時になろうと構わな――いや勉でも十九時ぐらいには帰らせておいた方がいいかと片付ける。

 というか、単純に自分自身が変なのに絡まれたくないのもあった、まあそれでも結果的に仲間もそういう存在から遠ざけることができているわけだからそう悪い考えでもないだろう。


「な、なあ、俺と私……どっちがいいと思う?」

「それは刀根が好きな方でいいだろ、誰に迷惑をかけているというわけでもないんだからな」

「りょ、涼二的には?」

「ん? だからいま言った通りだよ」

「はぁ……」


 何故かため息をつかれている。

 ただ? こういうときは飲み物かなんかを渡しておけばどうにかなることを妹の件で学んであるから刀根にもしておいた。

 意地を張っている状態だと受け取ってすらもらえないときもあるが今回はそうならなかった、ついでに自分にも甘くなってしまうことがこのやり方の悪いところだろうか。


「じゃ、いまから試してみるからどっちがいいか言ってくれ。ごほん、私は涼二が付き合ってくれて嬉しいぞ?」

「あーその喋り方なら俺の方が合っているかもな」

「涼二、俺はいつか瑚子を貰うぞ」

「やっぱり自然だな。だけどこれはもう聞き慣れてしまっているからだ、だからあんまり気にせずに私にしたいなら変えていけばいいんだよ」

「ど、どっちだよ……」


 もっともだ。


「そもそも刀根はその喋り方を気に入っているのか?」

「そうだな、もういまとなってはこっちの方が自然な感じがする」


 なら無理やり変えたということか。

 なにをどう頑張れば彼女のことが男子に見えるというのか、聞いてみたいところだがそれは無理だからせめてこちらをなんとかしなければならない。

 お世辞でもなんでもなく本心からの言葉をぶつけ続ければ自信を持ってくれるだろうか。


「似合わないって何度も言われてなあ、続ける自信がなかったんだ」

「刀根次第だ」

「と、とりあえずは帰るか、あと厚かましいけどご飯を食べさせてもらってもいいか?」

「おう」


 クリスマスのことで誘ったときみたいに妹に言われれば効果がわかりやすく出るかもしれない。

 だからそれを期待して連れていったのだがまだ家にはいなかった、だから俺が作った物を食べてもらうことになってしまった。


「こうして時間が空いている人が作ることになっているんだ、だけど刀根は瑚子とか母さんが作ってくれた物を期待していたんだろ? だから悪いな」


 なにも言わない、が、食べてはくれるようだった。

 というか、いまみたいなことを言われたらそうするしかないか、ここで「そうだ、だから待つ」なんてことができる人ばかりではない。


「ただいまー」


 救世主の帰還だ。


「あ、あんなことを言っておきながらごめんね綾乃」

「気にするな」

「それで綾乃はなんでそんな顔? お兄が作ってくれたご飯だって普通に美味しいよね?」


 俺的には、家族的には問題なくても刀根からしたら違うかもしれないから不満があるならちゃんと言ってほしい。

 食べてもらうからにはちゃんと合わせなければならない、向こうに合わせろなんて言う人間でもない。


「瑚子は俺と私、どっちがいい?」

「それなら私かな、だって女の子なのにもったいないから」

「そ、そうか、まさか俺がこんなことを言われる日がくるなんてな」


 当たり前なのかもしれないが俺の言葉の価値が……。

 妹や勉に言われて一発で変われるのなら最初から俺には聞かずに二人に聞いておけばいいと思う。

 別にこれは拗ねているわけではなくて時間を無駄にしてほしくないからだ、絶対にそうだ。


「私、でしょ?」

「りょ、涼二にも相談してみたんだけど私……が好きな方でいいって言ってくれてな。でもほら、そもそも全く気にしていないなら悩むこともなく俺を続けているはずだろ? だからなんか……余計にごちゃごちゃしてしまったというか」


 あれか、私にしたいなら私でいいと言ってやった方がよかったのか? あ、いやだからそれを誰が言うのかが大事であって内容に引っかかっているわけではないのか。


「お兄はどっちがいいって?」

「それも私の好きな方でいいって」

「はぁ、そういうことか。もうお兄、そこでちゃんと答えてあげないから綾乃が不安になっちゃっているんだよ?」


 ちゃんと答えても答えなくてもこれは避けられなかったか。


「悪い」

「あ、謝らなくていいっ、それに…………だからな」

「「え?」」

「と、とにかくっ、もう少し考えてみるよ!」


 出ていこうとする刀根を妹が止め、何故かではないが二人で送ることになった。

 俺の方は連れてきているわけだから当然なものの、なにかと遊ぶことは回避しようとする妹だから珍しい。

 まあ、そのおかげで帰りは出しゃばらずに済んだし、仲のいい二人を見られたことはいい点だと言えた。

 二人きりになった途端に怖くなるなんてこともなくてよかった。




「最近、夢にお兄ばかりが出てくるんだ」

「夢の俺はどんな感じだ?」

「え、そのままだよ」


 なら夢の中でも俺は真顔か。

 夢の中でぐらいは陽キャラだったり積極的なキャラであってほしかった。


「あ、だけど違う点もあってね、それは私のことを瑚子ちゃんって呼んでくることなんだけど」

「おえ、夢の中の俺が気持ち悪くてすまん」


 妹にちゃん付けしていいのは僕系か両親だけだ。

 しかもその状態で先程も考えたように積極的だったら――うん、遥かにやばい存在になるから俺のままでよかった。


「新鮮でいいけどね、ということでいま呼んでみて?」

「瑚子ちゃ――瑚子でいいだろ」

「それならお姉ちゃん呼びは?」

「それなら姉貴だな、瑚子が姉なら刀根も同じで姉貴ということになるのか」

「あんなのただの冗談だよ」


 いやまあそうだが冷たすぎないか……。


「あと私と二人でいるときに綾乃のことを出すの禁止、わかった?」

「んーそれはどうなんだ?」

「もういい、勉君のところにいってくる」

「待て待て、もう十九時だぞ」


 ご飯を作り終えた状態でいまは母を待っていたのだ。

 食べられないからということなのだろうがいまからいかせるのは微妙だ、かといって付いていくことも許可をしてもらえなさそうだから大本のところからなんとかしなければならない。


「じゃあ次に夢の中にお兄が出てきたらいたずらするからね?」

「まあ、夢の中の俺なら自由にしてもいいんじゃないか?」

「えっ!?」


 まずは夢の中でも自由に行動できるようにしなければならないからそこで折れることだろう。

 だから結果的に守ることができる、夢の中でも殺されたりしたら嫌だからな。

 普段の彼女のままならそんなことをしないとはわかっていても俺と過ごしている時間のときにどれぐらいのストレスを溜め込んでいるのかがわからないから怖いのだ。

 そう考えると怖い顔になったりして表に出してくれている間はマシ……ということなのだろうか。


「ど、どうした?」

「あーいや……ただ急に大きな声を出したくなっただけ。それと夢の中ではどうせなにもできないから安心していいよ、お兄も私が出てきたとしてもあんまり好き勝手に行動しないようにね」

「俺も同じだから安心してくれ」


 というか、そんな夢を見ることになったら妹の顔を見られなくなるから避けたい。

 などと考えていたくせにその日の夢は……。


「おはよ――なんでいま顔をさっと逸らしたの?」

「ま、まだ歯を磨いていないからだな」

「そっか、じゃあいっておいでよ」


 あ、妹に関する性的な夢を見たとかではない。

 何故かキャロルの体なのに妹の顔だったから不思議で面白くて直視ができなかったのだ。

 ただ? 普段キャロルがしてくれているようなことを妹の顔が見えたままされていたからまあそこでは引っかかっているかもしれない。


「もうすぐ終業式だからね、なにも気にせずに楽しめるようにお互いに頑張ろう」

「おう」

「あと、別行動をしたりはしないからね? もう毎時間いくつもりでいるから」

「ん? おう、何回でも来ればいい」


 刀根が何回も来てくれるのは妹ほいほいみたいなところがあるからだとわかっている。

 あとは勉もか、最近は付き合いが悪いがそれでも妹がいるときは必ず来るからな。

 みんな露骨でわかりやすくていい、勘違いしないで済んでいるのはみんなのおかげだ。


「驚いた、お兄なら『あの三人を優先しろ』とか『勉や刀根と過ごした方がいい』って言うと思ったのに」

「俺だって瑚子といたいんだよ」


 あれだ、キャロルの体に妹の顔だったが一言も喋ってくれなかったことが影響している。

 あとはやはりいまだけだからだ、思春期の少女がいつまでも構ってくれるとは思えないからまだ興味を持ってくれている間だけは仲良くしたいのがあった。


「風邪を引いちゃったの? 体温計なら……あ、ここにあるから測ってみたらいいよ」

「ありがちなやり取りだな」


 まあ、こうして驚いたり正直なところを吐いてくれている間は問題ない。

 それでも結局のところは来てくれているのを待っているだけなのは変わらなかった。

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