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短編

右と左

作者: 花みかん
掲載日:2026/02/08

 私は、周りの子より右と左を覚えるのが遅かった。たぶん、小学一年生の半ばぐらいまでは、右と左が分からないままだった。

 年長さんの時の、朝の集会でのこと。

「目をつぶって、右手をあげてくださーい」

前に立つ先生がみんなに指示をだす。私は目を瞑った。さて、どっちの手をあげていいか分からない。これはまずい。私は薄目を開けて、前の子が挙げてる手を盗み見た。そして、少し遅れて右手であろう手をあげる。

「あれ、あそこに薄目開けてる子がいる」

先生に指摘された。多分私のことだろう。でも、みんな目を瞑っているから、バレない。そんなことを考えて、私は何事も無かったようにその場をやり過ごした。

 その次の年、小学一年生の放課後でのこと。

「今日おばあちゃん家に帰るんだって? 道分かる? 先生に教えて?」

連絡帳に、今日は家ではなく祖母の家に帰らせますと母から連絡されていたみたいだった。もちろん、おばあちゃんの家までの道はちゃんと覚えてる。説明しよう。

「えっと」

しまった。あそこをこっちに曲がるのは分かるのに、なんて言おう。

「えっと、消防署をこっちに曲がって、その後こっちに行って…」

私は曲がる方向を指さしながら、先生に帰る道を教えた。

「そう、ちゃんと分かってるみたいで安心した」

またもや何とか切り抜けた。

 その後もしばらく、私は右と左が分からないままだった。なぜなら、「右は、こっち。左は、こっち。」そんな当たり前すぎることは、もう誰も教えてくれなかったからだ。人に聞けばいいものを、私は誰にも聞けなかった。きっと、そんなことも分からないの? と言われるのが怖くて聞けなかったのだろう。

 右と左が分からなかった私だったが、さすがに今ではしっかり覚えている。ただ、今でも、人に分からないことを聞くのは苦手なままだ。恥ずかしながら、なんで知らないの? と思われることを、怖かっているからだ。聞くのは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥。いつかこの意識が変わるといいなと思う。

 だが、今日もフランス語の発音が分からないまま、音読をボソボソ読み上げたばかりだった。


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