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滅亡世界を独りの少女とウサギ型ロボットだけで生きていく  作者: うみのうさぎ
独りは嫌

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7/12

消滅の予感

異常は、音もなく現れた。


 端末の通知ランプが、

 規定より一段弱い光で点滅している。


ユウナ「……シロ」


シロ「うん。ログ一件。

 優先度、判定不能」


ユウナ「開示」


 シロは頷いたが、

 再生までにわずかな遅延があった。


シロ「注意事項がある」


ユウナ「何?」


シロ「これは、要約しない方がいい」


 ユウナは一瞬考え、頷く。


ユウナ「そのままで」


記録ID:A-57

時間:03:33


被験者・美咲、覚醒。

端末を使用。

長時間、入力停止と再開を繰り返す。



 次のログは、

 これまでと違い、一文だけだった。


入力内容:


消えたくない



 それで終わりだった。


 説明もない。

 理由もない。

 過去の記憶も、未来の希望も書かれていない。


シロ「……短いね」


 シロが言う。


ユウナ「情報量は多い」


 ユウナは即答した。


シロ「どういう意味?」


ユウナ「これは要求じゃない。

 交渉でもない」


 端末の文字を見つめる。


ユウナ「存在条件の提示だ」


 シロは黙った。


ユウナ「消える、という概念を知っている。

 そして、それを拒否している」


シロ「……うん」


ユウナ「つまり」


 ユウナは言葉を選ぶ。


「美咲は、ボクと同化することを恐れている」


 合理的な分析だった。

 感情評価は含まれていない。


ユウナ「危険度は?」


シロ「行動レベルでは、低。

 心理レベルでは……」


ユウナ「未定でいい」


 ユウナは端末を閉じる。


 数秒後、もう一度開いた。


ユウナ「このログは?」


シロ「保存済み。

 削除要求も、編集指示もなし」


ユウナ「なら、扱いは通常ログと同じだ」


シロ「了解」


 シロはそう答えたが、

 声が少しだけ遅れた。


シロ「ユウナ」


ユウナ「何?」


シロ「シロはね、この文……」


 言いかけて、止める。


シロ「いや。今は、いい」


 照明が、静かに落ちる。


 ユウナはベッドに横になり、

 天井を見つめた。


 消えたくない。


 それは、

 生きたい、とは少し違う。


 生存確率の話でもない。

 効率の話でもない。


 それでも。


「……無視はできないな」


 独り言のように呟く。


 それは同情ではなく、

 判断の更新だった。


内部記録シロ


本ログは、

被験者・美咲による

明確な自己存続意思の表明。


以後、

「不要な仮説」には該当しない。

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