残されたログ
シロ「ログを読むよ」
記録ID:A-07
時間:03:14
被験者・美咲、覚醒を確認。
脈拍上昇。呼吸数増加。
会話を試行。
発話内容:
・外が見たい
・一人は嫌
・ユウナはまだ?
情動レベル:高
安定化処置:未実施
ユウナ「……ユウナ、って」
シロ「君の名前」
即答だった。
ユウナ「つまり、その“美咲”は、ボクを知ってる?」
シロ「知ってるというより、基準にしてる。シロの分析では」
モニターの映像が切り替わる。
朝。照明が全点灯したポッド室。無意味なほど明るい。
ユウナ「これは?」
シロ「同日の別ログ」
記録ID:A-08
時間:05:02
被験者・美咲、再び休眠。
施設内の照明が全点灯した状態で確認される。
理由:不明。
ユウナ「……君がやったわけじゃないんだね」
シロ「シロはそんな無駄なことしない主義」
少しだけ、間が空く。
シロ「ユウナ」
ユウナ「何?」
シロ「この記録をどう解釈するかは、君次第」
ユウナ「解釈?」
シロ「事実は“ログがある”だけ。それ以上は、全部仮説」
合理的だ。
ボクは頷く。
ユウナ「じゃあ、現時点での結論は一つだ」
シロ「お、聞かせて」
ユウナ「この施設には、ボクが知らない“活動”が存在する。原因は不明。危険度も不明」
シロ「満点」
シロが満足そうに耳を揺らす。
ユウナ「で、次は?」
ユウナ「観測を続ける。感情的な判断は避ける」
シロ「それでこそユウナ」
シロはそう言って、モニターを落とした。
画面が暗くなった瞬間、
そこに映り込んだ自分の顔が、ほんの一瞬だけ、
誰か別の表情に見えた気がした。
気のせいだ。
ボクはそう結論づけ、踵を返す。
背後で、記録端末が静かに待機状態へ戻る。
――次の覚醒を、
まるで知っているかのように。




