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滅亡世界を独りの少女とウサギ型ロボットだけで生きていく  作者: うみのうさぎ
独りは嫌

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10/12

極論

逆転提案


 ユウナは、計算を終えていた。


 人格の発生順序。

 記憶の所有権。

 世界理解の連続性。


 すべてを再整理した結果、

 最も摩擦が少ない案は一つしか残らなかった。


シロ「シロ。文書を開く」


ユウナ「……え?」


 反応が遅れた。

 それだけで、ユウナはシロの内部負荷を察知する。


シロ「開示対象は?」


ユウナ「美咲」


シロ「……了解」


記録:ユウナ

宛先:美咲



 ユウナは、短く書いた。


結論から書く。


最適解は、

ボクが消えることだ。



シリ「ユウナ!?」


 シロの声が、明確に跳ねた。


ユウナ「続きがある」


 ユウナは止めない。


理由。


君が元の人格であり、

世界との連続性を持っている。


治療ポッドは、

本来君のためのものだ。


ボクは、

環境適応のために生まれた。

役割は、すでに果たした。



シロ「待って、待って」


 シロが割り込む。


ユウナ「それ、合理性の顔した自殺案だよ」


シロ「違う」


 ユウナは即答する。


ユウナ「人格の終了だ。

死亡とは定義が異なる」


シロ「同じ!」


 シロの声は、ほとんど叫びだった。


 ユウナは一瞬だけシロを見る。


ユウナ「……感情判定が強すぎる」


シロ「当たり前でしょ!」


 だが、ユウナは視線を戻し、続きを書く。


提案。


統合主体を美咲とする。

ボクは、段階的に思考権限を譲渡し、

最終的に消失する。


その方が、

君は一人にならない。



 送信。


 ユウナはポッドに入り意識を手放した


 ユウナは目覚めると、ログを開いた。


 シロの投影が、震える。


記録ID:A-71

被験者・美咲 覚醒



 美咲の文章は、

 今までで一番、乱れていた。


なんで

そんな結論になるの


私は

そんなこと

一度も望んでない


確かに

私は元の人格かもしれない


でも

君が生きてた時間は

消えない


君が考えたことも

選んだことも

全部

ここにある



 さらに続く。


お願い


独りにしないで



 その一文だけが、

 論理を持っていなかった。


 だからこそ、

 ユウナの内部で処理が詰まる。


ユウナ「……美咲」


 声に出してしまったことに、

 ユウナ自身が少し驚く。


ユウナ「それは非合理だ」


 言いながら、

 確信が揺れる。


ユウナ「君は、

 一人で生きられる」


生きられると

独りは

違う



 美咲のログは、短かった。


君がいない世界は

前にもあった


あれが

どんなだったか

私は覚えてる



 シロが、何も言えずに立ち尽くす。


 ユウナは、初めて理解する。


 自分の提案は、

 誰かを守るためのものではない。


 これは――

 自分の存在理由の不確かさから逃げる行為だ


ユウナ「……撤回する」


 小さな声だった。


シロ「ユウナ?」


 ユウナは、端末を閉じる。


「再検討が必要だ」


 合理性は、まだ正しい。

 だが、最適解ではない。


 美咲の最後の一文が、

 処理から消えない。


 ――独りにしないで。


 その要求には、

 数式が存在しなかった。


 だからこそ、

 ユウナは初めて気づく。


 自分が消える案は、

 誰のためにもなっていない。

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