草原の旅団
南の森はドルムンガンド王国から5日ほどでたどり着く場所にあり、ルミナで知らない人はいない場所となっていた。ドルムンガンド王国では新米冒険者は首都ルミナを出発し南の森へ向かう道中でスライムやラビット、ワイルドラビットなどの様々なモンスターを狩りながら進むと南の森へ向かうまでにレベル12~13までに上がり南の森での狩りを進めることでルミナに帰還するまでにレベルが17~19までに上がる一種のシステム化しておりドルムンガンド王国の新米冒険者はどの国の新米冒険者と比べるとかなりレベルの高い状態にある。
また貴重な素材などをルミナの街にもたらした "交易都市”と言われる所以の一つでもあり、新米冒険者の登竜門的な場所となっている。
色濃く緑が映える名もなき森”南の森”、空を覆い隠すほどの木々が日の光でより一層に緑の輝きを増してその美しさを際立たせている。冒険者以外は一切立ち入らないこともあり静けさが際立ち不気味さも漂わせている。
「なあ、レオンそろそろ帰らないと期限に間に合わないぞ」と声を発したのはシモン・ガルムだった。
「そうだな、まさか強化ゴブリンがいるとは思わなかったから思わず欲張って狩りを進めてしまったのは良く無かったかもな」と笑いながら話したのはレオン・ロックハートだった。
「でも、私だけ思ったよりレベルが上がらなかったのは何故だろう?」悔しそうに話したのアリシア・ルミエール
「ホワイトメイジは僕のソーサーラーと比べると貴重な存在だから上がり方が違うのかもしれないよ」とシモンはアリシアを慰める。
「そうだよ、帰ったらギルドで確認しよう」とレオンが言う。
「ナイトのレオンはレベル21まで上がって見違えるくらい強くなって羨ましいよ」と笑いながらアリシアが言った。
「まぁ、飯食ったらルミナに向かおう」とレオンが言う
草原の旅団の3人が3時間ほど歩くと南の森の出口が見えた。その時、アリシアの守護の刻印に反応した。
「敵が近づいているよ」とアリシアの声が響く
「方角は?」レオンが聞き返す
「左手の方角から、しかもかなり強力」緊迫した声とともにアリシアは防御系スキル
祝福の加護を使用した。レオンとシモン、アリシアの周囲が光り輝き3人を包んだ。
それと同時に凶暴な音が森の静寂を引き裂き、それは風の旅団の前に現れた。
「ブラッドベア!!」シモンが叫ぶと同時にアースウォールを詠唱した。
アースウォールはブラッドベアの前に立ちはだかり行く手を阻んだかのように見えたが次の瞬間アースウォールは砕け散るとともにブラッドベアが襲い掛かってきた。
レオンは挑発すると同時にブラッドベアの攻撃に備えた。シモンとアリシアは距離をおく。続けざまにシモンは黒炎の刃を詠唱した。直撃はしたがかすり傷すら負うことなく鋭いブラッドベアの爪がレオンの青銅の盾を引き裂いた。
レオンは飛び退くと同時に盾を捨てた。その腕から血が流れ落ちた。
「逃げるぞ!」レオンが叫ぶ
「アリシア!レオンの回復を!レオンは耐えて」と、シモンが怒鳴り声をあげると同時に持てる最大呪文の詠唱を始めた。
アリシアはレオンに福音を詠唱しキズを回復した。レオンは一閃、ブレイクなどの武器スキルを駆使しながら立ち回っているが既に長剣が折れそうだった。
*
黒炎が立ち上がると同時に稲光が前方に見えた。
「雷霆の槍!!」リアの声が響く。
「カンナ!索敵!」ロイが叫ぶ
「もう、やってるよ!!」
美鶴は咄嗟に身体強化スキルを発動しながら飛び出していた。ダブルストライクで更に加速し、雄たけびを上げた。
一瞬届いたようだが反応がない
「ダブルストライク!!」と一気に加速する。
「私を置いていこうなんて10年早いんだよ!」カンナが瞬足で追いついてきた
美鶴はさらに雄たけびを上げた
戦闘している魔物はこちらに気が付いた
「ブラッドベア!!」と美鶴が叫ぶと
「なんであんなのがマジでいるのかね」とカンナが毒を吐く
「ダブルストライク、ツインシャドウ」スキル連発しブラッドベアに仕掛けた
「旋風双刃!」ブラッドベアを容赦なく切り刻むカンナ
しかし、ブラッドベアの攻撃の手は緩むことなく二人に襲い掛かる
ロイがブラッドベアの攻撃を受け止めに目の前に突然現れる。
ロイのスキル「聖なる守護」は味方の身代わりになるスキルで二人との差を瞬時に埋めたのだった。
大きな叫び声と共にカイト・ヴァンが両手斧を上空から振り下ろした。
「スタンプ!!」ブラッドベアの足場を崩した。
カイトはスキル「脱兎」で追いついてきた。
「アニキ遅い」とカンナが不満を漏らす
「お前たちみたいに器用でないんでな」
4人の足元が光輝くミラ・ベルデの祝福の加護で4人の防御が強化された
「魔力集中!」リアの足元に魔法陣が現れる
「黒炎の嵐!」杖を振りかざすと同時に前衛4人は飛び退いた。
リアの魔力集中は次の攻撃魔法を3倍にする強烈なスキルだ。ブラッドベアにもろに直撃し激しい爆風が巻き起こった。
「直撃したよね?」リアは目を丸くした。
ブラッドベアは確かに傷を負い深手負っているにも関わらず平然と立っている。
「挑発!光刃剣」とロイは止めを刺すべく、剣はブラッドベアの正中線を真っすぐに捉えたはずだった。しかし、ブラッドベアは血しぶきを上げながらロイに反撃をした。
「鉄壁防御!!」と咄嗟に受け止めたのを見て
カンナが双刃剣、カイトがダブルスマッシュ、そして美鶴は身体強化スキルで上空に高く飛び上がりダブルストライク+ツインシャドウの攻撃を一斉に加えた。
ブラッドベアの右腕は千切れかけていたがブラッドベアはそれでも反撃を止めずに両腕を振り回した。美鶴、カンナ、カイトは意表を突いた攻撃に吹き飛ばされた。
ロイはかろうじてアイギスの盾で防いでいた。
次の瞬間目を奪われたブラッドベアは両腕を振り回した際に千切れた右腕を左手に持ちロイに襲い掛かっていた。
「ナビ鑑定!!」と咄嗟にナビを懐からだした。
「美鶴!あれはヤバいよ!強化ブラッドベアだよレベル60?とかになっているよ、しかも強力な魔力石を体内に取り込んでいるみたい」
「ばっかじゃないの?!!そんなのいるわけ無いでしょ!!」カンナが叫び散らす
「でも、僕の鑑定は間違ってないよ・・カンナ」
「いずれにしろ我々もミイラ取りがミイラになりかねん状況だから、打開しないとな」カイトは口元から血が流れていた。
*
南の森は新米冒険者の良き狩場であり、ここで採れた素材は値割れをしないことで新米冒険者を国を上げて支えている。
他の国から訪れる者は馴染みのある料理の値段の高さにことごとく辟易するがそれを理由にルミナでは便宜図ることは御法度になっていた。
そんな良き狩場が死線の最前線になっているとは誰も思わない。
静かに口ずさむリア・ノアール
「エルドラドに棲まう偉大なる精霊たちよ我が名はリア・ノアール。
我が声に耳を傾け我が声を聞き届けよ、そしてその偉大なる眷属の力を我が身に宿し、その大いなる力を示せ。」リアが詠唱を始めると大気に魔力と分かる大きな渦が目に見えた。
その大きな魔力の渦はリアに集まっていく。
「リア!何をするの!!?」ミラが切羽詰まった声で叫ぶ。
リアはにこやかに微笑む。
「こんな所で無駄死にするきかよ!」カンナが叫ぶ
「大いなる力はもう止められない。みんな今までありがとう」と微笑みながら言う。
「メテオ・・」
「やめろー!!」美鶴、レオン、カイトが同時に叫んだ
ストップ
静かに遠くから聞こえた声はリズムを奏でるような声でそれを告げた。
白いローブを纏い裾は鮮やかな赤で彩られていた。
錫杖にも似た豪華な杖を右手に足音すら立てずに女が歩いてくる。
俺の目の前はモノトーンになっていた。止まった。時の流れを止め、全ての時間が止まっていた。
「何やら騒がしいと思って来てみれば、修羅場ではありませんか」心地よく耳障りの良い音が聞こえた。
声の主はリアの前に立ち止まると「メテオバーストを使った所で事態は悪化するだけでしょ。いずれにしろこの魔力玉は収まりがつかないから貴方は少し寝ていなさい」と言うとリアの額に人差し指を当てて”スリープ”と言うとリアは眠りに落ちた。
「さてさて、このブラッドベアは一体どうしたんでしょうね?」左手を腰にあてて女は飽きれていた。
「ハーミット様!それは強化ブラッドベアです。体内に魔力石を取り込んでいます」
とナビが告げた
「へぇ!この状態で話せるとは驚きです。どなたかは存じませんが助言を感謝します」
「ふ〜む?たしかに歪な魔力を感じますね。」ナビにハーミットと言われた女性は答えた。
ハーミットはブラッドベアの体を豪華な杖でなぞっていった。
「ここですね!」と子供が大事な物を見つけた時のような軽快なリズムで言う。
ハーミットが杖を離すと宙に浮いたままだった。ハーミットは「ダークハンド」と呟くと両手をブラッドベアの体内にめり込ませていった。
”ずずずずずずずずず”と言う奇妙な音を立てながらハーミットはブラッドベアの体内から両手を出した.。その手には見た事のない大きな魔力石が高々とハーミットの頭上に掲げられていた。
ハーミットは満面の笑みを浮かべていた。笑みと言うにはあまりにも妖艶そのものだった。
「さて、精霊たちよ、折角集まって頂いたのに申し訳ありませんが術者が詠唱続行不能となったため帰って頂けないでしょうか?」
大気にあふれた精霊たちがざわつく感じがした。
「後ほど、八聖剣が一人。悠久の魔女ローズ・ハーミット自ら精霊王に謝罪に参ります故、この場はお引き取り願います。」
ざわついていた精霊たちの気配が消えた。同時にモノトーンの世界から色鮮やかな森に戻った。目の前に立っていたブラッドベアは崩れ落ちた。
俺はそれを反射的に悟ると気を失った。




