謁見
前回までのあらすじ
草凪美鶴は、異世界に転移して南の森で獰猛なモンスター「ブラッドベア」に襲われ、逃げ延びた後、強化ゴブリンとの戦闘で急成長を遂げた。
美鶴の話を聞いた冒険者ギルドでは、彼女のスマホに宿る「ナビ」と呼ばれるチャラいアニメ風のキャラクターが注目を集める。ナビは美鶴の戦闘経緯を映像で再現し、ブラッドベアや強化ゴブリンの脅威を明らかにする。特に南の森にブラッドベアが現れた事実はギルドに衝撃を与え、ギルドマスター・ガルドは調査のため南の森への接近を禁止し、総統府へ報告に向かう。アレックスとリサもそれぞれ対応に追われ、美鶴とナビはガルドに同行し、さらなる事情聴取を受けることになる。
「しかし、大変な事になったね。」と奥の部屋から出て来た女が言った
「ルイスさん」とリサは心配そうに見上げた。
ルイスと呼ばれた女性は身長は2mはあろうかと思える大女だった。
前職はその名を知らぬ者はいなかった。
一説によるとルイスはレオニス・ドルムンガンドの剣をその拳で受け止めたなどと言われている強者だ。
「ええ、草原の旅団が依頼を受けるかたわらレベル上げをしているはずなのでとても心配です」とリサは神に祈るかのように両手を合わせた。
ルイスはカウンターを出ていき、柏手を打った
パン!!!と空気を震わすほどの柏手に皆の注目を集めた。
「あんた達、仕事は沢山あるんだからね。それとも臆してここで引きこもるかい?」
「マスターに少しは恩返ししようという気持ちはないのかい?」と建物が揺れたと感じるような大声で話した。
「初代、星読みの巫女はこう言い残した。転移者現れるとき混沌が訪れる」と言い伝えを残している、1000年以上前の伝承をそのまま現実の物にあんたたちはさせるのかい?」
「ちがうだろ?私は少なくとも嫌だね。私だったら死に場所は戦場だね」
「ルイスさん」リサは言う
誰かが「そうだ」と言うとルイスさんの言うとおりだと言う掛け声と共にカウンターに駆け寄りリサから仕事の注文を奪い取っていった。
湿った空気が漂っていたギルドに一気に埃っぽさと静けさが訪れた。
その頃、
美鶴はガルド・ヴァレンと共に総統府に向かっていた。
連絡を受けた王国騎士団が早馬を出して迎えたのだった。
総統府に着くと控室に案内され、そこで待つように指示をされた。
その間、美鶴は気まずい雰囲気を何とか打破しようとし、ガルドに話しかけた
「ガルドさん、俺、なんか不味いこと話しましたかね?」ガルドの顔を覗き込むようにして聞いた
「ん?ん~ブラッドベアと言うのはレベル40相当なんだが、王国騎士団団長がレベル97と言えば何となく想像がつくかな?」
「え??そんなやばい魔物なんですか?」
「ちなみにアレックスを仕えに出した王国騎士団副隊長はアレックスの双子の弟であの若さでレベル40だそうだ」
「アレックスて双子の兄弟がいるんですか?」と驚くと
「美鶴は面白いな」と笑われた
「あ、そうですよねアレックスってまだ、若いですもんね」
「ああ見えて26歳なんだけど弟がレベル40て事で相当比較されてアレックスもあんな性格でも苦労しているんだ」
「それに、ブラッドベアも問題なんだがあの近辺で”草原の旅団”と言うPTが活動していて保護、救出を兼ねての訪問なんだ」
「草原の旅団」と繰り返すと
「美鶴と同じレベル帯なんだけど少し変則PTでね、盾使いと攻撃魔法と回復魔法と言った組み合わせで間違って遭遇する事があったら一大事だから手を打たないとと思ってね」
「最悪、あれですよね」と俺は言葉を濁した
「そうだ」頭を抱えるようにガルドは短く答えた。
*
部屋をノックすると同時に扉が開いた。
「レオニス・ドルムンガンド国王陛下と王国騎士団団長フランク・バヤール様がお会いになれるからくれぐれも失礼の無いようにお願いいたします」
迎えに来た給仕は深々と頭を下げた。
着いてくる様に言われ給仕の後ろに着いて長い廊下を突き進むと大きな白い扉があった。扉はヨーロッパの美術史に出て来そうな豪華なレリーフが施されその白さがとても品が良かった。
扉の前には門兵が二人微動だにしないで立っている様は美しい扉により厳格な雰囲気を漂わせていた。
3人が扉の前に立つと大きな白い扉は静かに開いた。
テレビでみたレッドカーペットが引かれていた。その上を3人は突き進むと先を歩いていた給仕がゆっくりと静かに立ち止まり見上げると玉座と思える所に男が一人座っており、その脇には漂う雰囲気が尋常ではない騎士が真っ白な甲冑をきて仁王立ちしていた。
給仕がお連れしました、と言うと膝まづいた。ガルドもそれに習ったのを見て俺もそれの真似をした。
脇の白い甲冑を着た男が給仕に声をかけた。
「キフ下がっていいですよ」白い甲冑を着た男が尋常ではない雰囲気からは想像もつかない優しい声で話しかけた。キフと呼ばれた給仕は跪いたまま更に頭を下げその場を去った。
「こちらに居られるのがレオニス・ドルムンガンド国王陛下。私は王国騎士団団長フランク・パヤールです。」とフランク・パヤールが静かに優しく話しかけてきた。
「これ!私と一緒に同列に紹介するなと何回言えば分かる」と紹介を受けた陛下が笑いながらフランク・パヤールに声をかけた
「手短にって事です」と屈託のない笑みで答えて見せる。
「これ、私を手短に紹介するでない」と笑いながら言う
「では、効率良くと言ったところでしょうか?」と笑顔で返す
「まぁ、よい。」笑顔でこちらに向き直る。
「さて、ガルド久しぶりだか元気にしていたか?」とレオニス国王は聞いた
「は!陛下におかれましてもお元気そうで何よりでございます」
「ん~堅苦しいのは止めよう、ガルド。知らぬ中でもあるまいし」
「では、お言葉に甘えまして。元気です」と笑顔で答える
「話は大体聞いている、そこの者が転移者で南の森でブラッドベアに遭遇したそうだが
、それで合っているか?」レオニスは言う
「はい、そうです」
「ただ、見たと言うだけでは調査隊は派遣出来ないから具体的な何かは無いのか?」レオニスは頬杖しながら言う
「はい、証拠ならあります」
「そうか、では確認させてくれ」
「美鶴、ナビを頼む」と静かに言う
「はい」と言ってスマホを出すとナビがポップアップしてきた。
相変わらず、にやついた顔にサングラスをかけている。
「国王陛下ならびにフランクさんご機嫌用」とサムズアップしてみせた。
俺は何とも言えない脂汗が全身から吹き出るのを感じた。
「なんと!珍妙な!それは精霊か?」レオニスは腰を浮かして驚いた。
「精霊ではないよ。何者か?は正直僕にも分からないからね」
「そこの者がブラッドベアに遭遇した言うが何か証拠でもあるのか?」大きな声でレオニスは聞いた。
「じゃ、効率よく映像を流すね」とサムズアップしてみせる。
そして、俺のハレンチな姿の上映会が始まった。ずっと下を向いたまま強化ゴブリンとの映像まで流れ終了した。
「これはなんだ?」とフランクは驚きを隠せない様子で聞いた。
「えっと、これは映像と言うやつでして、あった出来事を記憶して後から確認・・」と2人ともポカンとしている。
「美鶴!駄目だよ。ドルムンガンド王国は最近電気が開通したばかりだからこの手の新しい技術には詳しくないんだよ」
僕が説明するよとナビが分かりやすく3人に説明をした。どうやら、映像と言う言葉も初めて聞いたようだが理解をしてくれた。にやついて、ため口でいつもハラハラさせるがこの時は頼りになった。
「要するに今、起きているこの瞬間を映像として記録しておいてそれを後からもう一度確認する事が可能であると言う事で良いんだな?」とフランクが聞くと
ナビがフランクが今話した部分の映像を流した。ナイス!と俺は内心思った。
「3人とも信じて貰えたかな?」とナビが笑いながら言う。
三者三葉呆気に取られていたが納得してくれたようだ。
”note”で「脱サラ冒険者、運命の人になる」のあれこれを書いています。
マガジンにしていますので一度遊びにきてもらえると小躍りします♪
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