暗雲
前回までのあらすじ
草凪美鶴は、異世界エルドラドのドルムンガンド王国の首都ルミナに到着する。荘厳な城塞都市の石壁と巨大な戦士像に圧倒されながら、門で衛兵に呼び止められる。転移者であるため身分証を持たない美鶴は、衛兵の指示で待機中、ギルドのメンバーであるアレックス・ミューラーに迎えられる。アレックスのハイテンションな歓迎に戸惑いつつ、ルミナの賑やかな交易都市の雰囲気に引き込まれ、ギルドへと案内される。
ギルドでは、落ち着いた雰囲気のギルドマスター、ガルド・ヴァレンと対面。ガルドの顔や話し方が亡魂の兄にそっくりで、動揺した美鶴は前世の記憶を尋ねるが、ガルドはドルムンガンド生まれと答える。兄の死を語る美鶴に、ガルドは「弟が増えても困らない」と温かく迎え入れ、家族のような絆が生まれる。
翌日、アレックスの案内で身分証発行と能力鑑定のためカウンターへ。リサの指示で石板に手を置くと、レベル17、職業「ツーハンドリーパー」、HP1000、MP300、スキル「ダブルストライク」「ツインシャドウ」「身体強化」「雄たけび」などが表示される。しかし、冒険者のダストに絡まれ、胸ぐらを掴まれる騒動に。怒った美鶴が「雄たけび」を発動し、ギルド内が揺れるほどの衝撃を与える。ダストは気絶し、駆けつけたガルドに減給かボランティアの処分を言い渡される。美鶴も同罪として、アレックスと共に一週間のボランティアを命じられる。騒動を経て、美鶴はルミナでの新たな一歩を踏み出す。
「いや~すみません。僕が弱っちくて、美鶴に迷惑掛けてしまいましたね」アレックスが頭をかきながら本当に申し訳なさそうに言う
「そうですよ、アレックスさん男の子なんだからしっかりしないと」とリサが言う
「面目ないです、リサさん」
「ダストさんは新人虐めが好きと言うか、なぜか毎回やるんですよね」
「幸いと言っては何ですがダストさんに歯向かうような新人さんはいないので公にはなっていなく、マスターの耳に入る程度だったんですけど、今回改めてマスターの目に止まってしまったのでダストさんも懲りると思いますよ」と笑顔で言う
「どうして、耳に入るだけだったんですか?」
「マスターの部屋はマスターの魔法で騒音や盗聴されない特別な魔法が施されているからなんだよ」とアレックスが言う
「そうなんだ」と軽くいうと
「いやいや、そこは驚く所でしょ?マスターの固有魔法で盗聴も騒音も届かない部屋に
あの”けたたましい音”が届いたんですから」両手を腰にあてて美鶴の顔に接近して話す
「そうなんだ」と両手を前にだしながら苦笑いをした
「こほん」リサが咳ばらいをした
「では、続きをやりましょうか?アレックスさん」
「あ、すみません。リサさんお願いします」
名前:草凪 美鶴
職業:ツーハンドリーパー
レベル:17
HP:1000/1000
MP:300/300
魔法:キュア(初級)
武器スキル:ダブルストライク、ツインシャドウ
スキル:身体強化、雄たけび 3/3
草凪美鶴さんはツーハンドリーパーと言う事で聞きなれれない職業ではありますが
過去にいなかったと言うだけで小刀の二刀流使いが片手斧になったと言う理解で良いと思います。冒険者と言うは活躍している職業や花形と言われる職業に憧れますし、さきほどのダストさんの職業は喧嘩師と言う職業です。格闘家の廉価版といった所です。
もう少し、鍛錬されれば格闘家にも転職出来ると思うのですが・・
すみません、余計な事を言いましたね。草凪さんの二刀片手斧が小刀の二刀の廉価版と言う話ではありませんので気にしないでください。
過去に片手斧の二刀がいなかったので珍しいと言う話しです。
「いずれにしても使う人次第ってことさ美鶴」アレックスが笑顔で言う
「ああ!}と俺は笑顔で頷いた。
リサが続けて話す。
他にHPがレベル17にしては高いです、職業的にはアタッカーの部類に属すると思いますがMP保有しているあたりは非常に珍しいと思います。
先ほどのスキルもそうですが初めて耳にするものです、参考までに後ほど聞き取りを行わせてください。
俺は頷いた。
「転移されてから間もないと聞きますがどれくらい経過されていますか?」
「6日くらいかな?」手を顎にあてながら言う。
周りの冒険者がみんな驚いていた。アレックスも”え?”みたいな顔をしている
「ちなみにですがモンスターとは戦闘しましたか?」とリサが聞く
「ああ、転移直後ブラッドベアって獰猛なモンスターに襲われて逃げたけど
その後はレベル13くらいまで適当なモンスターと戦ったかな、途中で強化ゴブリンと戦闘して一気にレベル17まで上がった感じかな」とこれまでの戦闘経緯を話すと周りに動揺が走るのが分かった。
「美鶴、ブラッドベアにどこで遭遇したの?」アレックスがひきつった顔で尋ねてきた
「南の森かな、そこの森に転移されたんだよね」パンツ一丁で転移された話は流石に出来なかった。
「その話が本当なら、調査隊を出さないと!僕、マスター室に行ってきます」と言いながら
”どけてください”冒険者をかいくぐってアレックスはガレンのいる部屋に走って行った。
「それから、強化ゴブリンにも遭遇したということですが転移されてから間もないのに
随分、お詳しいんですね」とリサは訝し気に俺をみる
「ああ、ナビに教えて貰ったんだ」
「ナビって何ですか?」と不思議そうに聞く
俺はスマホを出してナビを皆に見せた。
スマホを出すと相変わらず、チャラいアニメ風のキャラがポップアップしてきた。サングラスかけて、ニヤッと笑ってる。
「やあ!みなさん初めまして美鶴の相棒ナビです」とサムズアップしてみせた。
「なあ、ナビ、俺、土地勘ないから少し皆に説明してくれないか?」
「OK!いいよ」またもやサムズアップしてみせた
「マスターをお呼びしますのでお待ちください」リサもマスター室に行った。
ギルドマスターガルド・ヴァレンが美鶴たちの輪に加わるまで冒険者はひそひそ話を止めなかった。なんか不味い話でもしたかな?と思いながらガルドが来るのを待った。
マスター室から3人が出てくると同時に静まった。
ガルドがテーブルで話すことを提案したのに釣られ冒険者たちとガルド、アレックス、りさが美鶴を囲むように円になった。
リサとアレックスはメモを取る体制になっていた。
「君がナビか、詳しく話を聞かせてくれるか?」と険しい顔でガルドが言う
「OK、いいよ」と相変わらずチャラい感じで話すから俺はどぎまぎした。
ナビはこれまでの経緯を洗いざらい説明した。パンツ一丁で放り出された話までしたからこっぱ恥ずかしいったらありゃしない。
「なるほど、ブラッドベアが南の森に迷い込んだんだね?」とガルドが尋ねると
「うん、そうだよ。映像をみせようか?」
「映像?」とガルドが聞く
「じゃあ、見せるね」とナビが言うと宙に映像が出た。
しかも、パンツ一丁で追いかけ回されている映像が放映されている。
俺は焦っただけでなく珍しく赤面して手で顔を覆った。
しかし、俺の反応とは裏腹に冒険者は皆一様に口に手を当てながらみている。獰猛なブラッドベアが襲いかかる映像をホラー映画でも観るかのように息を殺して観ている。
ギルドマスター・ガルド・ヴァレンは静かに観ている。アレックスは両手で髪の毛を挙げて頭を抱えるようにして観ている。リサに至っては両手で目を覆い隠すように観ていた。
「分かった」ガルドが静かに言う
「強化ゴブリンの映像とやらもあるのか?」とナビに聞く
「うん」とサムズアップしてみせると宙に映像が流れた
冒険者に動揺が走る。ゴブリン3体の内一体が魔力石をつけた槍を持ち強化ゴブリン化している、たった一人で4体を殲滅する姿は冒険者たちに取っては刺激が強すぎた。
「やべえだろ!これ!」と誰かが言った。
美鶴に対して言われたのか強化ゴブリンに放たれた一言なのか、あるいは両方に言われた事なのかは不明だった。
ガルドは溜息をつくと
「分かった。ナビ有難う」
「いえいえ、お安い御用で」と軽口で言う
「皆に伝えておく。調査が完了するまで南の森への接近は禁止だ。この指示に背いた者は向こう一年、冒険者資格を停止することを付け加えておく。」深刻な顔をして話す。
「リサ、私は総統府にこれを伝えてくる。たしか南の森付近の依頼がいくつかあったと思うが調査が終わるまで凍結しておいてくれ」
「かしこまりました。マスター。」
「それと、アレックスはドルムンガンド騎士団副隊長にこの話を伝えてくれ」
「かしこまりました。マスター」とアレックスは頭を深々と下げた。
「美鶴は私と総統府へ出向てくれ」
「俺ですか?」
「美鶴と言うよりナビに用がある」と言われ論より証拠だなと納得した。
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