表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

城塞都市ルミナ

前回までのあらすじ


草凪美鶴は、セーフハウスを出て3日目の旅を続ける。ブラッドベアのような強敵に遭遇せず、順調に進み、レベル13に到達。レベル10で新スキル「ツインシャドウ」(4倍の身体強化による4連撃)を習得し、戦闘力が向上。ナビから、ドルムンガンド王国の首都ルミナが交易都市であり、国王レオニス・ドルムンガンドが「八聖剣」の一人として聖剣を振るう強者だと聞く。ルミナは勤勉で誠実な国民性と、最近の発明「電気」で知られる。


3日目の朝、森の奥で強化ゴブリンの群れに遭遇。魔力石の影響で強化されたゴブリンたちは、赤く光る目と鋭い槍で襲いかかる。美鶴は「身体強化」と「ダブルストライク」で素早く2体を倒すが、魔力石を埋め込んだ槍の魔法攻撃に弾き飛ばされ、MPが100減少。「雄たけび」でゴブリンを怯ませ、「ツインシャドウ」で残りを一掃し、戦闘を終える。倒したゴブリンから魔力石の欠片(MP10回復)を入手するが、身体強化の反動で軽い痛みを感じる。


レベル17に上がり、HP950、MP200の状態で旅を再開。街道からルミナの輪郭が見え始め、ナビと軽口を叩きながら街を目指す。強い敵の予感に警戒しつつ、ルミナでの休息と情報収集に期待を膨らませる美鶴。ツーハンドリーパーとしての冒険が、新たな局面を迎える。

ルミナの外観は、城塞都市そのものだった。

荘厳かつ堅牢そのものだった。高くそびえる石壁は、風雨に耐え抜いた灰白色の岩で築かれ、

表面には苔や蔦が這うことで長い歴史を物語っていた。

門の両脇には巨大な石像が立ち、剣と盾を持った戦士の姿がどんな侵入者も拒む威圧感を放ち、

街を守る決意を象徴していた。

街の堂々した姿に目を奪われ疲れも消し飛びそうだった。


美鶴は門の前にたどり着くと二人の衛兵に呼び止められた。

「冒険者か?」

「はい、そうです」緊張した声で言う

「身分証はあるか?」

「身分証?いえ、転移者なのでありません」

二人の衛兵は顔を見合わせた。

「少し、待て!」と一人の衛兵が片手を出し止まれの合図をし詰所と思しき所に駆け寄り、他の衛兵と話している間もう一人の衛兵は俺の前に仁王立ちしていた。

中にいた衛兵が「え~~!」と素っ頓狂な声をだして顔を覗かせて俺を見ていた。

その顔は狐に包まれたような顔をしていて滑稽だった。

5分くらいすると衛兵が戻ってきた。

「いま、迎えが来る。もう少し待て。」と険しい顔で言われた。


迎えが来るって何か逮捕されたりするわけ?マジで怖いんだけどと頭の中が駆け巡る。

いくら、ブラック企業サバイバーと言え未知なるタスク処理は持ち合わせていないわけで、

未知なる恐怖に緊張感が増した。

衛兵も気を使って何か声をかけてくれれば良いもののそんな事は無く、衛兵とにらめっこが続いた。

逮捕、連行されるならこの場でされるよな?普通?って事は本当に誰か迎えに来るのか?

そう思うと安心して何処か座れる所を探して”迎え人”を待った。

待つこと1時間くらい経っただろうか、疲労からくる睡魔でうつらうつらしていると



「どの人ですか?転移者って?」と息を切らして衛兵と話す声が聞こえた。

声が聞こえた方に俺は顔を向けるとその人物と目があった。

「うおおお!」とその人物は両手を掲げ、さらに勢いよくこちらに走ってきた。

「あなたですか?転移者って?」

凄いなビックリだな、 転移者って本当にいたんだな~~僕が生きている間にお目にかかれるとは思っても見なかったよ。

俺の手を両手で握りしめ上下にぶんぶん振りながら。興奮している。

「僕はね、アレックス・ミューラー。君の名前は?」一気にしゃべり倒す。

「えっと、草凪美鶴」

「くさなぎ みつる って言うのか~~!神秘的だな~~」

「なんで くさなぎみつるって言うの?ファンタステッィック!」と謎な質問までしてきた。

興奮しているアレックスの肩をポンポンと衛兵が叩く。

「アレックスさん、申し訳ないが余りこの辺りで話を進めるのは周りの人に見られる可能性もあるのでギルドの方でお願い出来ますか?」

「おおお!そうだね!僕としたことが、うっかりしてたよ」大きな声で言うと両手を上げ衛兵に抱き着いた。

「じゃあ、ミツル、ギルドへ行こう」と俺の手をしっかりと握った。

ふんふんふん♪

アレックス・ミューラーは珍妙な鼻歌を歌いながらスキップしている。

城門をくぐってからずっとこの調子だ。

東の交易都市と言われるだけあって人で溢れている。商人たちの威勢のいい呼び声や買い物客の笑い声が響き合う。色とりどりの衣装をまとった旅人や職人が忙しく行き交い馬車の車輪が石畳を鳴らし、鍛冶屋の金槌のリズムが遠くから聞こえてくる。

アレックス・ミューラーのハイテンションに引っ張られ、美鶴はルミナのギルドへと足を踏み入れた。

石造りの建物は外観同様、内部も重厚で、広々としたホールには冒険者たちの活気が響き合う。壁に飾られた武具や魔獣の角が、ギルドの歴史を物語る。

アレックスはスキップしながら「こっちだよ!」と言いながら奥へ案内した。

アレックス・ミューラーは扉の前に立ち止まり深呼吸して「コンコン」とドアを静かにノックした。ドアを開けて中に入ると同時に美鶴も入るように促された。

「マスター!連れてきました」気を付けをした姿勢で机の上で書類に目を通している男に声をかけた。

マスターと呼ばれた男は顔をあげて静かな眼差しで美鶴に目をやった。

「君か?転移者と言うのは?」

「はい、そうです。草凪美鶴と言います」

「そうか、私はギルド・マスターのガルド・ヴァレンだ。よろしくな」

落ち着いた雰囲気で話しかけてくる。

「まぁ、立ち話もなんだからソファにかけてくれ」

「アレックス君は何か飲み物でも出してくれ」

「お腹は空いていないか?転移者てのは大概腹を空かせているのが多くてな」笑いながら話しかけてくる。


驚いた!名前こそ違えど不慮の事故で亡くなった兄にそっくりだ。

柔和な話し方と良い、人に対しての気遣い。

兄は俺に良く言っていた「父さんや母さんを悲しませてはいけない、だから立派な社会人にならないと

駄目だぞ美鶴」ブラック企業に就職してからも「ご飯は食べているか?夜更かしはしていないか?」と

保護者かと思うくらい俺を心配していた兄は「眉目秀麗」と言う言葉はあるが兄はまさに「秀麗名美」自慢の兄だった。

そんな自慢の兄はある日突然この世を去った。死因は自死だった。

俺には口うるさく言っていたのに自分は両親を悲しませる不幸をした兄を俺は責めた。

俺がマジマジとガルド・ヴァレンの顔を見つめているとそれに気が付き


「どうした?私の顔に何かついているか?」と不思議そうに聞いてきた。

俺はハッとなり一瞬逡巡したが聞くことにした。

俺が異世界転移したんだから異世界転生だってあるだろう?と思った。

「ガルド・ヴァレンさん、唐突な質問をして良いですか?」

「ガルドで良いよ大体”唐突”と言うのは予兆なくくるものなんだよ」兄とそっくりな笑顔で答えた。

「では、ガルドさん前世の記憶とはないですか?」

ガルド・ヴァレンは目を丸くし固まった。

「たしかに、それは唐突な質問だな、残念ながらそう言う記憶はないね」

「私はドルムンガンド王国で生まれ育った記憶しかないよ」と優しい笑顔で答えた。

俺は内心 そうだよな!そんな都合が良い話は無いよなと安心すると同時に残念に思った。

残念そうな顔が出たのか

「どうしてだい」とガルドは聞いてきた。

初対面の人間に話すのもどうかと思ったが兄の話をした。



「お兄さんの事は非常に残念だったね」と悲しそうに言った。

「まぁ、これも何かの縁だ私を兄だと思ってくれ」

「なんせ、我が家は9人兄弟で私はその長男!今更、一人弟が増えても困る事はないからな」大きな笑い声で俺を包んでくれた。

「え?なんの話ですか?」アレックスが飲み物と食べ物を持って戻ってきた

「ふふふ、秘密だ!大人の話だからな」

「えええ!ずるいですよマスター」

部屋は3人の笑い声で賑わっていた。

その日は疲れているだろうと言う事でギルドに備え付けてある宿舎で寝る事になった。

翌日からはアレックス・ミューラーの案内で手続きを済ませることにした。

「しかし、ビックリしたな~」脈絡なくアレックスが言う

「ん?なにが?」と聞くと

「いやいや、マスターがあんな大声で笑うなんて今まで聞いた事ないですよ、

気になって昨日なんか寝れませんでした。大事件ですよ! で?なんの話をしていたんですか?」身振り手振りで話す。

「それは大人の秘密って事で俺とマスターが大声で笑っていたって事で酒のネタにでもしてくれよ」

「知りたいな~いつか教えてくださいね」

「分かったよ」と作り笑顔で答えた

「それから、ため口で良いからね」

「OK」

「では、美鶴。そこで身分証の発行とステータスを視て貰うんだ」指を指した

視てもらう?と言いながらその方向を見るとカウンターに女性が立っていた。

女性の後ろにはショーケースみたいなガラス張りの大きな棚があった。

その脇の奥にも部屋が見えた。

カウンターの両脇にはセーフハウスで見た手をかざすと明かりが点くランプとそっくりなものが置いて

あった。カウンターの前では冒険者たちと女性が何やら盛り上がっていた。


「うん、冒険者にはそれぞれ”能力値”と言うのがあってその”その能力値”にあった職業を選ぶと言うのが一般的なんだよ。なので、そこのカウンターで美鶴の能力を視て貰ってどんな職業が適正か判断して貰うんだ」アレックスが言う

「へ~~」と感心していると

「美鶴の事なんだから、感心しないの」と笑いながら言う

「ちょっと、ごめんなんさいよ~」と冒険者間を割ってアレックスはカウンターの女性に声をかけた。

「リサさん、新人冒険者の草凪美鶴さんです。視て貰っていいですか?」とアレックスが話すと周りの冒険者は美鶴をキツイ眼差しで見た。

「かしこまりました。マスターから概ねお話を伺っています。」リサと呼ばれた女性はにこやかな笑顔で答えた

「では、草凪美鶴さん こちらの石板の上に両手を置いてください」と言うとリサは杖を後ろのガラス扉に軽く当てると同時に一瞬光った。そして、ガラス張りの扉から石板を出しておいた。

「え?そんな大事なものそんなところに置いているんですか?」

「ああ!これですか?特別な魔法がギルドマスターのガレン・ヴァレンさんによって施されていますので意外と安全なんですよ」と笑顔で答える

「そうなんですか?」

では、試しにこの石板持ってみてくださいと促されたので持ってみるが持ち上がらない

力を込めて更に持ち上げて見るが持てない、引いて見てもビクともしない。

「なんですか?これ?」狐に包まれた様な顔で言うと

「マスターの固有魔法なんですよ」とホラっと言いながらリサは笑顔で軽く持ち上げた。

どう見ても怪力無双には見えない女性が持ち上げるのだから”そう言う事なんだろう”と納得するしかなかった。

「では、石板の上に両手を置いて貰って良いですか?」と改めて笑顔で言われた。

言われた通り石板の上に両手をおくとパソコンのモニター画面みたいなのが宙に表示された。


名前:草凪くさなぎ 美鶴みつる

職業:ツーハンドリーパー

レベル:17

HP:1000/1000

MP:300/300

魔法:キュア(初級)

武器スキル:ダブルストライク、ツインシャドウ

スキル:身体強化、雄たけび 3/3



ナビが表示する画面とそっくりなものが宙にでた。

「へ!!なんだ?こりゃ!?」といかにも荒くれ者と言った雰囲気の冒険者が俺に絡んできた。

「だいたい、ツーハンドリーパーってなんだ?おめーみたいなヒョロヒョロした奴が冒険者が務まるわけねーだろ!!ああ!」と大きな声を出しながら俺の胸ぐらを掴んできた。

掴まれた手を離そうとするが物凄い怪力だ。

「ダストさん駄目ですよ、冒険者同士の喧嘩はマスターの一番嫌う所なんだから」とアレックスが止めに入る

ダストは「うるせえ」とアレックスと言って突き飛ばした。

アレックスは突き飛ばされ、床に倒れた。

俺は一瞬”カチン”ときた、後先考えず”雄たけび”を挙げた。

ギルド内にけたたましい雄たけびが響き渡り建物は地震のごとく揺れ響いた。

悲鳴を上げる物や耳を塞いで下を向く者、腰を抜かす者などさまざまだった。

ダストと呼ばれた男は白目を剥いて床に膝から崩れ落ちた。

奥の部屋からガルド・ヴァレンが飛び出てきた。

「何事だ!!」とガルドが大きな声で言う

リサがギルドマスター・ガルド・ヴァレンに事情を説明する。

「しょうもない奴だ!」と珍しく舌打ちをした。

「それから、美鶴お前もだ!」取り出した杖を鼻っ面を指した

「今度、ギルド内で同じ事したら水牢に処するからな!」怒った顔まで兄にそっくりだった

「申し訳ありません」と丁寧に謝罪をした。

ガルドは足元に崩れ落ちたダストに杖を向け振るとダストが宙に浮いた。

近くにあった柱に張り付けた。

「リサ、こいつが目覚めたら減給処分だと伝えてくれ。」

「それが嫌ならむこう一週間、ボランティアだと伝えてくれ」

「いずれか、了承しない限りこの水縄は解けないからなとも伝えてくれ」

「はい、かしこまりました」リサはお辞儀をした。

「あの、俺は?」とガルドに恐る恐る尋ねる。

ビックリした表情で

「そうだな、美鶴も同罪だからアレックスに付き添って貰って一週間ボランティアだ」と優しい顔で言って部屋に戻って行った。


”note”で「脱サラ冒険者、運命の人になる」のあれこれを書いています。

マガジンにしていますので一度遊びにきてもらえると小躍りします♪

https://note.com/mituyama/m/mbec04231de43 ←マガジン

他にもうだうだと雑記を書いてますのでそちらも是非ご覧ください<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ