冒険の始まり
前回までのあらすじ
草凪美鶴は、ブラック企業での過酷な残業に疲弊したサラリーマン。ある日、100均のリモコンを押した瞬間、「バチッ」という音とともに意識を失い、異世界エルドラドに転移してしまう。目を覚ますと、ヨレたパンツ一丁で森の中に放り出されており、ビルや電線のない、木々に囲まれた異世界の光景に困惑する。背中には硬い地面の感触、頭上には四枚の翼を持つ不気味な鳥が飛び、突然の状況にパニックになる美鶴。
茂みから現れた獰猛な「ブラッドベア」に追われ、必死で逃げ込んだ小屋で一命を取り留める。小屋は転移者用のセーフハウスで、結界によって守られている。安堵したのも束の間、小屋の中で見つけた自分のスマホが光り、チャラいアニメ風キャラ「ナビ」が現れ、話しかけてくる。ナビは異世界ナビゲーション・システムで、美鶴が「冒険者(仮)」として登録されたことを告げる。ステータス画面には、レベル1ながらHP1000、MP100という異例の数値や、「キュア」魔法、さらには「身体強化」スキルが表示され、女神の「恩恵」を受けている可能性が示唆される。
小屋で装備を整えた美鶴は、片手斧の適正値がSSランクと判明し、2本の片手斧を手にすることで「ツーハンドリーパー」という珍しい職業に就く。新たに「ダブルストライク」や「雄たけび」といったスキルを習得し、ナビの助けを借りながら、ドルムンガンド王国の首都ルミナを目指す。森を抜ける旅は危険だが、ブラック企業で鍛えた根性を糧に、美鶴は転移の謎を解き、生き残るため一歩を踏み出す。ツーハンドリーパー・美鶴の冒険が、今始まる!
セーフハウスを出て2日が過ぎていた。ブラッドベアの様なお門違いなモンスターに遭遇する事無く順調に旅は始まった。レベルも13まで上がり、レベル10でツインシャドウを習得した。
ステータス
名前:草凪 美鶴
職業:ツーハンドリーパー
レベル:13
HP:1000/1000
MP:250/300
状態:軽い疲労
装備:布の服、革の靴、古びたマント
武器:片手斧x2(適正値SS)
魔法:キュア(初級)
武器スキル:ダブルストライク、ツインシャドウ
スキル:身体強化、雄たけび 3/3
持ち物:魔力石(低級)MP20程回復、奈落の水袋、食料5日分
ダブルストライク:片手斧を2本同時に繰り出す。地上においては2倍のダッシュ力、空中においては2倍の重力補正。
ツインシャドウ:4倍の身体強化により1秒間に4連撃を与える技。
「なぁ、ナビ、このツインシャドウってなんでこういう名前になってるの?」
「ツインシャドウは4倍の身体強化によって他の者からは美鶴が二人に分身したみたいに見えるんだよね、まぁ、実際には美鶴が4連撃を一人で入れているんだけど、他人からは分身体と美鶴が同時に攻撃しているように見えるからだと思うよ」
「なるほど!道理で使ったあと体が痛いわけね」
「多用はNGかもね」クスクスとナビは笑った。
その日は魔物らしい魔物に遭遇することなく野宿する事になった。
*
空を見上げると星空が木々の隙間から覗く静かな夜。美鶴の野営地は、小さな焚き火を中心に広がっていた。パチパチと薪がはぜる音が響き、炎のオレンジ色の光が周囲の闇を柔らかく押し退ける。夜風が妙に心地よい。美鶴はビールが飲みたい気持ちになっていた。
明日には首都ルミナが見えてくる。今はビールの事を考えるより情報が必要だ。ナビに今、向かっているドルムンガンド国の首都ルミナについて教えて貰った。
「いま、美鶴が向かっているドルムンガンド国の首都ルミナは東の位置する、交易都市でヒューマンの国王レオニス・ドルムンガンド国王が統治していて国民性は勤勉で熱心、誠実なのが特徴だね、その甲斐があって最近では”電気”も発明されたしね。
彼は”東の理解者”と呼ばれていて、彼の持つ片手剣は聖剣とも呼ばれていて彼が一振りすると万の軍勢をも薙ぎ払うとも言われているよ。
「やべぇ~奴じゃん」
「美鶴!うっかり街でそんな事を言ったら不敬罪になるからね」
「はいはい、分かってますよ」
「レオニス・ドルムンガンド国王は八聖剣の一人なんだ」
「はちせいけん??」
「そう八聖剣とはこの世界エルドラドで認められた八人の人物を指して、彼らは”女神様の殉教者”とも言われているんだ」
「殉教者て女神様を守るための騎士みたいな?」
「うん、そんな感じで理解して貰えると分かりやすいかもね」
「レベル13の俺には想像もつかない様な強者がいるわけね」両手を広げおどけてみせた。
「ふふふ、美鶴は面白いね。」ナビは両手を口にあてて笑った。
「なんで?」
「普通の冒険者は”八聖剣”と自分を比較しないから想像もしないんだよね」
「ん?神格化されているって事?」
「まぁ、そんな感じだね」クスクスとナビは笑う。
「明日にはルミナの街が見えてくるだろうからもう一息だね」ナビはサムズアップしてみせた。
「ああ、そうだな」俺もサムズアップしてみせた。
*
セーフハウスを出て3日目の朝、美鶴は森の奥深くで目を覚ました。薄暗い木々の隙間から差し込む朝日が、古びたマントにまだらの光を落としていた。軽い疲労が体に残るものの、レベル13に到達したことで自信が湧いていた。ツインシャドウの習得以降、戦闘での動きは格段に鋭くなっていたが、その分、身体への負担も感じ始めていた。
ナビが言うには今日はいよいよルミナの街が見えてくると言うから楽しみだ。
森の小道を進む中、突然、地面がわずかに揺れた。美鶴は即座に身構え、両手に握った片手斧を軽く振ってみせた。
ナビが警告を発する。「美鶴、気をつけて! 近くに何かいるよ。魔力の波動が…ちょっと強いかも!」
「ブラッドベア級?」美鶴は眉を寄せつつ、周囲を鋭く見回した。
「うーん、それよりは弱いけど…油断しない方がいいね。たぶん、ゴブリンの群れか、もっと厄介なやつかも。」
言葉が終わるや否や、茂みからガサガサと音が響き、4体のゴブリンが姿を現した。だが、普通のゴブリンとは様子が違う。体は一回り大きく、目が赤く光り、手には粗末ながらも鋭い槍を持っている。
ナビが叫ぶ。「強化ゴブリンだ! 魔力石の影響を受けてるっぽい!」
美鶴は舌打ちし、すぐに身体強化を発動。全身に力がみなぎり、動きが軽くなる。「よし、まとめて片付ける!」
美鶴はダブルストライクの構えを取り、ゴブリンたちに向かって突進した。両手の斧が弧を描き、最初のゴブリンを一瞬で切り裂く。だが、残りの3体は素早く散開し、槍を振りかざして反撃してきた。
「チッ、動きが速い!」美鶴は空中に跳び、ダブルストライクの重力補正を活かして一気にゴブリンの背後に回り込む。そこからツインシャドウを発動。4倍の身体強化が動きを加速させ、まるで分身したかのように4連撃がゴブリンたちを襲う。鋭い風切り音とともに、2体が地面に倒れ込んだ。
だが、最後の1体が予想外の動きを見せた。ゴブリンが持っていた槍が突如として赤く輝き、魔力の波動を放ちながら美鶴に向かって突き出された。「なっ!?」美鶴は咄嗟に斧をクロスさせ受け止めたが、衝撃で後ろに弾き飛ばされる。
MPが一気に100減少し、300から200に落ちた。
「美鶴、大丈夫!? そいつ、魔力石を槍に埋め込んでる! 魔法攻撃だよ!」ナビの声が焦る。
「くそっ、めんどくさいやつ!」美鶴は軽く舌を鳴らした。「これで終わりだ!」
雄たけびを発動させ、ゴブリンを一瞬怯ませると、美鶴は再びツインシャドウを放った。4連撃がゴブリンの胴体を切り裂き、戦闘は終わった。
息を整えながら、美鶴は倒れたゴブリンから小さな魔力石の欠片を拾い上げた。
「ふぅ…ナビ、これって使える?」 「うん、低級だけどMP10くらい回復できるよ。持っておきな! でも、ツインシャドウ連発したから、身体強化の反動でしばらくは軽い痛みが続くかも。
キュアで軽減できるけど、MP節約したいなら我慢もありだよ。」
「んー、とりあえず進むか。ルミナの街に進みたいし。」美鶴は欠片をポーチにしまい、街道を目指して歩き出した。
ステータス(更新)
名前:草凪 美鶴
職業:ツーハンドリーパー
レベル:17
HP:950/1000(戦闘で軽いダメージ)
MP:200/300
状態:軽い疲労、身体強化の反動
装備:布の服、革の靴、古びたマント 武器:片手斧x2(適正値SS)
魔法:キュア(初級)
武器スキル:ダブルストライク、ツインシャドウ
スキル:身体強化、雄たけび 2/3(戦闘で1回使用)
持ち物:魔力石(低級)MP20程回復、魔力石の欠片(MP10回復)、奈落の水袋、食料2日分
森を抜け、ようやく街道が見えてきた。遠くにルミナの街の輪郭が霞んで見える。美鶴は一息つきながら、ナビに呟いた。
「なんか、もっと強い敵とか出てきそうな予感するんだけど…ナビ、どう思う?」
「ふふっ、美鶴の直感、けっこう当たるからね。町につくまで油断しないで! でもさ、町に着いたら美味しいもの食べようよ! ナビ、お肉がいいなー!」
「はいはい、ナビの分はないからね。」美鶴は笑いながら、街道を進み始めた。
”note”で「脱サラ冒険者、運命の人になる」のあれこれを書いています。
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