全知全能と改良案
それからラクリオは僕の召喚したゴーレム達を一体ずつ丁寧に確かめていった。殆ど十分をかけて確認を終えたラクリオはよっこいせっと立ち上がり、僕の方を見た。
「先ずは、この重力負荷を上げるデカいゴーレムだな」
「うん」
ラクリオは大柄なゴーレムの頭を指で突いた。
「この頭を筆頭に、無駄が多い。多分、重力負荷時のバランスを考えたんだろうが……もっと上手いやり方がある。頭はもう少し小さく出来るし、この辺りももう少し細くて良いな。打撃の威力を上げる意味での重量としても、ここら辺は不要になる。寧ろ速度が落ちる分、威力も下がることになるからな」
「なるほど……」
「それと、もう少し拳の形状も弄った方が良いな。人の手を模した形状は確かに汎用性に優れはするが、こいつは所謂特化型の部類だ。利便性や汎用性は捨ててでも威力に特化させた方が良いだろう」
確かに、敵を押し潰すことしか考えていないこのゴーレムで、繊細な作業を可能にする人のような手は持ち腐れになってしまうだろう。このゴーレムは針仕事もしないし、ペンも握らない。
「そして、この狼型のゴーレムだが……まぁ、こいつも無駄が多いな」
「えーっ」
「いや、足を速くしたいのは分かるが、それに全力を注ぎ過ぎて逆に何も出来なくなってるだろう。こいつは、無駄に足が速いだけだ」
「でも、大抵の敵なら反応も出来ずに瞬殺出来るよ?」
それはそうだな、とラクリオは呟き、しかし納得した様子ではない。
「こいつを単なる雑魚狩り用のゴーレムとして作ったならそれで良いんじゃないか? だが、オラが思うに雑魚狩りに特化させるならもっと別の形があるし、雑魚以外も狩りたいと思っているならこのゴーレムには他の機能も必要になる」
「……例えば?」
「先ずは、もう少し動体視力や情報処理能力にリソースを回した方が良いな。そこら辺が足りてないせいで、こいつは折角の速度を殆ど攻撃にしか活かせなくなってる。その速度で敵の攻撃を避けられる動体視力、これは絶対にあった方が良い」
「なるほど」
ある程度は動体視力も高めてはいるのだが、最高速度で周囲を認識などは一切出来ない状態であった。だが、確かにそれでは直線的な攻撃しか不可能になってしまうし、防御などにもその速度を活かしきれない状態になる。
「それと、せめて攻撃に毒でも付けたらどうだ。これだけ素早くても、肝心の攻撃がただの石の鉤爪じゃ勿体無い。毒を蓄えておいて、爪に流れるようにしても良いし、高度なことをやるなら内部になんかの植物から生体機構を取り込んで、半分フレッシュゴーレムみたいにしても良い」
「それは……中々、高度ではあるね」
「まぁ、そうじゃなくても爪や攻撃に際するように魔術で付加効果を付けるだけでも良い。火属性だろうが、呪いだろうが、それこそ毒でもな。攻撃を相手に当てやすいって長所があるなら、攻撃に付加効果を付けるべきなんて考えりゃ直ぐ分かんだろ?」
「確かに」
ラクリオ、RPGとかうまそう。
「あと、この爪は何なんだよ。この、そこら辺で拾ったような石の爪は」
「うん、実際そこら辺で拾って爪みたいに加工しただけではあるね」
「なんでだよ……」
「いや、まぁ、諸事情で……このゴーレムは全部、その場で作り上げた奴だから。勿論、原案自体は元からあったけど」
呆れたようにこちらを見て、溜息を吐いたラクリオに僕は愛想笑いを返した。
「じゃあ、分かっちゃいるかも知れねぇがこの石の爪はバランスが悪い。無駄に重いからな。いや、無駄ではないかも知んねぇが、間違いなく足を引っ張っちゃいる。鋭利の魔術付与をかけてるみたいだが、これをやるくらいなら石の爪を小さくして耐久力を上げる付与をかけて、腕の筋肉を盛った方がマシだ。その方が、威力も上がるし汎用性も上がる」
「なるほど……」
「若しくは、素材そのものを変えるかだな。軽くて耐久性の高い素材ならある程度は悪くない筈だ」
「ふむふむ」
素材を変える方が楽そうではあるね。この現代社会だと便利な素材なんてきっと幾らでもあるし、素材を変えるだけなら魔術付与に割くリソースも少しは節約できるというものだ。
「んで、最後にこの妙ちくりんな姿をしたゴーレムだな」
「トーテムポール型ゴーレムさんだね」
僕が補足しておくと、ラクリオは面倒臭そうに眉を顰めた。
「こいつはまぁ……正直、発想と言うかデザインは面白いな。端から動く気も無く、固定して作用するゴーレムってのは余り考えなかった。オラも参考に出来る部分は色々とあるゴーレムではあるんだが……こいつが、如何せん最も無駄と言うか洗練されてない部分が多い」
「うん……それは、自覚してる部分もあるね」
割と発想のままに色々と進めてしまったので、あちこち無駄になってる部分があるんだろうなって気はしてるよ。それに、三体全部そうだけど、これらは異世界で急ピッチで作ったしね。そういう意味でも粗い部分は多いだろう。
「とは言え、一番伸び代もあるゴーレムってことだ。期待しても良いぞ、こりゃ」
そう話すラクリオの顔には、小さく笑みが浮かんでいた。




