全知全能と工房に集合
ソラとスイの改めての挨拶が済んだところで、ラクリオは遂に正気を取り戻した。
「……取り敢えず、それは神樹様なんだな?」
「それとは失礼な。ここにおわす方をどなたと心得る! 畏れ多くも神樹様にあらせられるぞ!」
「いや、それはまぁ分かってるんだがな……」
やばい、ラクリオをビビらせたくなってついふざけてしまった。でも、思ったよりビビって無いから大丈夫かも知れない。
「だってよ、デザインが……」
「可愛いでしょ?」
「可愛いんだよ」
僕の言葉に難しそうな顔で賛同したラクリオに、僕は笑った。
「見た目が可愛い方が、木人の皆も接しやすいでしょ? 畏まり過ぎずに、親しく出来る姿の方が良いかなって思ってさ」
「じゃあ、なんでさっきビビらせようとしてきたんだよ」
「それは、出来心だね」
そう答えると、ラクリオから睨まれた僕だったが、咄嗟に目を逸らしたのでダメージは無かった。
「まぁまぁ、話は分かったが……その、神樹様がこんな姿でここまでやって来て、どういったご用件で……? 単なる市民交流とかか?」
「まぁ、市民交流が今後の目的にはなるんだろうけど……」
僕はチッチッと指を振って見せた。ラクリオは苛立ったような表情で僕を見る。
「ゴーレム作りを手伝ってくれるってさ」
「……神樹様が?」
呆気に取られたような顔をして聞いてきたラクリオに僕は頷き、スイが両手に抱えたままのソラの頭をぽんと叩いた。
「そう、偉大なる神樹様がその知恵と知識を貸してくれるんだってさ」
「あぁ、賢者殿と一緒のパターンってことか……」
「もしかして、あんまり信用してない?」
「いや、まぁその……なんだ。賢者殿もそうだが、神樹様もゴーレム作りにはあんまり詳しくないだろ?」
まぁ、ラクリオほど詳しくは無いだろうね。
「そうね。まぁ、インスタントなら結構使うこともあるけど」
「私は、治とゴーレムの話をしているうちに色々と学習した。深められたこの知識ならば、ラクリオ……お前にも、きっと対抗出来る」
「え、えぇ、そうですか……なんか、張り合われてねぇか、オラ」
多分だけど、張り合われてるよ? ていうか、ラクリオってアレだね……他の木人と比べると、ソラに対する敬意があんまり無さそうだよね。イシに傾倒してるせいなのかも知れないけど。それか、ゴーレム作りばっかりやってるせいで物質主義的な価値観に……いや、無さそう別に。
「まぁ、その……これ、話進めても良いのか? オラ」
「あ、うん。構わないよ」
答えると、ラクリオはよしと呟いて雑念を振り切るように自分の顔をパチッと叩いた。
「先ずは、お前がこの前言ってたどんなゴーレムをデザインするかだが……用意して来てるか?」
「うん、取り敢えずの形は出来てるからここに出して良い?」
「おうよ」
僕が尋ねると、ラクリオはそう答えて僕との距離を離した。
「ブゥン」
僕は口で擬音を言いながら、異空間からゴーレムを召喚した。ウィーに負けて壊されたゴーレムを修復したものである。
「はいはい、大体話に聞いてた案を再現した形っぽいな」
トーテムポールのような形をした縦長のゴーレム。内部には五十メートルくらいまで伸縮する触手が格納されているが、今は見えていない。他にも感知系の機構が幾つも備えられていて様々な場面に対応できる筈だ。
「なるほど、ここが開いて触手が出て来る訳だな?」
「うん、そうだよ」
僕が言いながら起動すると、触手がうねうねと身体のあちこちの穴から伸びて、スイは眉を顰めた。
「なんか、気持ち悪いゴーレムね」
「失礼な」
触手が生えてなかったら割と可愛い見た目してると思うんだけどなぁ……トーテムポール型ゴーレム。
「つーか、この素材……どこで手に入れた奴なんだ? 見たことねぇ土だぞ、これ」
「ん、異世界でだね」
「あぁ、そういう……魔力に割と富んでるな。流石に、神樹の周りの土とは比べ物にならねぇが」
「あはは、興味ある?」
僕が聞くと、ラクリオはにやりと笑って頷いた。
「そりゃな。どんな技術が発展してて、それをゴーレムに活かせるって考えりゃ興味が湧かねぇ理由が無いだろ」
「確かに」
今度、色々と事態が落ち着いたら……異世界のことを色々と教えてあげても良いかも知れない。ソラには既にちょっと話してるんだけどね。連れて行ってみたい気持ちもあるけど、流石にちょっと怖くはあるんだよね。
「それで、次がこれと……はい、これだね」
擬音を鳴らすのは忘れたので、二体のゴーレムが静かに現れることになった。異世界のグリーンウルフの造形をもろにパクっている狼型のゴーレムと、図体のデカい人型のゴーレムだ。
「ほうほう、ふぅむ……やっぱり、魔術の知識じゃ先を行かれてる部分もあんな」
「私もその分野で手伝いに来たつもりだから、よろしくねー」
「あぁ、頼むぞ。賢者殿」
ラクリオはそう言いながら、二体のゴーレムをじっくりと観察していく。
「こいつが加速特化で、こっちは重力負荷を上げてんのか……」
「良く直ぐに分かるね」
「そりゃ、見ればな」
「……私も、見れば分かる」
対抗するように声を上げたソラに、僕は小さく笑ってぽふぽふと頭を軽く撫でた。




