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ある日、僕は全知全能になった。  作者: 暁月ライト


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全知全能と依代

 絶世の美女を超えて、神性の美女が目の前で照れているところを見た僕は心がはち切れそうな気分を味わったが、何とか取り繕って誤魔化せた。


「ん……それで、どうする? 別に、人の姿で無くても良いとは思うけど」


 そのまま、動く木みたいな姿でも……いや、それは流石に物々し過ぎるだろうか。


「人の姿で行くとしても、その姿……ていうか、僕に見えてる姿で行くと、人と擦れ違う度に平伏されそうな気がするから、もうちょっと平凡寄りにした方が馴染みやすい気もするけど……」


「私も、貴方に見えている姿は……出来れば、貴方だけのものが良い」


 おぅふ。今のは効いたよ、ちょっぴりな。


「そ、それなら良かったよ。うん。じゃあ、どうしよっか。いっそのこと、小っちゃい木の埴輪みたいな感じの可愛いマスコット的な姿にした方が良いかもね」


 神樹という圧倒的な存在を思わせる姿では親しみやすさの欠片も無いことは確かである。木人たちと仲良くなりたいならば、元の姿よりも矮小化して近寄りやすい姿になった方が良いだろう。


「あ、そもそも、ソラは木人たちと、その、親しくなりたいのかな? それとも、君は彼らの神として振舞おうとしているのか……それによるけど」


「私も、貴方のように木人達と親しくなりたいと考えている。出来るならば、友になりたいと」


「それなら、見た目も可愛い方が親しみやすいと思うよ。さっき言ったみたいな、小さい木の埴輪みたいな……」


「見ても、良い?」


 あ、うん。と、僕は差し出された手を素直に受け取った。すると、ソラの横にぽんと僕のイメージしていた通りのずんぐりむっくりとした、小さな切り株をそのまま埴輪に変えたような、どこか間抜けな雰囲気のあるマスコットが現れた。僕はそれを両手で抱えて持ち上げて眺め、頷いた。


「良いね、これなら良いと思う」


「それなら、持って帰る? ここにあるのはただのイメージだが、外で同じように身を分けて作ることは出来る」


「あ、あはは、流石に僕の世界には持って帰れないかなぁ……神樹のぬいぐるみ、いやぬいぐるみでも無いんだけど。それにほら、腐っちゃったら申し訳ないし」


「問題無い。少なくとも、人の寿命が過ぎ去る程度の年月で腐ることは無い」


 そっかぁ……。


「それでも、やっぱり向こうだと君の体を分けて作った人形ってそれだけで凄まじい力を持っちゃうと思うから……」


 ここでも凄まじい力を持つのは同じかも知れないが、向こうにはこの閉鎖的な社会しか形成されていない里と違って、広くて広くてどうしようもないような社会が広がっている。そこに神樹の人形? を持ち込むことは大きな問題と化すことは目に見えている話だった。


「……分かった。ならば、兎も角は……行こう。貴方と、外を一緒に歩いてみたい」


「うん、それは勿論。じゃあ、早速行こうか。出来る?」


 ソラはこくりと頷き、僕の意識は真っ白い空間の中から自分の体の中に戻って来ていた。眩暈のような感覚を抑えるように、僕は少し手を広げてすべすべとした清涼な空気に体を馴染ませ、深呼吸をして空気を取り込んだ。


「治」


 短く、声を掛けられて僕はそちらに視線を向けた。聞き覚えのあるその声はやはり、ソラであった。そこにはさっき見たのと同じ小柄な木のマスコットがちょこんと立っており、瞬きも無いただの穴だけの目がこちらを見ていた。


「お、来たね~」


 てこてこと短い足で歩いて来るソラに、僕は屈んでその体を掴み上げた。どうやら、その体の可動性には問題があるようだった。見た目は可愛いけど、不便そうで大変だ。後で浮遊して動けるようにでもしたらどうかと提言してみよう。


「どうかな、動ける体で見る外の世界は」


 だけど、その前に先ずはこれを聞かないと始まらないだろう。ソラは僕の腕の中で身じろぎをして、里中をじーっと眺めた。


「凄い」


「そっか」


 端的な感想に、僕は小さく笑って頷いた。


「主観的な目で見ると、この里も……凄く、良い場所に見える」


「それは良かったよ」


「でも……自分で自分を見るのは、とても妙な感覚」


 確かに、鏡や写真で見るのなんかとは違って、目の前で生きている自分を見るのは変な感覚にもなるだろう。幽体離脱みたいな感じだろうか。


「そういえば、あの場所とここで声が同じに聞こえるけど……」


「この姿は、貴方のイメージを借りて作り上げたモノ。そして、同じように声もまた貴方のイメージから借りた」


「なるほど」


 ちょっと、その姿からあの深みのある少し低めの声がするのはギャップがあるけど、逆に良いかも知れない。きっとそうだよ、うん。


「早く、行こう。あの土弄りの木人に……私の方が上だと、証明しなければいけない」


 ラクリオの工房の方へと、真っ直ぐその目を向けて言ったソラ。その声は威厳があったが、見た目はただのマスコットなので格好は付いていなかった。

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